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    さわら

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    さわら

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    貴方はさわらのアシュグレで『ひねくれた告白』をお題にして140文字SSを書いてください。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/375517
    140字を毎回無視するやつ

    ##エリオスR
    #アシュグレ
    ashGray

     口付けるように指先が額に触れる。
     普段は重く長い前髪に隠れたそこを皮膚の硬い指先がかき分けるように暴いて、するりとなぞる。
     驚くように肩を揺らした。けれどそれ以上の抵抗らしい抵抗はできない。ただされるがまま、額をなぞる指の感触に意識を向ける。
     アッシュの指がなぞっているそこには、本来であればなかったはずのものがあった。ある時から消えない傷となって残り続けているそれは、過去のグレイとアッシュを同じ記憶で繋げている。
     アッシュがこちらに触れようと伸ばしてくる腕にはいつも恐怖を覚えた。その手にいつだって脅かされていたから、条件反射で身が竦む。けれど、実際に触れられると違うのだ。
     荒々しいと見せかけて、まるで壊れ物に触れるかのような手付き。それは、本当に口付けられる瞬間と似ていた。唇が触れ合ったときもそれはそれは驚いたものだけれど、最終的にはこの男に身を任せてしまう。今と同じように。
     乱暴なところばかりしか知らないせいか、そんなふうに触れられてしまうと、勘違いをしてしまいそうになるのだ。まるで、あのアッシュが『優しい』と錯覚してしまう。
     そんなはずはないのに、彼からはついぞ受けたことのない扱いをされると、困る。困るけれども、そんなふうに触れられると、無防備に身体を明け渡してしまう自分も居た。
     だから動けない。抵抗できない。
     優しいという言葉と一番縁遠いはずのこの男が、どうしてそんなふうに自分に触れるのか。否、そうやってグレイに触れることができたのか、と思う。
     あまりにもらしくないアッシュに驚くような、訝しむような、どきどきするようなどぎまぎするような――有り体に言えばグレイの心を落ち着かなくさせた。
     そんなふうになる己の心情も含めて、似ているのだ。アッシュに口付けられる瞬間と、こうして額の傷に触れられている今。ばくばくと身裡のなかで音を立てて高ぶるような心がリンクする。
     だから、恥ずかしくなった。
    「……っ」
     額をなぞる指先の感触に意識を向けたまま、唇をきゅっと噛んで息を詰める。
     触らないで、と拒否をしたいような。
     けれども、やはり身体は動かなくて。沸き立つ怒り――ジェット――を宥めて、動くことを拒否している。アッシュにされるがままを、己は享受しているのだ。
     どうしてだろう、と考えながらもグレイは既に理解してもいた。もう一人の自分がなんと言おうとも、この傷に触れる権利は目の前の男にしかない。と、そう思う。
     こうしてアッシュの指先でなぞられるたびに、否応なく理解してしまうのだ。
     今まで、そんなふうに思ったことなどなかったのに。
     この傷は自分の弱さの象徴だ。
     嫌なことを嫌とはっきりと言えず、抵抗さえもまともにできず、唯々諾々と従ってしまった、その結果だ。逃げて飛び出して落ちた、弱くて臆病な自分の象徴。
     きっかけはどうあれ、自業自得だと今まで思って、生涯消えることのない傷を受け入れていた。
     けれど、どういうわけか彼に触れられれば『しっくり』とくるのだ。
     すべてのきっかけの男だからだろうか。グレイの弱さを突きつけてきた男だからだろうか。
     触れられたくないと思いながらも、アッシュに一番触れられたいのだと強烈に願っている。二律背反だ。
    「――いいか」
     思考を遮るように、アッシュが口を開く。
     目の前の男の顔には険がない。それを珍しいものを見つけたような、不可思議な気分で見つめた。
     何を考えているのかわからない、普段は鋭い夕焼け色の瞳と目があって、わずかに揺れた気がした。
    「アッシュ?」
     らしくない色を見つけたような気がして思わず問いかけるように呼んでしまう。けれど男はそれに応える素振りはなく、無視するようにグレイを引き寄せた。
    「……っ!」
     びくり、と思わず肩をはねさせた。
     指先になぞられていたはずのそこには、代わりに柔らかいものが押し当てられている。
    「……いいか、これは俺がつけてやった傷だ。それを一生忘れるな」
     まるでその傷跡から染み込ませるみたいに囁かれた。そこからアッシュの言葉がじわりじわりと侵入するようで、グレイはかっと身体を熱くさせる。
     アッシュは事あるごとに口にしていた。最初は挑発をするように、揶揄するように『俺がつけてやった傷だ』と。
     けれど、アッシュがこうしてグレイの額に触れるたびに口にしていたその言葉からは、いつからか揶揄の色はなくなっていて。
     今、アッシュが口にする同じ言葉に滲んでいるのは、熱さと甘さ。それはまるでベッドの上で恋人同士が囁く睦言めいている。
     そんなこと、二人の間ではありえないと思いながらも、アッシュの声と言葉がグレイの思考を焼く。
     いつだってグレイを恐怖に陥れては思考停止させる彼のすべて。今この時もグレイから自らの主導権を奪っていくのに、けれどそれは恐怖からではない。ぶつけられた、独占欲じみた熱のせいだ。
    (どくせん、よく……?)
     浮かんだ言葉にはっとなって反芻する。焼かれた思考がありえない言葉をはじき出した。
    (アッシュが、僕に独占欲……?)
     繰り返してみても、違和感がある。違和感があるのに、――しっくりくる。
    『これは俺がつけてやった傷だ。それを一生忘れるな』
     これまで何度となくアッシュに囁かれたその言葉が蘇って、グレイの頬が熱くなる。
     そんなもの、きっと勘違いだ。勘違いに違いない。そんな意図、アッシュには決してないだろう。――ないはずだ。
    (アッシュが、僕に独占欲を覚えてるなんて、絶対……ない)
     ありえない想像を一蹴する。
     この男はグレイを気に食わないと思っているはずで。まさか執着を覚えているだなんて、そんなことはあるはずがないのだ。――ない、のに。
    (……アッシュの声が、耳から消えない……)
     生涯消えることのない額の傷に口付けて、アッシュが言う。『これは俺がつけた』と。『それを一生忘れるな』と。傷の上から更に刻み込ませるみたいに、彼は今まで何度となく口にした。それこそ、グレイがその言葉を忘れられなくなるくらいに、何度も。
     絶望にも似た心境だった。身体のなかに火がついたみたいにぼっと熱くなる。
    (……どうしよう……。心臓、いたい……)
     早鐘のようにどくどくと鼓動が打つ。その音が密着した身体を伝ってアッシュに届いてしまわないかと不安になった。
     けれど、アッシュを相手に振り解けるわけもなく。抜け出せるはずもなく。――そうやって、抵抗しない理由を自ら作っていく。
     本当は、グレイ自身がまだこの腕の中に囚われたままで居たいと願っていた。
     こんなにもグレイの心が落ち着かなくなるのは、すべてらしくないアッシュの熱量のせいだ。
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