きょうは兄ちゃんがロックンロールのビデオ？もってきてくれた。よんてへー、りぺ？ ふぉーすらいぷっていうらしい。つよそうな名前。ビームだせそう。
びょうしつのテレビにうつったふぉーすらいぷは、思ったよりつよくなさそうだった。きんぱつのライオンみたいなニイちゃんは一番つよそうだけど、青いギターのひょろひょろはおれでも勝てそう。ギターじゃなくてベースっていう楽器だって兄ちゃんが教えてくれた。兄ちゃんコイツが一番つよくて好きなんだって。ひょろひょろなのに。
でも足ながくていいな。あれくらいあったらサッカーもっとつよくなれるのに。まだ外しちゃだめって言われるけど、ギプスはじゃまだから好きじゃない。リハビリも痛いからやだ。でもはやく走りたいな。

🍎🥁のお夜食寝らんねえ。
特に寝苦しいってわけでもないが、ただなんとなく横になってるだけで寝付ける感じでもない。
スマホを開く。午前２時。望遠鏡を担ぎ出すやつもいる頃合いだ。

今日は夕方から練習あったから、その興奮が冷めやらぬせいかもしれない。それと割と早い時間に晩飯にしたのもあって、胃袋が支援物資を求めている。

腹の虫がついに声を上げた。シュプレヒコールである。このままでは暴動を起こしかねない民衆の声に、千川政府は全面降伏を表明した。あーあ。

またシーナとコンビニ合流するかとも考えたが、そう日も経ってないのに何度も呼び出すのは気が引けた。夜の逃避行はたまにするからいいのだ。

のそのそと這い上がり、キッチンの小さな明かりをつける。お、なんか作業工房っぽくてワクワクしてきたぞ？

熱伝導　寒空の下、隣に並んでひとしきり会話をしたあと訪れる静けさ。心地良いこの時間が嫌いじゃないが……前を向く年上の男の横顔を見飽きて、冷たい指先で手を握り指を絡めて体温を奪うイタズラを仕掛けた。叱られる予想は外れ。温かい手に包まれるのを許されるから、火照る頬を隠すようにマフラーに埋めた。「寒いか？」と聞く男と目が合い首を左右に振る。こんなに寒いのに熱いのは……コイツの手から伝わる温もりのせいだ。