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    kiri_nori

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    kiri_nori

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    りんねが写真を撮ろうと思った話。
    お題はメル燐ワンウィークドロライさんよりお借りしました。

    ##メル燐

    撮影 写真をSNSへ投稿できたことを確認して何となくそのままアルバムを眺めてみる。ロケ先で俺っちのスマホを渡して撮ってもらった自分の写真や、一彩にしつこく頼まれたので撮ってやった二人での写真も混ざっている中で一番多いのはCrazy:Bのメンバーの写真だった。
     このメンバーでユニットを結成する前も含めれば枚数的に優勝しているのはニキだが、最近撮ったものほど枚数による格差はないように思える。ロケ先で地方に行ったときの写真が一番多いだろうか。ニキは大体何かを食べてるし、こはくちゃんは見たことない風景に目を輝かせている。SNS用に撮ったものでもそこはあまり変わっていない。全員きっちりカメラは意識するようになっているが。
     その中でもHiMERUは常にカメラの角度を計算しているのだろう。どの写真を見ても自分が良く見える角度と表情で写っている。完全なオフで俺っちが写真を撮ることはあまりないからかこのアルバムの中にいるのは全て間違いなくHiMERUだった。
     それ自体は別にいい。仕事として出かけている先で撮影したのだからこうなることは当然なのだ。でも、オフならどうなる? 少し予定を確認してメルメルにメッセージを送った。内容は単純で、純然たるデートの誘いだ。



     メッセージを送りつけた後すぐに駅前に向かって適当に時間を潰していた。来るかどうかは賭けの部分もあったが、デートという単語を使った以上来る可能性の方が高いと踏んでいる。意外とメルメルは人目さえなければ恋人っぽい振る舞いを楽しんでやっているのだから。
     仕事が無いことは把握済で、メッセージを送って寮を出ようとした瞬間に帰ってきたこはくちゃんと出会ったからこっちのサークル活動はないはずだ。日和ちゃんも昨日からEdenで泊まりのロケに出かけているからもう一つのサークル活動もやっていないだろう。蛇ちゃんの名前を冠している塾なのだから。
     ここまでくれば残りはメルメルに予定がなくて通知を切っていないという賭けに勝つだけだ。メッセージにさえ気付けば来るだろう。……ユニットリーダーである俺っちの頼み事は割と断るが、恋人の俺っちの頼み事は想像してた以上に受け入れるやつだったのだ。一度ノリで恋人っぽいことをお願いしたらすぐ前向きで検討を始めたからそれ以来どうも恥ずかしくて、今日まで俺っちの方から恋人としてお願いしたことはあんまりない。
     その時を思い出して頭から追い出すように軽く頭を振る。暇な時間は好きではないが、不思議とこの待ち時間は嫌いではなかった。メルメルが来ると確定しているわけでもないのに。
     そうしているとスマホが着信を知らせる音を告げた。相手の名前を確認すれば勝手に口角が上がる。
    「もしも~し。メルメル元気してたァ?」
    『なんですかあのメッセージは』
    「え~かわいい恋人の燐音くんからのデートのお誘いっしょ」
     自分で言っておいて妙な気恥かしさを覚えたがこの場にメルメルはいないので良しとする。多少顔が赤くなっていようと見られなければ問題はない。
    『HiMERUが気付かなかったらどうするつもりだったのですか』
    「そン時はこはくちゃんを連れてシナモンに乗り込んでニキに傷心の俺っちのために料理作らせる」
    『…………天城』
     大きなため息を吐きながら俺っちの名前を呼んだ。呆れているのだろう。メルメルから特に怒っている様子は感じられない。これは賭けに勝ったなと小さくガッツポーズをする。今のメルメルがどこにいるかは分からないが、後はここに来るまで待つだけだ。今の時間を確認するために腕時計を見ようとした。
    「それで? かわいい恋人の天城はHiMERUとどこに行くつもりなのでしょう」
     腕時計を見ようとして動きが止まった。メルメルの声が電話越しではなく後ろから聞こえたからだ。そんな、まさか。スマホを片手にゆっくりと振り向けばそこに立っていたのは間違いない。今も通話が繋がっているメルメルだ。俺っちが振り向いたことを確認するとメルメルが自分のスマホを耳から話して通話を終了させた。
    「は? メルメルなんで?」
    「スイーツ会で紹介する予定の店の下見がすぐ近くでしたので。メッセージを見た後すぐこちらに向かって遠くから天城の姿を確認してから電話をしました」
     なんてこった。ということはガッツポーズした瞬間も見られていたのだろうか。……後ろから声をかけてきたのだから気恥かしさを覚えていたのはばれていないと思いたい。
    「天城?」
     よし、ばれていない。目の前で首を傾げる姿でそう確信した。気持ちを切り替えると持っていたスマホを仕舞う。
    「メルメル、海行くぞ!」
     目を丸くしたその姿を見て、スマホを仕舞わなければシャッターを切れたのにと思った。



     駅前を指定した理由は海に行くためだった。夏が終わり、秋になった今の時期であれば海に行く人はグッと減る。それに加えて部屋を出る前にかなっちに確かめたところ、特に人が少なそうな場所を教えてもらっていた。そこに向かうために電車が必要だったというわけだ。
     海に着いたときにはもう太陽が沈みかけていた。潮風と共に涼しい風が吹き抜ける。本当に人気がなく、見渡す限り俺っちとメルメル以外見えない。
     ちらりとメルメルの方を見れば俺っちに続いて黙って砂浜に降り立った。海に行くのだから潮風等で文句の一つでも言われることは覚悟していたが、そんな様子は見られない。不思議に思いながらも俺っちはスマホを取り出してカメラを起動させた。
    「メルメル!」
     海を見ていたメルメルがこっちを向くと同時にその姿を写真に切り取った。うん、これだ。納得しているとシャッター音の正体に気付いたメルメルが俺っちの方に歩いてきてスマホを持っている腕を掴んでくる。
    「あなた、何をやっているのですか」
    「メルメルを撮ってた」
    「HiMERUを撮影するのなら」
    「デートって言っただろ? 俺っちはメルメルを撮りたくなったの」
     撮影するのなら事前に言ってくださいとでも続けるつもりだったのだろう。事前に言ったらそれはHiMERUになっちまうだろ、と言葉に意味を含めて強調する。息を飲み込んだその姿から正しく伝わっていると確信した。
    「ESに近いと俺っち達を知ってる誰かがいるだろ。その点ここならそもそも人がいないってわけ」
     だから他の誰かの視線を気にする必要はない。わざと言葉を減らしても伝わるのが楽しいなと笑いそうになってしまう。本当は場所に関しては海以外でも良かったのだが、あのデートを思いついた短い時間で話せる情報元は海に詳しいかなっちだけだったのだ。
     メルメルは悩むように視線を迷わせた後、俺っちの腕から手を離した。
    「……今日は角度とか気にしませんから」
    「俺っちの腕ならメルメルが気にしなくてもいい写真撮ってやるっしょ」
     メルメルなりの了承の言葉をもらって俺っちは再びスマホを構える。その口元は気が緩んでいることを示していて、波の音が聞こえる中で本日二度目のシャッターを切った。
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