ヴァンパイアシリーズ同題まとめ【天使の分け前/デミアン】
「そういえば、我が城に貯蔵してあるワインを持っていったのは君かな、シスター」
「えっ!?な、何の話ですか!?」
「おや、天使の分け前と言うだろう?嘘をつく悪い天使には、奪ったものを返して貰わねば」
「って、デミトリ公、牙、牙がっ!血はダメですー!」
【似た者同士/ドノアン】
※ダイレク視点
…私に流れる血は穢れた血。彼女の傍にいられるわけがない。
…私は神に仕える身。神命に従ってしか生きられない私が、あの人の傍にいられるわけがない。
…お互いそないなこと考えとる時点でお似合いですわ。ご主人、そろそろ素直になったらどないでっしゃろ?
【メビウス/ドノアン】
※セイヴァー
「お前は誰だ?」
そう問われ、背筋が凍る。
鳴呼、そうか、ここは時が捻れる場所。今そこにいるあなたは、まだ私と出逢う前のあなたなのですね。
なら、もう一度「初めまして」から始めましょう。
あなたともう一度旅が出来る、それだけで私は幸せだから。
【出来心/ドノアン】
ち、違うんです、これはほんの出来心で!悪気があったわけでも、寝首を掻こうとしたわけでもなくて!
ただ、その、寝顔があまりにも可愛くて思わず…あ、でも、した場所もほっぺだけですから!
内緒にして下さいね、アニタちゃん!あとで一緒にお菓子食べましょう!ね!?
【いつわ/アニ&アン】
※10年後アニタ視点
「アニタ、そのリボン可愛いわね。誰かのプレゼント?」
学校の友人に聞かれる度、思い出す。
『アニタちゃん、お揃いですよ』
嬉しそうに、ひらひらと同じリボンを揺らしていた人のことを。
天使様がくれたリボン。
…あの人もまだ、捨てずにいてくれているだろうか。
【まだ/ドノアン】
「ドノヴァン様、私まだあなたに伝えていないことがあるんです…!」
扉の向こうから響く潤んだ声が刺さる。
…それは私も同じだ。だが、受け取る資格も、伝える資格も、今の私にはもうない。
託したその子を連れて逃げてくれ、安全な所まで。
変容し始めた爪が、壁を砕いた。
【久遠の/ジェダアン】
不死、不変。そんな生に何の価値がありましょう。共に生き、共に老い、共に朽ちる。刹那の中で愛を育むことの尊さを私は知っています。
――残念だ。君が望むなら、あの男との永遠の安息を与えるに吝かではないというのに。随分とヒトくさくなったものだな、御使い。
【まだ見ぬ君へ/ドノアン】
“あなたに使命を与えましょう、アンジュ。人間界を統べる運命を背負った少女を守りなさい。不浄の者共に脅かされる前に”
畏まりました、主よ。よし、早くその女の子を見つけないと。
今は半魔族の男性と一緒にいるらしいけど…いざとなったら私が保護しなくちゃ!
【肉/モリアン】
「あれ…何だか僧衣がきついような…。そういえば心なしかこの辺にお肉も…っ」
「あら、この程度気にすることないわよ。むしろこのくらいの方が触り心地も良くて気持ちイイわ」
「ひぃやぁああああモリガンさんっ!?一体どこから!?て言うかどこ触ってるんですかああああ」
【チャレンジ/ドノアン】
※恋人設定
「…アンジュ、静かに。アニタが起きる」
「す、すみませ…っ」
「…そんな顔をされると、出来るものも出来ないのだが」
「だって、まだ恥ずかしくて…!」
…したいと言い出したのはお前じゃないのか。
その唇に触れられる日は、一体いつになることか。
【かがみ/ドノアン】
「靴紐が解けてしまって…」
屈み込む彼女の尼僧服のスリットから白い素肌が露になる。無防備なのは俗世に疎い故か、男の怖さを知らぬ故か。
思わず傘を深く被り直し、その白さから目を逸らした。
…下手な淫魔よりも、彼女の方が余程私の心を波立たせる。
【嘔吐/デミアン】
口付けられると同時に、口内に生暖かい液体が流れ込む。錆びた匂いと鉄の味。堪らず男の体を突き飛ばし、シーツの上に吐き出した。
「…まだ体が受け付けないのかね。慣れたまえ、シスター。それを摂取せねば、君はもう生きられないのだから」
新しい主が、私を抱いて笑う。