フラッグシップの恋だった【後編②】「それはキミにあげた物だ。いらないなら捨ててくれて構わない」
それ、とは武道には分不相応な腕時計のことを指す。
「さすがに捨てはしません……。昴さん的には、オレが持ってるのってイヤじゃないですか……?」
「どうして?」
「どうしてって……それは、だって……」
『二度と現れるな』と言わしめた相手が、いつまでもこれを持っていることに嫌悪感はないのだろうか。
軽い気持ちで調べたことがある。
七海は高価な物ではないと言っていたが、どう見ても安物ではないそれに、マナー違反かもしれないが刻まれたロゴをこっそり検索エンジンにかけてみた。
桁を見間違えているのかと、何度も拳で瞼を擦った。
そうして再度見開いた両目で商品ページを睨みつけるが、一介の高校生はおろか、社会人だって果たしてどれ程の人間がこの値段の時計を所持しているだろう。
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