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    drasticparadigm

    @drasticparadigm

    様子(さまこ)と申します。
    作品は主にモブリン、ぐだ♂リン、ぐだ♂ポカを投稿中。
    どうぞよろしくお願いいたします!

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    drasticparadigm

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    謎の現パロ時空注意。
    元お寺?で一緒に暮らしているポジティブな立香くん×ツンデレ蘆屋さんのぐだ♂リンシリーズです。

    同じシリーズの映画館デート編
    https://poipiku.com/1282217/8707035.html

    #ぐだリン
    limpidPhosphorus

    貴方へ、一〇一の薔薇を とある休日の午後。藤丸立香と蘆屋道満、奇妙な縁で寝食を共にしている二人は、同じ部屋にいながら互いに押し黙って、それぞれ別のことをしていた。厳密に言えば押し黙っているのは道満の方だけで、先程からずっとスマートフォンの画面に釘付けになっている立香はへえ、とかふーん、とか度々独り言を呟いており、道満からすればどうやらそれが耳障りに感じるらしかった。
    「立香」
    「何、蘆屋さん?」
    「独り言が多すぎるのでは?」
    「えっ、ごめん……ていうかオレ、そんなにうるさかった?」
     一体何を見ていたのかは知らないが、いやそもそも道満にはどうでもいいことなのだが、あれほど頻繁に驚きやら感心やらを声に出していながら、全て無自覚だったとは!
    「ここから電車に乗って行くと、結構いろんな場所に出かけられそうなんだ。全然知らなかったから、びっくりしちゃって……!」
    「そうですか」
    「特にここ、バラ園とか良くない?」
     まさかこの藤丸立香という人間、自分を誘っているつもりでは。道満があからさまに嫌そうな顔をするのもまるで意に介さず、スマホの画面を示して立香は熱心にアピールを続ける。
    「最寄駅からたった三駅! そこから徒歩十分でバラ園に到着! ちょうど今が見頃らしいし、来週行こうよ、蘆屋さん‼︎」
     立香があまりにもぐいぐいと来るので、はあ……と呆れたように返すことしかできなかったせいだろうか。道満から正式に同意が得られたわけではないというのに、この突然のバラ園デート計画は、立香によってほぼ強制的に実行へと移されたのである——!

     道満は憂鬱だった。休日というだけあって列車の車内は混み合っていたが、二人並んで座席に腰掛けつつ、隣にいる立香が気持ち悪いほどにこにこしているので、他人を装いたいとさえ思うほどに。
    「着いた! 蘆屋さん、いよいよだね」
     目的の駅へと辿り着き、改札を抜けると立香のそれはますますエスカレートしていった。草花を愛でる趣味があるのだとしたらそれはまあ構わないとしても、一体何が楽しくて満面の笑みを絶やさずにいるのか、さっぱり理解できずにいる道満を余所に、立香はこう言い放つのだ。
    「蘆屋さんとバラ園だよ‼︎ デートだよ⁉︎ 嬉しいに決まってるじゃん……‼︎」
     まだ肝心のバラ園に着いてもいないのに既にテンションは最高潮の立香に気圧されて、いつもの調子でそれとなく不平不満を訴える隙も与えられぬまま、道満はンン……と小さく声を漏らすのだった。

