良は光遼と出かけるために待ち合わせ場所についたが、少し時間が早かったからか、まだその場所に光遼はおらず、良はスマートフォンで時間を見ながら考えていた。幸い繁華街が近くにあるためカフェなど時間の潰せる場所はいくらでもある。どこか近くのカフェに入ろうか、なんて思っていると声をかけられた。光遼かと思ったが、声からして違うのはわかっており、目線をそちらに向けると可愛らしい女性二人がそこにいた。
「お兄さん一人なんですか?」
どうやら逆ナンというものらしい、良は男装しているためか、元からの顔立ちの良さも相まってこうしてよく逆ナンをされることが度々あった。その時は断ったり、運良く待ち合わせ相手が来たりで過ごしていたが、光遼はまだ来る様子はない。
「すみません、待ち合わせしてるもので」
「でもさっきからいますよね?」
それは自分が先に来てしまったからだ、と思わず相手に言いたくなる。けれど返答を聞く限り、相手は早々簡単に諦めてくれないだろう。どうしようか、と悩んでいると女性の後ろから良のよく知っている相手が割り込むように入ってきた。
「散れぃ! 私の彼氏だから!」
光遼だ、と良は微笑む。女性らは突然きた光遼に戸惑っていた、周りからしたら彼女持ちにナンパした、と見られるだろう。光遼が良の腕を掴み女性二人を睨む。その睨みは良からしたらかわいらしく見え、思わず笑ってしまう。良は光遼の肩をそっと抱き寄せ、女性らに言う。
「すみません、僕の彼女はヤキモチ焼きなので。では、失礼します」
そう言うとそのまま立ち去る良と光遼。暫く歩いていると光遼は笑いながら良に言った。
「かっこいい〜! その言葉ならほかの女子イチコロじゃん」
「勝手に言葉が出たんだよ」
「……ねぇ、ほんとに気をつけなよ……。誰にでもそんな事言っちゃダメだからね!?」
「肝に銘じるよ」
笑っている良の顔を見て本当に分かっているのか、と言わんばかりの表情をする光遼。そんな光遼に頭を撫でつつ、目的のショッピングモールへと歩くのであった。