ひどくあまくてずるい/ぶぜさにーーまつ毛が長いなあ。
本丸の部屋の中、柱によりかかって昼寝をする豊前の寝顔を、じっと見つめて思う。いつ見ても飽きないくらい、綺麗なお顔をしている。
羨ましいなあ、ずるいなあ、と思うと、無意識に頬に目がいく。
ーーやわらかそう。
むくむくと悪戯心がわく。一応、恋仲、と呼べる関係ではあるのだし、少しくらいいいよね、という好奇心が、この時は勝った。
ほんの軽く、頬に口付ける。薄い肌の感触が、心地よくて、覚えてちょっとにやにやするくらい、許して欲しいなとか、少し変態なことを思いながら、離れた。
離れ、ようとした。
おかしい、腰がそれ以上さがらない。
「……ん、ぅ」
何とか話すと、押された力で今度は直接唇が薄い唇にくっつけられる。
「んー、んぁ、は、ふ」
びっくりして目を開けたら、長いまつ毛をした、瞳とばっちり、目が合った。
「あ、や…んん、んんっ」
ぬるり、と柔らかい感触が口の中に入ってくる。何度も触れられていれば、頭もふわふわとおかしくなってきてしまう。
「…ぶ、ぜ…」
「まだ、足りねーだろ?」
掠れた声で囁かれたら、もう続けるしかない。
ーーちょっとした悪戯心が大惨事である。
「ほーと、主はかぁいいな」
ちゅ、ちゅ、と今度はわたしのほっぺたを豊前がついばんでくる。わたしは1回だけなのに。解せない、とむくれれば、クスリと笑ってほら、とほっぺたを指さされる。
「…お返ししてくんね?」
「………」
「起きてる時にやればいーのに、寝込みを襲うあんたもわりーんだぜ?」
「………」
全くその通りなので、乗せられてるのを知りながらもまた頬にキスを繰り返す。
「くすぐってえ」
「…だって、柔らかくて好き」
「…それ、」
とん、と指で唇を指される。
「ここよりも?」
「……しらない!」
冗談だよ、とまた抱きつかれてキスをされる。
おかしい、ぜったいにおかしい。
「豊前、最初から起きてたでしょ」
「はは、なんの事だ?」
少年みたいな笑顔で、全てを察してしまう。あまりにも眩しいから、許してしまうわたしも大抵だけれど。
わたしの恋仲の相手は、ひどく甘くて、ずるいのだ。