     見頃を迎えたバラ園は予想以上に混雑しており、道満がますます機嫌を損ねる一方で、立香は周囲の人々からの視線が気になるのか、何処か照れ臭そうにしている。
    「誰も貴方のことなど見てはおりませぬぞ」
    「そ、それはわかってるけど……! 意外と家族連れとか多いし、あんまりデートって感じじゃなかったね……」
     照れ隠しなのか、へへ、と笑ってみせる立香は正直可愛かった——と何の疑いもなく思ってから、いやいや蘆屋道満よ、お前は一体何を血迷って斯くも下らぬ戯言たわごとを抜かしておるのだと、心の内で必死に否定しようとして冷や汗をかく道満を、立香は心配そうに見守っている。自分が全ての元凶であることなど少しも気付かずに。
    「蘆屋さん、大丈夫? もしかして、具合でも悪いんじゃ……」
    「拙僧、この通りピンピンしておりまする。行きたいところがあるなら行かれるがよろしい」
    「……そう? それならいいんだけど。じゃあ、せっかくだから園内一周ね!」
     心配は無用だと判断したのか、立香は道満の手を取ると、先程の態度は一体何だったのかと思わせるほどの弾んだ足取りで彼を園内のあちこちへと連れ回し始める。色とりどりの薔薇が咲き乱れるアーチに、水面に浮かぶ花弁に彩られた噴水、風変わりな名前の付いた様々な品種を楽しんだ後は、やはり花々に囲まれたベンチに腰掛けて、薔薇の香るアイスクリームに舌鼓を打つ。
    「楽しいね」
    「ええ、まあ……そうですな」
     道満がこういう調子なのはいつものことなので、立香はまるで気にしない。しかし道満自身はと言えば、何かと調子が狂わされるのをひしひしと感じているのだ。今の言葉にも嘘はない。自分はきっと、立香と過ごすこの時間を、確かに楽しんでいる。
    「あっという間に夕方になっちゃった……。なんだかまだまだ見足りないって感じ」
     さすがにこの時間にもなると園内は人もまばらになってきて、少しもの寂しさを感じさせる。あんなに照れ臭そうにしていた立香も、当たり前のように道満と手を繋いでいて、道満は何か言ってやろうかと一度は思ったのだが、ここは空気を読んでやめておくことにした。
    「蘆屋さんは、楽しくなかった? オレが勝手にいろいろ決めちゃったから、その……ごめんなさい」
     二人並んで夕陽の赤色を浴びながら出口まで向かって歩いていると、突然立香が申し訳なさそうに言うので、道満はこの年若い恋人がまだまだ自分のことをわかっていないのだと内心愉快に思いつつも、素直にこう答えるのだった。
    「そんなことを言って、全く貴方らしくない。此度の行楽、決して悪くはありませんでしたが……拙僧を真に満足させたいと仰るのなら、ンン、そうですねえ……まずは薔薇を百本ほど、贈っていただければと!」
     道満なりの励まし——のつもりではあった。いつも前向きな立香だからこそ、揶揄い甲斐があるというものだ。こんな風に落ち込まれては、道満としても物足りない。
    「百本……⁉︎ さすがに無理だよ‼︎」
     元気よく戸惑う彼の声を耳にして、道満は悪戯っぽく、しかしにっこりと笑ってみせた。立香のことだ。きっと自分の言葉を真に受けて、無理だと言いながらも実現しようと足掻くのだろう。
     さて、それは一体いつになることやら。



     夜。バラ園で過ごした一時の思い出を噛み締めつつ、布団に潜り込んだ立香は、またしてもスマートフォンの画面を真剣に見つめていた。次回のデートの計画を練っているわけではない。道満が自分に向かって残したあの言葉——百本の薔薇について、調べていたのだ。それは果たしてどれほどの金額なのか、恐る恐る検索のボタンをタップする。
    「うーん……。頑張れば無理ではない、かなあ」
     決して法外な額ではないとわかってほっとするも、立香の目に映ったのは、薔薇の本数についての項目。どうやら贈る本数によって、異なる意味があるらしい。
    「蘆屋さんが言ってた百本って、まさか……」
     その意味を知った途端、頬がかっと熱くなった。一人きりの寝室で大袈裟なくらい慌てつつも、彼の言ったのはもしかしたらただの冗談だったかもしれないし、そもそもこんな意味があることを知っていたかどうかもわからないではないか、と自分の心を落ち着かせる。
    「百パーセントの愛……。でも、オレだったら百一本の方が好きかな……それか、百八本とか!」
     プロポーズのための百八本。いくらなんでもさすがにやり過ぎだろうか、と思うのもそうだし、なんだか煩悩の数みたいで道満に嗤われそうなので、やはり自分は百一本——これ以上ないほど愛しています、の気持ちを贈ることを新たな目標にする立香なのであった。
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