「隣、失礼しますよ」
「ン? おう」
HiMERUが隣に座ってきたことに燐音は顔に出さず少しだけ驚いた。ロケバスの車内にはまだ空席があって今日は全てが埋まるほどの人数は乗ってこない。
まだニキもこはくも乗ってきていないが、この光景を見たら目を丸くすることは想像に難くない。多分二人とも突いたら藪蛇になると言わんばかりに何も言わずに後ろの方に座るだろうけれど。
さて、この男は何か燐音に用事があるのだろうか。出会った頃と違って最近は燐音がわざと隣に座っても嫌な顔をするだけで普通に会話に乗ってきてくれるようになっていた。しかしそれも燐音から隣に座った場合の話だ。HiMERUからやって来るなんて燐音が怪しんでしまうのも無理はない。
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