今度は二人でマカロンを香ばしく甘い香りのするそれを一つ、丁寧に白い箱から取り出して両手に乗せる。無言でじっとその丸い菓子を見つめてから、ナイトは大きく口を開けた。
普段はあまり見ることのない赤い舌と白い牙が目を引く。ナイトの向かいで頬杖をつきながら、ガウマは何を言う訳でもなく薄い唇を凝視していた。
「……んむ」
微かに声が響く。さくり、と軽やかな音と共に尖った歯が黄金色の皮に埋まり、再び真一文字に結ばれた口が中身を味わうように動いた。
大きな一口を大事そうに咀嚼し、ごくりと飲み込む。噛み付いたことにより現れたクリームに視線を落としてから、ナイトはまた大きく口を開けた。
「……ぁ」
口を開けるたびに小さな声がする。
この光景を見たいがために、ガウマはここ最近頻繁にケーキ屋を訪れてはナイトへ貢いでいた。
ショートケーキにモンブラン、チョコレートケーキ、ラズベリームースやフルーツタルト。
そして今日はシュークリームを。
「……何を見ている」
唇についたクリームを舌で器用に舐め取ってから、男が怪訝な表情を浮かべる。それを物ともせず、ガウマは満面の笑みで答えた。
「美味そうだと思ってさ」
視線を数秒絡ませる。先にそれを解いたのは、ナイトだった。
「……フン」
それっきり、また無言でシュークリームにかぶりつく。男の耳がほんのりと赤く染まっているのを、頬杖をついたままガウマは楽しそうに見つめていた。
次は何を贈ろうか、そんなことを考えながら。