幕間 星がよく見える夜だった。
空気は澄み、風は心地良く、虫は静かで。辺りはすっかり寝静まっていた。
山の斜面に建つ古い寺院、そこの本堂の屋根の上。烏天狗の青年はそこにごろりと寝転がって、ぼんやりと星々を眺めていた。
「今日はどうしようか……」
気の抜けた声で呟いた。近頃は人の世も妖の世も平和で特に騒ぎもなく、この寺にある書物も粗方読み終えた。ようするに暇であった。飛んで遠くに行くのは億劫で、かといってこうして星々を眺めるのも飽きてきた。
久方ぶりに友のところへ行って、甘味でもねだろうか。それか、人里まで歩いて行って面白そうなものでも探そうか。
ふわ、欠伸を飲み込む。そのとき、小さな足音が風と共に転がってきた。
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