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    ちょこ

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    高月
    よその子さんお借りしてます

    ##高月

    先輩と後輩 困った、瑞季はどこか顔を引き攣らせながら目の前にいる女性を見ていた。事の発端は、たまたま飲み物を買おうと自動販売機まで来た時だった。その女性は自分と同じ高月の職員で、顔と名前だけは知っている間柄だった。瑞季自身、女性が苦手ということもあり、必要以上に話しかけるなどした事がなかった。それなのにだ、相手は自分を見つけたかと思うと、すぐにそばに来て話しかけてきたのだ。最初は仕事の事で話しかけたのか、となんとか話を聞こうとしたのだが、内容からしてそれが違うとすぐにわかった。
    「遠野さん! 今度の土曜日に合コンするんですけどぉー、もし良かったら参加しませんか?」
    「はい……?」
     最初は聞き間違いかと思ったが、相手はお構い無しに話し続ける。それで聞き間違いじゃないと分かったが、なぜ自分を誘う、との感情が埋め尽くされる。相手は確かに自分が女性が苦手とは知らない。瑞季自身、色んな人に打ち明けてないのもあるからだ。少なくとも、自分が信頼しているバディと高月に入った時からお世話になっている先輩にしか今のところ打ち明けていない。
     もしかしたら、自分の反応で薄々勘づいている人もいるかもしれない。だが、悲しいことに相手は気づいていない。むしろ、気づいて誘っていたら相手は相当性格が悪いな、と思わずそういった目で見てしまいそうになる。女性が皆、意地悪だとかそう思いたくないのだが、小さい頃からの環境のせいか、なかなかその考えから変わることが出来ない。
     さて、どうすればいい。と瑞季は悩む。
    「うーん……生憎そういったのは興味無いというか……」
    「でも! 親睦深める意味合いも兼ねてますよ!」
    「いや……」

     やけに突っ込むな、と瑞季は頭痛を引き起こしていた。どう断ってもこれは諦めてくれなさそうだ、と感じ取ってしまう。相手の目を見てわかるのだ、何がなんでも、自分を参加させようと思っているのだろう。かといって合コンに行くのは回避したい、こういう時、いつも盾にしてしまうが、自分を助けてくれるバディは生憎いない。どうすればいい、とどこか腹痛を起こしている時、自分と相手の間に割って入った人物がいた。
     その相手は、瑞季のよく知っている相手───成川 凛太郎だった。瑞季から凛太郎は後輩である。なぜここに、と瑞季は咄嗟に言葉が出なかった。凛太郎は、戸惑っている女性の顔を見て話す。
    「すみません、その日は俺と特訓に付き合ってくれる約束してるんで」
    「え、そうなの……?」
    「そ、そうそう。すみませんねー……参加できません……」
    「そ、そっかぁ……」
    「瑞季さん、この後俺と打ち合わせですから。失礼します」
     そう言って足早にその場を立ち去る瑞季と凛太郎。先程まで感じていた頭痛や腹痛がどこか消えていく、その感覚に助かった、と瑞季は安堵した。それと同時に、安心したからか吐き気が込み上げてくる。
    「瑞季さん、大丈夫?」
    「……ごめん、トイレ行く」

     本当はすぐにお礼を言いたかったのだが、その前にトイレに駆け込んでしまった。結果的に吐かなかったが、思わずため息を吐く。後輩に手間取らせた、やってしまったと思いつつトイレからでると、凛太郎がお茶のペットボトルを瑞季に渡した。
    「大丈夫っスか」
    「……ありがとう……。はぁ、助かった……ほんとすまん、情けねぇ……」
    「いや情けないとか思ってないけど……」
    「…………よくあんな嘘思いついたな」
    「困ってそうだったんで」
     どうやら凛太郎の方が一枚上手だったらしい。やるな、と笑いつつお茶を飲む。凛太郎には話していない、けれど、何となく察しているのかもしれないなと相手の顔を見る。
    「今度の土曜日、今日のお礼に飯食いに行くか」
    「瑞季さんの奢り?」
    「奢り奢り、好きなの奢ってやる」
     当日までに決めておけよ、と瑞季は笑った。
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