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    mol81977638

    @mol81977638

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    mol81977638

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    本垢16代目が生まれた時の妄想話を書きました。文章書けないぼくはもうつかれたよ

    …───汝よ旅立て
    彷徨えし記憶を紡ぎ
    彼らを天へと帰すのだ───…

     頭の中から聞こえてくる声に目を開ける。どちらが天か地かわからない、暑さも寒さも感じない、白く眩い光に包まれた無の世界に投げ出されるように、我は一糸纏わず力無く漂っていた。

     その声をよく聞くと、それは大勢の声の集まりで、先の言葉を繰り返し斉唱しているようだった。
     我はその声に聞き覚えがあった。今や我のものであるこの星の子の型をした傀儡を過去に借り現世で生きた15人分の星の子の記憶が刻まれていたのだ。そのお陰で今までに彼らがどんな性格で、どんな口調で、どこでどんな出来事を体験したのか、会った事もないはずだがまるで自分のことのようにわかる。
     そこで我も同じく、この傀儡に憑依した星の子の魂の一つであることを思い出す。

     あの声は、我の先代たちだ。


     眩しさに慣れ、15人の先代の姿が見えてきた。彼らは実体を持たない精霊と同じように青黒く、風もないこの空間で篝火のように揺らめいていた。見た目は全員多種多様で、背の高い者もいれば赤ん坊のように小さな者、顔が隠れるほど前髪の長い者、角が付いた嘴の長い鳥の面をつけた者、裾に沢山の房がついたケープを羽織る者など、一人として同じ姿の者はいなかった。

     彼らは先ほどから我を取り囲むよう手を繋ぎ大きな輪を作り、品定めするかのように我を見ていたようだ。我は未だ力が入らず、その輪の中心に横になり耳を澄ますことしかできない。
     『次の体の持ち主はこの子なの?』『力が弱そうだな』『飛行能力は大丈夫なのか?』と、胸の光を青く瞬かせながら、響き渡る斉唱の中ひそひそ囁く者がいる。無抵抗状態の上散々な言われようで気分が悪い。

     『別になんだっていいじゃない』

     そんな中一人の先代が声を上げ、斉唱をやめた星の子達は一斉に声の主を見やる。辺りは一瞬で水音だけが響き渡る。

     『私たちのぼうやの助けになってくれるなら、私はどんな子でも構わないわ。皆もそう思うでしょう?』

     白い頭巾を被り、金色の額飾りがついた面の、白鳥のような白いケープに身を包んだ小柄な星の子が、皆に言い聞かせるように説く。
     白頭巾の星の子と目が合う。彼女は優しく微笑みこう言い放った。

    『ねえ、あなたがこれから私たちの代わりに現世で生きてくれるのよね?』

     …しまった。これは呪詛だ。先代たちはこの体を借り再度生を受けたにもかかわらず、現世への未練を残したまま死に、やり残したことを後世に押し付けようとしている。

     我らは他の星の子のように、同じ身として転生することは叶わない。原罪で自分の命と引き換えに同胞を天に還したうえで、この傀儡を天空まで運べば我らの使命は完結する。
     その後この体は天空の入り口─眩い光の球体付近─に漂う別の星の子の魂と入れ替わり、最早別人として天空に足をつけ、再び現世へ転生できるようになっている。
     我も例外なく、天空に引き寄せられるように漂う体に滑り込み、たった今傀儡と魂が馴染んできたところであった。

     意識がはっきりして体にも力が入った我はようやく自分の容姿が定着されたことに気付く。我はいつの間にか長い髪で顔の両脇と高い位置にシニョンをつくり、鷲のような嘴の大きな面をつけ、全身毛で覆われた砂色のケープ、膨らんだ膝丈の履き物に、いつか見た孤島の大精霊と似た杖を背負い、その裸足を天空につけていた。
     「これは我なり。傀儡を借り再び地に降りる事を赦し賜え」
     己の形成に成功した我は小鳥のような甲高い声を上げ姿を先代に披露する。これも傀儡が代々行ってきた儀式のひとつであった。

     『しかと、聞き届けたり。』
     悪夢のように輪を作っていた先代達はゆっくり、早口で、はきはきと、舌足らずで、おどけて、堂々と、戸惑いながら、静かに、可愛らしく、泣きそうに、飄々と、頼りなく、安らかに、怒りながら、そして淡々とそう返事すると、灯火を吹き消すよう姿を消した。どうやら我の存在を認めてくれたらしい。
     代わりに目の前には一つ前の先代が原罪で救っていた同胞たちが立ち並び、我に手を振り天へ還っていった。

     澄み切った夜空の下に、白い花道が敷かれている。
     我は静寂な一本道をたどり現世への門をくぐる。
     先代の呪詛を胸に抱えながら。


    「…というわけで、わしは今貴様の面倒を見てやっているというわけじゃ」
    「…ごめん、全然意味がわからない」

     深い紫の口当てをもごもご蠢かせながら、その星の子は頭を抱え、我の説明を飲み込む前に思考を放棄したようだった。長い一本の三つ編みを団子状にまとめ、橙色の羽織型ケープに濃紺の袴を履いた、我の背丈の二倍はありそうな大柄なこやつが先代の言う「ぼうや」であることは傀儡の記憶が教えてくれたので、最早自己紹介を聞く必要すらなかった。
     先代の中で一番母性の強い個体が、生まれたばかりのこやつを拾い我が子のように溺愛していたようだったが…控えめに言ってもその図体にしては内面がどうしようもなく幼稚で阿呆。確かにこれでは先代も心配で死んでも死にきれなかったのだろう。

     我は結局、先代からの呪詛から抜け出せず、「ぼうや」のお付きとして、こうして毎日奴が差し出す手を握り補助をしてやっている。
     そして我もいずれ死に、あの眩い光の中に棲まう先代達の輪に入る日が訪れる。その日が来たら我は真っ先に後世に伝えるべきことがある。

    「こやつを巣立ちさせてやってくれ」
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