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    hisui_4miya

    @hisui_4miya

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    hisui_4miya

    DONE・一人称、口調ぶれ有り
    ・捏造家族有り
    プロローグ ガタンゴトン。揺れる電車の窓越しに、移り変わっていく景色をぼんやりと眺める。乗った時にはたくさん居た乗客も、気がつけば隼人を含めて数人。窓の外は当に見慣れた高層建築物だらけの景色から、田畑やぽつぽつと住宅が建ち並ぶのどかなものへと変わっている。
     両親と共に何度も泊まりに行った父方の祖父母宅。古民家だが、新しい物好きでハイカラだった祖父の趣味でリノベーションが施された家。そこに今日から一人で暮らし始めるのだと思うと、やはり少々気が重たかった。

     きっかけは、正月だった。祖父母宅に帰省し、年末年始をのんびりと過ごしている時だった。祖母と母が作ってくれたお節料理をモグモグ美味しく食べている最中、日本酒が並々と入ったグラスををぐいっと煽った祖父の言葉だった。大学を卒業したら社会勉強としてフリーターをしながら一人暮らしをする予定だと言う隼人に、酒気で顔を赤く染めた祖父は「それならこの家に住むか?」と聞いてきたのだ。齧り付いたばかりの唐揚げが喉に詰まりかけて咳き込む隼人を見て、祖母があらあらと麦茶をグラスに注いでくれた。麦茶で唐揚げを押し流して、深呼吸を一つ。どういうことか、と祖父を見た。いつも通りのおおらかな笑みを浮かべて、酒をあおっていた。隣に座る父を見やる。琥珀色の目をわずかに見張らせて、けれどすぐに合点が云ったのか「ああ」と頷く。 
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