意味のないモノカチャリ、と。
自室の扉から乾いた金属音が聞こえた事で、やっとトレイは溜めていた息を吐き出した。
さあ、ここからは独りの時間だ。
常備してあるスミレの砂糖漬をひとつ摘まむと、目を閉じて口の中へ放り込む。
舌の上に広がる甘さと、鼻に抜けるスミレの香り。
張り詰めていた肩の力は抜けて、やや雑な動作でベッドの上に仰向けに寝転んだ。
「へえ……。そんな無防備な顔もするんスねぇ……」
鍵をかけた筈の扉から、シシシ……と独特な笑い声が聞こえて、思わずトレイは起き上がる。
どうやって……?と聞く前に、
「俺には、あんまり意味ないっスねぇ」
と、ラギーは手をひらひらと振って見せ、そのままトレイの隣へやってくると、どさりと腰を下ろす。
「……まいったな」
そうは呟けども、トレイは全く困っている様子もなく、甘くなった唇をラギーのそれに重ねた。