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    左@萌え垢

    @hidarikikimoe
    お絵描き初心者のおじいちゃんです。御歳は20歳より上です。

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    エイプリルフールネタで、アロルクです。
    カレンダーに振り回される話。

    #アロルク
    allRounder

    「おはよう、アーロン!」

     今月は偶然にも、というより予定を合わせて、二人はルークの家にいた。アーロンはといえば、自国で活動をしたかったのだが、アラナに「久しぶりに恋人に会ってきなさいよ。ここんとこ、ずっと仕事続きじゃない」と言われ。勿論、反論したのだが「命は有限なんだから」と言われてしまえば、その口を閉ざし、頭をガジガジと掻きながら船の手続きをするしかなかった。

     一方のルークは、アーロンが来るんだ! と犬の様にはしゃぐ気持ちを押さえて、溜まった仕事をまるで高性能なコンピューターの如く、高速処理をし、季節外れの長期休暇を取ったのだった。これには職場の人間も、あの勤勉すぎる男が居なくなると、内心でパーティーを繰り広げていた。
     
     そして、ルークの家に来たアーロンはと言えば、「おう、開けろ」の一言でドアをガンガンと叩き、家から飛び出してきたルークにまるで犬の様に腰に手をまわされて、寛大なハグをされるのだった。

     それを首筋を掴んで、釣り上げて家の中にポイっと放り投げ。「肉5キロ……いや8キロ」その内心には、久しぶりに会うことの出来た恋人への喜びの余り、食欲が爆発してるという事情があった。
     ルークにしてみれば、いい迷惑なわけだが、本人はニコニコと常に笑っていて、「じゃあ、あと3キロプラスで買ってくるよ!」といって、部屋を飛び出そうとし、その走り出そうとした首筋を再び片手で掴み上げ。「オレが居ねぇと迷子になるだろ帰巣本能のないドギー」とその背をドンと叩き、一方のルークは痛っと言いながら「僕の住んでる町なんだから、迷子になるわけないだろう! それに僕は警察官だ! この近辺には慣れてる!」と反論をし。その言葉を聞いたアーロンは、ゲラゲラと笑い。そうして、二人で買い出しに行くのだった。

    ――そうして、買い出しから戻った二人には両手いっぱいの食糧があるのだった。それも、とびっきりの笑顔をつけて。

    「ふぁ~おはようあーろん。君は朝が早いな……」
    「てめぇが遅すぎんだよ、ルーク」

     アーロンは筋トレ用の道具で懸垂をしながら、ルークの言葉に息切れ一つせず難なく答える。ちなみに、ルークの家にスペースを取るような懸垂器具が置かれたのには理由がある。以前、アーロンがルークの家に来た時、適当なドアの入り口のひっかけで懸垂をしたのだ。その結果は言うまでもないだろう。身長が馬鹿に高く、体重も馬鹿に高い人間が、そんなところで懸垂をしたらどうなるか。ルークは修繕費にボーナスが羽を生えて天使と化したよと、しくしくと泣きながらアーロンの腹筋にパンチをした。しかし、アーロンは「ネコパンチとはいい度胸じゃねぇか」と爆笑をし。ルークは「これから君のことビーストって呼んでやる」と、明らかに反撃になれていない反撃をするのだった。

    「なぁ、アーロン! 僕は、えーっと……そう! 虫歯になったから、はずれまんじゅうを食べるのを止める!!」
    「そりゃあ、いい心がけじゃねぇか」
    「え、えと、僕が! 甘いモノを! 食べるのを止めるんだよ!」
    「だからなんだってんだよ。てめぇはちょっとは寿命を延ばす努力をしろ」

     今日はエイプリルフール。親しい人になら、嘘をついても良い日だ。アーロンは内心、そのまま寿命を少しでも伸ばして、オレとずっと一緒にいろ、と伝えたいぐらいだった。だが、今日は日が悪すぎる。それはまた今度伝えることとしてだ。
     アーロンはにやりと笑い、鋭い牙を見せる。

    「嘘はついちゃいけねぇって、施設の大人から習わなかったのか? なぁルーク?」
    「えっ、だって今日は四月一日……」
    「カレンダーを見てみろ、アホドギー」

