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    りざりか

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    りざりか

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    自分とこのチップくんがカジノにやってくるまでのお話。
    ⚠️チップくんの対人関係や過去など、多大なる捏造・ヘッドキャノンを含みます。
    ⚠️乱文のため読みにくいです。
    ⚠️リザリカが自分の中でひとまずの答えを出したかっただけの語りなので、人によっては解釈違いが起きる恐れがあります。閲覧は自己責任にてお願いいたします。異論は認めます。

    チップ・ベティガンの過去 昔は田舎で素朴な生活をする青年だった。
     親と早くに死に別れてしまい、カウボーイとして親から引き継いだ牧場を切り盛りする若者だったチップは、そののどかな生活に不満は無かった。土と草の匂いに囲まれて、季節が移ろうたびに変わる風に吹かれ、馬を駆り牛たちを世話する暮らしは、のびのびとしていて心地が良かった。
     しかし、一つだけ彼を思い煩わせる悩みがあった。そう、金銭の問題である。彼の切り盛りする牧場は小さく、僻地に存在していたため、牛を売りに行くのも一苦労。正直言って、儲けと必要経費の天秤は釣り合っているとはいえなかった。そのため、基本的には質素倹約な生活を余儀なくされ、時には食費を切り詰めることもあった。最終的には借金をしなければ生きていけなくなった。それでもチップは、持ち前の明るさと前向きさで逞しく生きていた。
     ある時、生活費がどうしてもやりくりできず、食料が底をついてしまった。牛たちにも食べさせなければならないが、何より自分が飢えてしまっては元も子もない。追い詰められた末に一番近い農家に赴くと、そこの主人が見ていない隙に食料をいくつか盗んだ。善良な青年だったチップは、初めて犯罪に手を染めてしまった。

     一度犯罪を犯してしまうと、善悪の判断は段々と狂っていった。我慢に我慢を重ねて、正しくも苦しい生活を送らなくても、他人から頂戴すればこんなにも楽に生活が出来るのだと、チップは気が付いてしまった。そうすると、今まで真面目に生きてきた自分が馬鹿馬鹿しくなった。自分は真面目に努力して生きていてもこんなに苦しいのに、大した努力もせずに金や食料を蓄えてのうのうと生きている金持ちたちが憎らしくなった。
     チップの盗みはだんだんエスカレートしていった。最初は近場の農家から野菜や果物を盗むだけだったのが、街の住人の食糧庫から食材を盗むようになり、やがて他人の家にある現金や金品を盗んで資金にするようになった。
     当然、バレて追いかけられることもあった。しかし、カウボーイとして農場を切り盛りしていた彼の運動神経や脚力は高く。豊かさに肥え太った大人たちに、風のように駆ける彼が捕まることは無かった。
     とはいえ、チップも元は優しく素直な心の持ち主。今自分のしていることは悪いことだとは、自分が一番よく分かっていた。しかし、生きていくためにはもうこうするしかなかった。両親も死んでしまい、頼れる親族や仕事仲間もいない。親から受け継いだ牧場を守るためにも、自分が倒れるわけにはいかないのだ。寄る辺の無いチップには、悪いことと分かっていても、そうするしかなかったのだ。

     だが、人を呪わば穴二つ。不可抗力とはいえ、しかし必然的に、重ねた行いのツケを払う日はやってきてしまう。
     ある時、チップはいつものように街へ赴き、今すぐ返さなければならない借金のアテにするために現金を盗みに入った。上手いことバレずに現金を盗み取り、自宅へと戻ったが、何故か自宅と家畜たちは差し押さえられていた。
     原因は、借金返済をもう待てないとやってきた借金取りたちと、盗みの被害に遭った金持ちたち。お金の工面が出来ないならばと、チップの留守を狙ってやってきたのだった。しかも、チップが今まで盗みに入っていたこともバレてしまい、汚い手口で手に入れた金で借金を返していたのかと、借金取りたちも金持ちたちも激昂していた。
     誤魔化す術も無い。何せチップのその手には、今まさに盗んできた金が握りしめられていたのだから。チップは慌てて許しを乞うたが、遅かった。自分の資産を盗まれた金持ちたちは報復としてチップの体をナイフで何度も切り裂いた。流血し、意識が朦朧とするチップ。悪いことをしたのだから仕方がないという気持ちと、どうして自分ばかりがこんな憂き目に遭わなければならないのかという気持ちで、涙が止まらない。
     意識を手放す直前だった。チップと借金取りたちを隔てるように、黒い人影が現れた。人影は魔法で借金取りたちを追い払うと、意識が朦朧とするチップを抱えてどこかへ消えてしまった。

     目が覚めると、チップは見知らぬ場所にいた。体中を裂かれて死にかけていたのに、傷はわずかな痕を残してすっかり治っていた。
     戸惑うチップのそばには、あの黒い人影…否、デビルがいた。デビルは、チップの盗みの手腕の高さと金や生への執着を見込み、自身のカジノに連れてきたのだ。
     このカジノで働けば、明日の暮らしを心配することも、飢えることも無い。憂うことは何も無く、卑しい金持ちたちを手のひらで転がすことだって出来る。デビルの語りかけに、チップはぞわりとした。悪魔のささやきに耳を傾けることに後ろめたさや恐怖はたしかにあった。そんなことをしたら、いよいよ自分は元の生活に戻れなくなる。差し押さえられた家畜たちや家はどうなるのだろう、と不安もあった。
     しかし、戻ったところでどうなるだろう。また明日を憂い、苦しむ生活が待っているだけじゃないか。それに、もう家畜たちも家も差し押さえられてしまった。泥棒をしていたことも大勢にバレてしまった。戻ったところで、何になるだろう。それに、ここで働けば、自分が散々嫌った金持ちたちに、間接的とはいえ復讐まがいのことが出来るのだ。

     悩んだ末、チップは一握りの良心を抑え込んで、デビルの話に乗った。苦しい生活に耐えかねた彼に、他人を貶めることへの快感を覚えてしまった彼に、現実はあまりに冷ややかすぎたのだ。デビルはチップを、カジノチップをベースにした悪魔へと変えた。
     現在のチップは、新人ディーラーとして先輩たちから様々なことを学びながらも頭角を表し、持ち前の強運と手癖の悪さを応用した高いイカサマの腕の持ち主として腕を振るうこととなる。また、カウボーイとして培った五感の鋭さや運動神経を生かして、カジノでトラブルを起こす客を捕縛する警備員のような役目も担っている。

     また、これは余談だが。
     チップは確かに金持ちや裕福な人々を嫌って憎んでいたが、決して心まで邪悪になったわけではなく。今でもその人の好さゆえに、過去に犯した盗みの数々や、牧場や生家を差し押さえされたことといった親不孝ともいえる出来事を今でも強く悔やんでいる。そんな彼は、良心の呵責に耐えかねているのか、過去の出来事や自分が切りつけられた瞬間のことをはっきりとした悪夢として見てしまい、パニックになることが今でもよくある。
     まるで、自分の体も心も、カジノチップのようにバラバラになるかのような痛みと、罪悪感と、どろどろと溢れる怨嗟が、溌剌とした彼の笑顔に今日も陰を落とす。
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