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    youraku0510

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    youraku0510

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    もしクリ君とオル君が乳兄弟だったら…という完全捏造if話。
    赤子のクリ君とオル君、モブの乳母がいます。
    ゆめしさんとのリプから出来上がりました。

    「うあぁぁぁん!!」
    穏やかな日の午後、とある貴族の屋敷から赤ん坊の泣き声が響いた。

    「はっ!?」
    隣室でうたた寝をしていた乳母がその泣き声で目を覚まし、慌てて子供部屋に駆け込んだ。

    「クリック坊っちゃま!オルト坊っちゃん!」
    泣き声の発生源であるベビーベッドに小走りで近寄ると、金髪の赤ん坊が隣で寝ている黒髪の赤ん坊の頬を、ぢゅっぢゅと吸いついていた。
    「……もう、クリック坊っちゃま。オルト坊っちゃんはおしゃぶりじゃありませんよ?」
    脱力した乳母は吸盤のようにくっついている金髪の赤ん坊を離し、涎でベトベトになった黒髪の赤ん坊の頬をハンカチで拭う。
    それでもまだ満足していないのか、もう一度オルトに向かって口を開けるクリックに、「だからダメですってば」とクリックを抱き上げた。

    ウェルズリー家の御曹司クリックとエッジワース家の長男オルト。彼らは乳兄弟として赤ん坊の頃から共に育った。
    なぜ名家の嫡男と庶民の息子が乳兄弟になったのかというと、エッジワース家は代々ウェルズリー家に仕える騎士の家系であり、ウェルズリー夫婦からの信頼も厚く、また息子達も産まれた日が数日違いという為、オルトももう一人の息子のように当主から可愛がられていたのである。

    そういった理由でオルトも一緒に育てられたわけなのだが、この二人は赤ん坊の頃から性格が正反対だった。
    活発で誰にでも懐くクリックと大人しくて人見知りの激しいオルト。
    この時点で二人を同じ部屋で育てるのはどうなのかと思ったが、当のクリックはオルトのことが大好きなようで暇さえあればオルトにまとわりついている。……オルトの方は頗る迷惑みたいだが。
    さらにクリックはおしゃぶり代わりに、しょっちゅうオルトの手やら頬に吸いつき、その度にオルトは大泣きし、乳母は大急ぎでクリックを引き離す。
    それなら、とオルトを別の部屋に移したら今度はクリックの方がギャン泣きして手がつけられなかった。
    そこで乳母が考えた苦肉の策が、クリックがオルトに吸いつこうとしたら何か気を紛らわせる玩具を見せてオルトから遠ざけようという手だった。

    「クリック坊っちゃまはオルト坊っちゃんと仲良くしたいんだろうけど……、オルト坊っちゃん、坊っちゃまのこと超苦手だものねぇ……」
    乳母の腕の中から必死にオルトに向かって手を伸ばすクリックに、やれやれとため息をついた。


    ***

    ようやく落ち着いたのか、クリックは機嫌よくガラガラを振り回し、オルトは熊のぬいぐるみで遊んでいる。
    「う!」
    「クリック坊っちゃま?どうしました?」
    いつの間にかハイハイでオルトのそばに移動したクリックは、手でオルトの頬をムニッと引っ張ったり髪をわしゃわしゃとかき回したりと、構ってアピールを始めた。
    が、オルトはその度にそっぽを向いて、まったく相手にしていない。
    「……」
    「クリック坊っちゃまー?オルト坊っちゃんはクマさんと遊んでますからねー、こっちで遊びましょうねー?」
    「うー!」
    抱き上げようとする乳母の手をペシッと払いのけて、近くに転がっていたガラガラを手に取り、オルトのそばで思い切り振り回した。

    ガランガランガランガラン!!

    「……!」
    「あー!ちゃー!」
    「ぼ、坊っちゃま!オルト坊っちゃん嫌がってますよ!?ちょっと静かにしましょうね!?」
    「…………う~」
    オルトの顔がくしゃりと歪み、今にも泣き出しそうになった時。
    「う!?」
    クリックの手がツルッと滑り、振り回していたガラガラが自分自身の額に勢いよくヒットした。
    「…………」
    「…………!?」
    「ぼ、坊っちゃま!?大丈夫ですか!?」

    「う、うぇ……、ぎゃあぁぁぁぁぁん!!!!」

    少し遅れてクリックの大絶叫が響き渡った。

    「よしよし、痛かったですね~?ほら、痛いの痛いの飛んでけ〜」
    すっかり涙が引っ込んだオルトは、乳母にあやされながら大泣きしているクリックをジッと見つめ、
    「……あーぅ」

    赤くなったクリックの額をソッと撫でた。

    「う?」
    パチクリと目を瞬いたクリックに、オルトはハッとしたように顔を逸らした。

    「……まったく、この子達は仲が良いのか悪いのか……」

    二人ともどんな大人になるのやら、と再びやれやれと肩を竦めた乳母だった。

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