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    かなめ先生

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    かなめ先生

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    【いぬとねこ】
    フォロワー様方との絵⇄小説コラボっち企画で書かせていただいた理左小説です。
    趣味全開のわんにゃんらぶらぶりさちの話。

    #理左
    rationalLeft

    「いぬとねこ」(理左)「なー理鶯、ちょっと寒くねえか?」
     皿洗いが終わり、キッチンからリビングへと戻ってきた理鶯に左馬刻は開口一番そんな言葉を投げ掛けてくる。
     言われてみれば、理鶯は夕飯の片付けなどでそれなりに身体を動かしていたためあまり気が付かなかったが、その間リビングのソファーでじっと待たされていた左馬刻からすれば、そういった感想を抱くのも当然なのかもしれなかった。
    「……すまない。小官の配慮不足だったな。ならばすぐに暖房を入れよう」
     理鶯はそう言ってリビングにあるはずのエアコンのリモコンをきょろきょろと捜索するが、それに気付いた左馬刻は「あー、待て待て」と両手を振って理鶯の視線を引き戻した。
    「そーゆーコトじゃなくてよ」
    「……寒いのではないのか?」
    「そーだけど、そーじゃなくて」
    「うん……?」
     左馬刻の何処となく煮え切らない言葉に理鶯が素直に首を傾げていると、左馬刻は「ちょっと待ってろ」と言って徐にソファーから立ち上がって別室へと移動してしまった。
     ……もしや、小官の感覚の鈍さに左馬刻の気分を損ねてしまったのだろうか。
     そんなことを心配しながら理鶯が左馬刻の帰りを待っていると、予想に反して左馬刻はすぐにリビングへと戻ってきた。
     その手には、何か中身の入った大きな紙袋が携えられている。
    「よぉ、待たせたな」
    「いや、大丈夫だ。それより、貴殿が手に持っているそれは……?」
    「ん? ん〜……」
     理鶯が話題を振ると、左馬刻は何処となく嬉しそうにその袋の中に手を入れ、ガサガサと中を漁り始めた。
     どうやら機嫌を損ねていた訳では無いらしい。
     左馬刻は中から厚手の焦げ茶色の布を取り出すと、理鶯に見せつけるようにそれを左右に広げてみせた。
    「……ブランケット、か?」
    「半分正解」
     左馬刻はそう言うと、自分で確かめろとでも言うようにその布を理鶯へと手渡してくる。
     理鶯はそれを素直に受け取り、改めてその作りをしげしげと眺めた。
     どうやらこれはただのブランケットではなく、筒状に縫製されているため頭から被って着ることが出来るようだ。
    「その名の通り、〝着る毛布〟だとよ」
    「〝着る毛布〟……。なるほど、言い得て妙だな」
    「理鶯、せっかくだしちょっと着てみろよ」
     たまたま街中で見つけたコレ、お前に似合うだろーなと思って買ってきたんだよ、と左馬刻は期待の籠ったような眼差しで理鶯のことをじっと見つめる。
     毛布に似合うも何も無いだろう、とは思いつつも、理鶯は「承知した」と頷き、言われるままにその毛布を広げた。
     どうやらこの〝着る毛布〟とやらはゆったりとしたポンチョのような形をしているらしい。
     裾らしき部分を捲り上げ、理鶯はその形に合わせて縫製された布の中へと頭を潜り込ませていく。
     そうしてどうにか頭を出せそうな穴を発見し、理鶯は其処からすぽりと顔を覗かせた。
     毛布は裏も表も柔らかい起毛生地が使われており、触り心地が良く、肌馴染みも申し分ない。
    「……左馬刻、着方はこれで合っているか?」
    「ん、良いんじゃね?」
     あとココ、腕通すとこがあっからよ、と左馬刻に教えられ、理鶯は両腕をその指定された左右の穴へと差し入れた。
     なるほど、此処へ腕を通すことによって布が身体にフィットし、より衣服に近い着心地を生み出しているというわけか。
     そんなことに理鶯が一人で感心していると、左馬刻は徐に理鶯の首元に手を伸ばし、そっと後ろ側の布を理鶯の頭へ被せてくる。
    「ほら、あとはこのフード被ったらカンペキだぜ」
    「……フード……?」
     理鶯が自身の頭頂部を触ると、大きなポケット状に縫われた毛布の一部が理鶯の頭部をすっぽりと覆っていた。
     どうやらこの着る毛布には、ご丁寧にフードが付いているらしい。
    「……ふはっ、かわいいじゃねーか」
     やっぱ俺様が思ってた通り、めちゃくちゃ似合ってるぜ、と左馬刻は笑う。
