盛夏の候「光坊。この冷茶は飲んでいいやつか?」
普段ないものがあったからだろう。冷蔵庫を開け物色していた遠征帰りの鶴丸に、ああそれ、と燭台切はふと微笑んだ。
「飲んじゃダメだよ。そろそろ取りに来るんじゃないかな」
「誰かが仕掛けて行ったのか。一杯くらいだめか?」
「言っておいてあげるから飲みなよ、と言いたいところだけど、それ、」
「すまん鶴丸。俺のだ」
顔を覗かせた山姥切が、冷蔵庫のドアを開けっぱなしで眺めていた鶴丸の脇から冷茶のポットを取った。
「ひとりで飲むには多くないか。というかきみ、冷茶なんて飲むんだったか?」
「いや、三日月用にな」
言いながら冷蔵庫を閉めコップをひとつ取り冷えた冷茶を注いで、山姥切は白い顔にまだ汗の粒の浮いている鶴丸へと渡す。有難い、と笑った鶴丸はそれを一息に飲み干した。
6438