     そういって、ルークがリビングのカレンダーを見てみると、カレンダーは『四月二日』に丸が書かれていた。

    「えっ、嘘!? 僕、一日遅れで過ごしていたのか!?」

     ルークは驚きに目を見開き、あわあわとアーロンの方を振り返る。彼はむっとした機嫌の悪そうな顔をしていて、ルークの方を鋭い眼光で見つめていた。

    「うわぁ、ごめんアーロン。僕、嘘をついちゃいけない日に嘘をついちゃった……」
    「……そんなにしょげるなよルーク。耳と尻尾が雨にでも濡れたみたいだぜ」

     アーロンはリビングのカレンダーの前に居るルークに背後から近寄り、その背をぎゅっと抱きしめる。恋人の突然の行動にどきりとしながら、アーロンの方を見つめようとすると、アーロンはその大きな片手で、ルークの両目をそっと覆った。その手の温かさにどこかほっとしつつも、視界の見えない状態にちょっとした興奮を覚える。いや、駄目だ、まだ朝だぞ。この間のアレソレは忘れていなければならない時間帯だぞヒーロー!! と自分を鼓舞する。
     そんな自分を差し置いて、アーロンはもう一方の手で、キュッキュと音を立てながら、何かをしているようだった。

    「ほら、目を開けてみろよドギー」

     カレンダーを見てみろ。そう言われて、カレンダーを再び見てみると――

    「――えっ? 四月一日?」

     二日だったカレンダーは時を巻き戻り、四月一日を指示していた。困惑の余りアーロンの方を見ると、彼はくっくと笑いだし、やがて、犬歯をむき出しにして大笑いするのだった。
     何が起きたのか分からないルークの表情を見て、アーロンは片手に持ったペンを差し出す。戸惑いつつもルークは、そのペンを手に取ってみる。
     それは、アーロンがやってきた日に、インクが切れたから代わりにコレを使えと言われて、渡されたペン。ルークはそれをまじまじと見てみたり、振ってみたり、逆さまにしてみたりするが、どうみても普通のペンだった。
     その様子をみたアーロンは上機嫌そうに更にげらげらと笑いだし、種も仕掛けも分からないルークはむぅっとむくれる。

    「そろそろ、種明かししてくれよアーロン。今日は四月二日なんだろ?」
    「お前って一度こうだと思ったら、そう思い続けるよな。今日は四月一日で合ってるぜルーク」
    「えっ? でも、カレンダーは確かに四月二日を示していて……」

    「――それが『嘘』なんだよ、ルーク」

     そのタイプのペンは、比較的新しいから、見たことないとは思っていたがな。まさかここまで上手くいくとはな!
     そう言って、アーロンはにやりと笑う。そうして言うのだ、ペンの尻を見てみろよ。と。

    「確かにこれちょっと、ぐにゃぐにゃしてるというか、見たことない形状のペンだな」

     最初に見た時は、お洒落か何かだと思ってた。そうルークが告げると、アーロンは「だから、お前は思い込みが強いんだよ」とケラケラ笑う。
     こういう時のアーロンはどこか子供っぽい。というか、これが彼の素の状態なのだろう。少しむくれていたルークもその笑顔を見て、まぁいいかと独り言ちる。

    「このペンはな、『フリクションペン』っていうんだよ。ほら、貸してみろ」

     ルークからペンを受け取ったアーロンは、カレンダーの余白に舌を出した犬を描く。胸元でぷんぷんと怒りだした恋人をどうどうと鎮めながら、そのペンの下側でその絵を擦る。すると、その犬の絵はきれいさっぱり消えてしまった。

    「嘘だろ……。ほんとに消えるペンなんて存在するのか」

     ルークはその妙技に舌を巻く。アーロンは胸元の恋人の頭をぽんぽんと叩きながら、種明かし満足したか? と問いかける。ルークは目を丸くしつつも、それに素直にこくこくと頷く。


    「まぁ、警察なんてお堅いところじゃ、こんな不正しまくりのペンなんて見る機会ねぇわな」


     アーロンは見事に嘘にはまった相棒をフォローする。こうでもしないと、このお堅いヒーローは不正を見抜けなかったと落ち込むばかりだ。オレはなんて面倒臭い奴にはまっちまったんだか。そう思いつつ、ルークの体温を感じる。


    「って、もしかして君は、こっちに来た時から、このペンを用意してたのか!?」
    「おっ、ようやく頭が回ってきたかドギー」


     まさかここまで見事に騙されてくれるとはな! そういって、アーロンは腹を抱えて笑い出す。ネタを仕込んだ甲斐があったもんだと言いながら。
     一方のルークは、まさかエイプリルフールにここまで力を注ぐなんて……。君は嘘が苦手だと思っていたんだけどな、とくすりと笑った。

    「おっ、ようやく笑ったなルーク。どうだ、オレの用意した『エイプリルフール』は? どんな味だ?」
    「驚きどおしで、疲れちゃったよ。 でも、甘くて最高の味だよアーロン」

     甘い? その感想にアーロンが首を傾げると、ルークは――。

    「――だって、君と過ごせる日が丸一日伸びたってことだからな」

     そういって、満面の笑みでアーロンに正面から抱き着くのだった。
     アーロンは「そうかよ!」といいながら、恋人をぎゅっと抱きしめるのだった。
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