    「似合っている、のか……?」
    「つーか似合いすぎだろ。この犬耳とか、まんまでっかいワンちゃんじゃねーか」
    「……犬耳?」
     理鶯が左馬刻の言葉にピンと来ないでいると、左馬刻は「ああ」と何か閃いたように理鶯の腕を引いた。
    「お前も自分の今のカッコ、鏡で見てみろよ」
    「む……?」
     左馬刻に連れられ、理鶯はとりあえず洗面所の鏡を覗き込んで自身の姿を確認してみる。
    「これは……」
     其処にはどう見ても〝犬〟としか言いようのない垂れた耳をフードから生やした、ふわふわの茶色い毛並みの理鶯の姿。
     その後ろで、左馬刻もにやにやと楽しげに此方を見ている。
    「なるほど……。このフードが犬の頭を模しているというわけか」
     差し詰め、色合い的にトイ・プードルといったところか、と理鶯が呟けば、「御名答」と後ろから左馬刻が理鶯の腰へと抱きついてきた。
    「ま、大きさで言ったらお前はトイっつーかスーパービッグプードルだけどな」
    「ふふ、確かにそうだな」
     左馬刻にまとわりつかれながら、理鶯は左馬刻を連れてそのままのろのろとリビングへと戻る。
     確かに、熱の含みが良いからか、この毛布を纏っていると非常に暖かい。
     加えて、外側からこうして左馬刻の体温を吸収しているからというのも多少はあるのだろうが。
    「……そういえば小官ばかりがこうして暖を取ってしまっているが、貴殿の分の着る毛布とやらは用意してあるのか?」
     理鶯はふとそんなことに気付き、左馬刻へと問い掛ける。
     先ほどのことといい、またもや配慮が遅れてしまったことに理鶯は人知れず反省した。
    「まーな。最初はお前の分だけで良いかと思ったんだが、それじゃなんとなくフェアじゃねーと思ってよ」
    「フェア?」
    「おうよ。お前がかわいいワンちゃんになるってンなら、俺様もそれと同じ土俵に立たねえと示しがつかねえだろ」
    「……ふむ? なるほど……?」
     極道の世界に身を置いているからか、左馬刻は時折こういった持論を展開してくる。
     同じ土俵————つまりは、相手に同調しようとしてくれているのだ。
    「お揃いっつーのも悪くねえと思ったけど、俺様はどっちかっつーとこっちの方がまだ似合いそうな気がしてよぉ」
     左馬刻はそう言うと、先ほど理鶯の着る毛布を取り出した袋の中からもう一組の毛布をガサガサと取り出す。
     どうやらそれは理鶯のものと色違いのようで、素材は同じだが左馬刻の持つそれはシルバー寄りの柔らかい灰色をしていた。
    「んーと、こっちが前か」
     左馬刻はそう言って徐にその着る毛布を頭から被る。
     そのままごそごそと身体を動かし、左馬刻はいとも容易く所定の穴から頭と腕をすぽりと出して見せた。
    「……ほう、なるほど……」
     左馬刻が仕上げにと最後に被ったフードのてっぺんからは、三角形の二つの耳がピンッとそびえ立っている。
    「どーよ。俺様のは猫耳だぜ」
    「うん。よく似合っている」
     確かに左馬刻の言うように髪色や肌の色などから考えると、茶色よりもこのグレーの方が左馬刻にとっては色合いの馴染みも良さそうだ。
     それに、耳の形も理鶯と同じプードルの垂れた犬耳よりは、このような三角形の立ち耳の方が左馬刻には似合う気がする。
     しかし、理鶯が「似合う」と素直に答えれば、左馬刻は複雑そうな顔をしながら「ホントかぁ……?」と首を傾げていた。
     どうやら先ほどの理鶯の感情を、今度は左馬刻が繰り返しているらしい。
     理鶯は左馬刻の頭へと手を伸ばすと、そのままフードの上からよしよしと左馬刻の頭を撫でた。
    「ふふ、こうしていると本物の猫のようだな」
    「……そ、れは、褒めてンのか……?」
    「ああ。小官なりに褒めたつもりだ」
    「……なら、まあ、いーか……」
     少しムスッとしつつ、反面照れてもいるような表情が相まって、今の左馬刻は更に猫のように見えた。
     何かを欲しがるときにはいつも無意識に少しだけ鼻をヒクつかせる癖がある左馬刻だが、よく見れば今も鼻先がヒクヒクと小さく動いてしまっている。
     確か猫もこんなふうに鼻を動かすことがあったような気がする、などと心のなかで思いを馳せながら、理鶯は左馬刻の頬に指を滑らすと、そのままチュ、と軽く音を立てて其処へ口付けた。
     左馬刻はその突然とも思える理鶯の行動に一瞬ぽかんと呆けていたが、直ぐにフッと意地悪く微笑んで、理鶯の纏っている毛布の首元をグイッと手前に引っ張った。
    「……ンッ……」
     今度は噛み付かれるように左馬刻から唇を奪われ、其処からは堰を切ったように互いの舌を絡め、しゃぶり合う。
