027: 2018/09/22 「マスク」「……もう少し顔を隠すか?」
「ん、いや、これが良いや」
白い和服、紺の袴を履いて、模造刀を下げる初恵。
コスプレ用の撮影スタジオで、左手で狐面を持ち顔を覗かせる。
美月がカメラを持って真剣に写真に収める。
ちなみに、撮影スタジオに来たのは単に陽介の誘いと、美月も資料に欲しいとカメラを持ってきたからだった。
京子は女の子っぽい格好をさせられるかもと欠席、盾は店番。
「稲荷神社じゃないけど、森宮神社でやったら雰囲気出るか?」
「それはなんかこう、系統が違うから……」
「絶対雰囲気出るってー」
そこに、同じく和装をしてきた陽介の袴は紅色。
「第一、神社に行ったら――」
「?」
ふっ、と陽介の顔に近づき。
「私に狐が乗り移って、陽介をどこかに連れ去ってしまうかもしれないな」
陽介の背筋が、思わずゾクっとした。
雰囲気に飲まれてた美月も、良い構図だと我に帰り、シャッターを切った。