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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    ちょこ

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    エガキナ
    よその子さん少しお借りしてます

    風邪をひいた日  言われてみれば、近頃体調が不良だった気がしていた。朝から頭痛がしたり、少し熱っぽかったり。けれど原稿の締切や打ち合わせ、そして没討伐など自分の体調を考える暇はなかったのだ。
     頭痛が起きる度に痛み止めを飲んだり、解熱剤を飲んだりと誤魔化していた。少し休めば大丈夫、そう思っていたから。

    朝、起きようと体を起こそうとしたが、体が鉛のように重かった。
    「……っ」
     今まで感じたことの無いような頭痛が琥珀を襲う、身体も熱く感じ、もしかして熱があるのではとベット脇に置かれていた体温計を取り、熱を測る。
     ぼんやりとしていると体温計が鳴り、体温を見て琥珀は少しだけ目を見開く、高熱だったからだ。
    「……薬……」
     今まで休まなかったツケがやってきたのだろうか、とりあえず薬を飲まないと、とふらつきながらもベッドから起き上がったが、途端に目眩がしてそのまま崩れるように倒れそうになったが、影から伸びた手が琥珀を受け止めた。
     その手はサクリの手だった、ぐったりと力なくサクリにもたれかかり、熱がさらに上がったからか、呼吸が乱れていた。琥珀が倒れた際、何か物を落としたのだろう、落ちた音でドアをノックしてフレイが入ってきた。

    「旦那?  今の音なに……旦那!?」
     フレイは目の前の光景に驚き、慌てて駆け寄った。サクリは何も言わずに琥珀の影の中に消えていった、サクリに聞こうと思っていたフレイは聞けずじまいだったが、琥珀の額にそっと手をあてた。
    「あっつ!  熱あるじゃん!  旦那?  聞こえる?  旦那!?」
    「フレイ?  どうしたの……琥珀さん!?」
     フレイが中々戻ってこなかったからか、リヒトが部屋に入ってきてフレイと同じように慌てて駆け寄る。リヒトがどうしよう、とおろおろとフレイをみる。

    「リヒトはエガキナで治療できないか試して!  創の旦那呼んで病院に連れていってもらう!  俺らニジゲンじゃ取り合ってくれるか分からないし……」
     フレイはそうリヒトに言って、自身のエガキナである地図を取り出した。この時間なら創は家にいるはず、フレイはそう思いながら創がいる場所へ飛んだ。一方、リヒトは手のひらから優しい光を琥珀に包むように当てる。

    「熱……下がるかな……」
     気休め程度にしかならないかもしれない、ただ、琥珀の苦しそうな表情が少しだけ和らいだようにも見えた。
     ここ最近、琥珀の体調があまり良くないことは知っていたが、こうなるとは思わなかったのだ。もっとちゃんと見ていたらよかった、とリヒトが泣きそうになっていると、後ろから声が聞こえた。

    「リヒト!  創の旦那連れてきた!」
    「琥珀?  大丈夫か?」
     丁度フレイが戻ってきたのだ、創は琥珀を抱き抱えるとフレイに言った。
    「病院まで飛ばせるか?」
    「大丈夫、できる」
    「あ、あの、創さん……」
    「リヒト、大丈夫だからそんな泣きそうな顔するなって」
     創は安心させるように笑ってリヒトの頭を撫でた、既に泣いていたリヒトの表情を見て、創は琥珀が起きたら一言言わないとな、と思いフレイと一緒に病院へと行った。

      病院の診察では無理のし過ぎ、と言われた。薬を貰い点滴までしてもらった琥珀。先程の表情とは違い、呼吸も落ち着いており寝ていた。
     自室で寝ている琥珀を横目に、創とフレイ、そしてリヒトは琥珀の顔を見つつ話していた。
    「……んー、琥珀昔からこうなんだよな」
    「そうなのか?」
    「そうそう、まぁ……琥珀の場合、家がちょっとって感じだったし。……でもお前ら心配させるのはツクリテとしてダメだなぁ」
    「……琥珀さんもう大丈夫、なんですよね」
    「ゆっくり休めば大丈夫って言ってたし、俺が見てるからお前ら休んどけ」

     創はそう笑ってフレイとリヒトを部屋から出した。朝から大変だったな、と話しつつ。二人が部屋から出た時、琥珀はそっと目を開けた。
    「……あれ……」
    「起きたか、お前ぶっ倒れたんだよ。覚えてない?」
    「……おぼえてない……」
    「お前さぁ、フレイとリヒトすっごく心配してたけど?  サクリに感謝しろよ?  あいつが受け止めてなかったらお前床に激突してたからな?」
    「……あー……」
     少し思い出したのか、琥珀は顔を手で覆う。この様子だと相当心配をかけてしまった気がする、琥珀はため息を吐く。だがその表情はどこか笑っていた、創はなんで笑ってるのか分からず聞く。
    「ん?  なんで笑ってんの」
    「え、笑ってたか?  ……いや、こう心配されるんだなって思って」
    「……お前なぁ……」

      創は思わず琥珀の額にデコピンをした、誰だって心配する、と言わんばかりに。こうも、この目の前の親友は自分を無意識に卑下する。
     誰も心配しない、そう思ってるのだろうか。心配しなかったらわざわざ自分が病院になんて連れていかない、フレイやリヒトもあんな焦らない、そしてサクリだって助けないだろう。

    「お前ちゃんと休めよ? あとでフレイやリヒトにも謝れよ!  ならおれは粥を作ってくる」
    「あぁ、ちゃんとあやま……おいまて」
      琥珀が止める声を聞かずに創は部屋を出た。いけない、創をキッチンに立たせては。その後に聞こえてくる声。
    「創の旦那!  キッチンに立つな!」
    「粥作るだけだって!」
    「あ、ふ、二人とも落ち着いて……!」
      やんやと聞こえてくる声に琥珀は思わず笑う、そして、自分の影に向かって静かに声を出した。
    「……ありがとう」
     何も声は聞こえなかったが、影がひとりでに少し揺れた。
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