     そのまま雪崩れるようにソファーへと倒れ込み、理鶯は左馬刻に組み敷かれるような形のまましばらく口付けを続けた。
     見た目はふわふわの茶色い犬と灰色の猫だが、していることはさながら本能に抗えない獣のようだ。
     そのちぐはぐさがどうにも滑稽に思えてしまうが、それもまた人間らしくて良い。
     互いの欲望のままに舌を絡ませ合っていると、流石に酸素が足りなくなってきたのか左馬刻は肩で荒く呼吸をしながらむくりと上体を起こした。
    「……あ〜、クソあっちぃ……」
    「確かに、保温性の高い毛布を纏っているからな」
     暑いなら脱いだらどうだ、と理鶯が促すと、左馬刻はしばらくぼんやりと此方を見つめたあと、また何か思い付いたかのようにフ、と楽しげに笑ってみせた。
    「おー。そーするわ」
     左馬刻はそう言うと、着る毛布の両サイドの穴から出していた両腕をするりと中へ引っ込め、そのままもぞもぞと理鶯の腹の上で身体を左右にくねらせる。
     一瞬左馬刻が何をしているのか理鶯には理解出来なかったが、少しして左馬刻がまた上体を揺すると、左馬刻が纏っている着る毛布の裾から縒れたアロハシャツが手品のようにするすると出てきた。
     続けてベルトが取り出され、其処で理鶯はやっと左馬刻が着る毛布の中で自身の衣服を上から順番に脱いでいっていることに気が付く。
    「……暑いとはいえ、脱ぐのはそちらで良かったのか?」
    「ああ? なんだよ、コレを『似合ってる』って言ったのはお前だろ」
    「……それは確かにそうだな」
     そうか。左馬刻は小官の嗜好に配慮し、このような脱ぎ方を選択してくれたのか。
     理鶯はそんなことに気が付き、流石は左馬刻だと改めて感心してしまう。
    「……ま、たまにはこーゆープレイもいいんじゃねーの?」
     左馬刻はそう言うと、遂に自身のズボンと下着をずるりと脱ぎ下ろし、着る毛布の裾から手を伸ばしてソファーの下へと投げ落とした。
     着る毛布一枚を見に纏う左馬刻は、さながら野生の灰色猫だ。
    「……なあ、お前もそのカッコのままじゃ暑ィだろ」
     俺様みたいに脱いだらどーだ、と左馬刻は四つん這いになり、理鶯を上から組み敷く形で挑発の眼差しを向ける。
     ……なるほど。左馬刻が先ほど言ったように、確かにこれでは互いにフェアではない気がする。
     理鶯が同調の意で「ああ」と頷けば、左馬刻は少し食い気味に理鶯の着る毛布を捲り上げ、軍服のボタンへと手を掛けてきた。
    「ッハ、そーこなくっちゃな」
     お前もそのワンちゃん似合ってっから、これ脱がしちまうのは勿体ねえよ、と左馬刻は自身と同じように理鶯の中身だけを脱がしに掛かる。
     軍服の上着から始まり、中に着ていたタンクトップもどうにか着る毛布を纏ったまま首から脱ぐことに成功し、気を良くした左馬刻にそのままズボンも引き摺り下ろされて理鶯はあっという間に左馬刻と同じ着る毛布一枚の格好にされてしまった。
     だが、左馬刻の言葉を借りるとするならばこれが〝同じ土俵に立つ〟、〝同調する〟と言うことなのだろう。
    「……なんか、カワイイけどやっぱその格好クソえっろいな……」
    「……それは貴殿に対しても同じことが言えると思うが……」
    「え? お前今の俺様のカッコ、クソえっろいと思ってンの?」
    「それは、そうだろう……」
     好いた者が突然目の前で脱ぎ始めれば、必然的にそういう期待もする。
     理鶯が素直に答えれば、左馬刻は一瞬目を大きく見開き、そしてすぐに何か企むような笑みで此方を見つめ返してきた。
    「……なら、その期待通りのこと、今からいっぱいシてやんねーとな」
     な、理鶯? と左馬刻は思わせぶりに理鶯の首筋へと口付け、そのまま理鶯の着る毛布の中へと手を這わせてくる。
    「……だが左馬刻、このままでは折角貴殿が用意してくれたこの着る毛布が汚れてしまうのではないか?」
    「心配すんなって。この毛布は汚れても洗濯機で簡単に洗えンだよ」
     だから安心して汚してくれて大丈夫だぜ? と左馬刻は意味深な笑みを浮かべながら再び理鶯の胸元へと唇を寄せた。
    「……そうか。ならば遠慮は不要というわけだな」
     では貴殿のお言葉に甘えるとしよう、と理鶯も左馬刻に倣い、わざとらしく口の端を上げてみせる。
     ふわふわの毛皮を纏った二匹の猛獣は、どちらからともなく互いに強く身体を絡ませ合う。
     そうして、二匹は飽きるまでただひたすらに愛し合うのだった。


    end
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