ガラクタ置き場と化している翠石邸敷地内の古い蔵、その地下にそれは在った。依織に伴われて隠された階段をくだり、埃っぽい蔵から温湿度の管理された空間に入るその瞬間、善はいつも空気の質の変化に少しだけ怯む。
「どないしようか」
依織の声は静かだった。
「なあ、善」
「……若の、お心の通りに。私は、あなたについていきます」
そこは武器庫だった。入手経路も資金も限られている中依織が苦心して集め、保管している銃火器が整然と並べられている。
依織は善の言葉で笑ったようだった。静かではあるが穏やかではない、虚しげに冷えた低い笑い声が、喉の奥から音のない武器庫に響いた。
「ほな、派手に散ってみるか?」
いっそのこと、と言って振り返った依織の表情はやはり冷えたものだったが、善が笑い声から想像していたほど硬くはない。
503