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    さくらの

    @night_18_maker
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    さくらの

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    新刊の感想マロいただけたのがあまりにも嬉しくてテンションぶち上がって生まれたSS。支部に収めるには短いかも?と思ったのでとりあえずこちらに格納。本当にありがとうございました感想もらえるってうれしすぎるな!!!!

    #こへ滝
    smallWaterfall

    【こへ滝】恋は閃きのように「聞いてください七松先輩!」
     目の前で、整った形の唇が、ぐだぐだと中身のない話をこぼし続けている。
     珍しいことに最初は弱気な愚痴だったので、そうかお前でもそういう事があるかと頷き聞いていたのだが、いつの間にか立ち直ったようで、いまは先日の四年生内での得意武器勝負でいかに華麗に勝利を収めたかという話になっていた。
     兄弟が多いせいか煩いのには慣れているが、これをただ聞き続けるのも退屈である。
     ふと喋り続ける滝夜叉丸の右目の下、頬骨あたりの皮膚が、一筋白くなっているような気がした。なんとなく気になって、むに、とその頬を掴む。よくよく目を近づけてみれば、古い傷跡のようだ。おそらく戦輪の練習中にでもつけたのだろうが、せっかくこれだけ手触りの良い肌なのだから、長次のように大きな傷がつかねば良いがと思った。ついでに、その頬を両手で挟んでむにむにと揉む。
    「ひゃ……? はの……?」
    「ん……?」
     先ほどまでの口数はどうしたのか、滝夜叉丸が妙に大人しい。頬を揉むのに抗議するかと思ったがそうではなく、なぜか動揺したように目が泳いでいる。
     そこから読み取れたのは『焦った、危なかった、期待した』という感情。……期待? まさか怒られたいと思っていたわけではなかろうが。
     もう一度顔を近づけてみる。
     これでも人の目から心を読む術は得意な方だと思っていたが……と、じっと瞳を覗き込んだ。
    『近い、どうしよう、嬉しい……マズイ』
     読み取れたのはやはり期待と焦り、相反する感情だった。でもまだうまく読めていない気がして、モヤモヤする。
     だがそれ以上感情を読み取られまいとしたのか、ぎゅっと閉じられる瞼。つかんでいる頬が熱い。少し、強すぎただろうか。
     もう少し驚かせば目を開くかな、と額をくっつけてみる。
    「滝夜叉丸」
    「……!」
     引き結ばれた唇。
     何かを予感したように、ふっと止められた呼吸。

     ほんの思いつきのように、そこに自分の唇を重ねていた。

    「ん、ふ……っ」
     耳を打つ、震える吐息。
     あれ? なぜ――と考えるより前に、これはマズイなと思ったのはこちらの方で。
    「滝夜叉丸」
     呼ぶ声が、先ほどよりも甘いのは。
     唇が、もう一度とばかりに疼くのは。
    「あの、七松先輩、い、いまのは…!?」
     そっと身体を離すと、急に腕の中が物足りなく感じる。
    「十秒やる」
    「えっ?」
    「さっきのが嫌だと思ったなら逃げるんだぞ、全力で」
     次捕まえたら、離してやらない。きっと離せない。
     そう告げれば、さらに赤くなった滝夜叉丸が悲鳴を上げるように叫ぶ。
    「きゅ、急すぎます!」
    「悪いな、私もたった今自覚したんだ」
    「なにをですか!?」
     もう手を伸ばしたくなるのを我慢して、いーち、にーいと数えだす。
     慌てたように立ち上がった滝夜叉丸を見て、ぎゅっと胸の奥が締め付けられる。
     しかし迷いながらもまた座ったことにホッとすると同時に、期待するように心臓が弾む。
     それからまた立ち上がろうと腰を浮かしたのをみて、焦りと不安が過る。
     でも。
    「きゅーう」
     まだソワソワと去るか残るか決めかねているようだが、今から全力で駆け出したとしても、数歩で捕まえられる自信がある。それは滝夜叉丸もわかっているはず。それならば…その迷いはもう答えと同じなのではないか? 困惑より歓喜がその瞳に揺らめくのは、つまり――
     急に腑に落ちたこの感情が、滝夜叉丸を動揺させているものと同じなのか、答え合わせをしてやろう。
    「じゅう!」

     きっとこれを、恋と呼ぶのだ。
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    さくらの

    TRAINING新刊の感想マロいただけたのがあまりにも嬉しくてテンションぶち上がって生まれたSS。支部に収めるには短いかも?と思ったのでとりあえずこちらに格納。本当にありがとうございました感想もらえるってうれしすぎるな!!!!
    【こへ滝】恋は閃きのように「聞いてください七松先輩!」
     目の前で、整った形の唇が、ぐだぐだと中身のない話をこぼし続けている。
     珍しいことに最初は弱気な愚痴だったので、そうかお前でもそういう事があるかと頷き聞いていたのだが、いつの間にか立ち直ったようで、いまは先日の四年生内での得意武器勝負でいかに華麗に勝利を収めたかという話になっていた。
     兄弟が多いせいか煩いのには慣れているが、これをただ聞き続けるのも退屈である。
     ふと喋り続ける滝夜叉丸の右目の下、頬骨あたりの皮膚が、一筋白くなっているような気がした。なんとなく気になって、むに、とその頬を掴む。よくよく目を近づけてみれば、古い傷跡のようだ。おそらく戦輪の練習中にでもつけたのだろうが、せっかくこれだけ手触りの良い肌なのだから、長次のように大きな傷がつかねば良いがと思った。ついでに、その頬を両手で挟んでむにむにと揉む。
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