Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    kiri_nori

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉
    POIPOI 48

    kiri_nori

    ☆quiet follow

    お題はメル燐ワンウィークドロライさんよりお借りしました。すでに付き合っている二人の話。

    ##メル燐

    恋人繋ぎ …………暇だな。
     ソファーに身体を沈めながら首だけを動かして右隣に座っている伊達男へと視線を動かす。俺っちに見られていることなんて気付いているはずなのに、これっぽっちもこちらを向いてくれない。今だって気にせず右手でページをめくっている。少し前に「雑誌に載っているインタビューの確認をするので声をかけないでください」と言ったきり、その視線が雑誌から外れることはなかった。
     事務所がオッケーを出している時点で内容に問題はないと分かっていても、自分の目で確認してしまうのはコイツの性分なのだろう。別にそれに対して文句を言う気も止める気もない。ただ、せっかく二人でいるときにそれをやられると俺っちが暇なのだ。
     とはいえ、すぐに終わるだろうと思って声をかけないでくれという頼みを了承したのも俺っちである。邪魔をしたっていいのだが、その場合に後で何を言われるか分かったものじゃないのだ。でも何を言われたところで特に困ったりはしない。強いて言うなら今日はどちらかというとイチャイチャをしたい気分というか……。
     軽く頭を振ってその言葉を頭から追い出す。これじゃあまるで浮かれてるみたいだ。それに、メルメルがじっくり読んでいるから時間がかかっているだけで実際のインタビューはそこまでページはないはずだった。事務所に献本が置いてあるのを見かけてその時に読んだから間違いはない。だから後少しもすれば雑誌は閉じられる。……それまで俺っちが暇なだけで。
     ふと、ほぼ雑誌に沿えているだけとなっているメルメルの左手が目についた。さっきは右手でページをめくっていたし、左手ならちょっかいをかけてもセーフなんじゃないだろうか。俺っちが言われたのは声をかけないでくれであって、邪魔をしないでくれではなかった。
     そこに気がついてしまうともう我慢はできない。メルメルの視線が未だに雑誌に釘付けなことを確認して左手へとそっと手を伸ばしていく。どうせ視界には入っているはずだから、左手くらい好きにさせるか邪魔をするなと言われるかのどちらかだろう。最近のメルメルなら好きにさせる方を選ぶ気がするからそちらに賭けてみるのも有りだな。
     心の中だけで賭けを行いながら手を伸ばし、触れる直前となったところでメルメルの手が動いた。そして俺っちを窘めるように手を軽く叩いてきた。
     この反応は選択肢になかったと瞬きをしてしまう。
     想定外の行動に何だか嬉しくなりつつも、邪魔をするなというメルメルの無言の抵抗に違いない。だからこそ大人しく手を引っ込めようとしたというのに。あろうことかメルメルの方から俺っちの手を握ってきた。さすがに少し驚いて顔を見たがメルメルの表情は変わらず視線だって雑誌に向けられている。視線が上から下へと動いていることから文章を追っていることも分かった。
     それでも手だけはしっかりと握られている。振り払うことも引っ込めることも出来ずにいると、メルメルが握っている方の手がゆっくりと動き始めた。雑誌を読んでるんじゃねェのかよ。俺っちの考えは言葉にならずにその動きを見守ってしまう。
     ただ手を重ねてメルメルが握っているだけという状況だったのが、少しずつ手の位置をずらされていく。メルメルの細く手入れされた指が俺っちの指に重なったかと思うと、静かにこじ開けるように指の間に指が侵入してきた。その動きに背筋がゾクリとする。
     抵抗することもなくメルメルの好きにさせていた。好きにさせるという行為の賭けの対象が自分だったら正解だったということに気付かないまま。指の侵入が終わるとそのままの状態で再びメルメルから手を握られた。
    「なァ、メルメル……」
    「まだ読んでいる途中なのです」
     だから話しかけるなと言わんばかりにバッサリと切られてしまった。そんなこと言われたって読んでいる最中にこんな握り方をしてくるヤツが集中出来ているかは謎だ。現に俺っちは何も集中出来ていない。元から集中も何もしてなかったと言われればそれまでだが、少なくとも暇だと考えていた自分はどこかに消えてしまっていた。
     だって、これは、この繋ぎ方は恋人繋ぎだろ。読み終わったメルメルがこれについて何を言うのか予想でもしながらこの状態のまま俺っちは大人しく待つことにした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👐👐🙏💞💞💞🙏💞☺💞☺💕👏👍👏💙🙏❤💙❤💞☺💞💙❤💙❤💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works