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    ナナシ/ムメイ

    @refuge774 @mumei_774
    ゲッター(漫画版と東映版中心/竜隼)書いて一旦投げる場所に困ったのでここに。推敲したのはpixiv(https://www.pixiv.net/users/1604747)に。■→推敲格納済
    なにかあればましまろにどうぞ↓
    https://marshmallow-qa.com/refuge774

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    ナナシ/ムメイ

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    アイサガコラボストーリー軸。竜馬達が合流してからの三ヶ月間に竜馬とカーズくんがどうして師弟関係になったか妄想。
    ゲッター組はチェンゲ名義ではあれど全体的に漫画版や東映版のニュアンスが強いと感じたので三つともある程度意識して、こういう感じで描きたかったんじゃないかと埋めています。
    ゲッターコラボ前にこの手の話やってたかもしれないんだけど……。そしたら変えるね……。

    ■ Point of No Return「師匠!」
    「誰が師匠だ!」

    ゲッター線とインベーダーに纏わる異世界からの来訪者を迎えたプロヴァーブ艦内ではここ最近、こんなやり取りが響くようになった。
    ガンガンとまで聞こえてきそうな乱暴な音を立て足早に歩く男の眼光は鋭い。ボロボロのコートに赤い襟巻き、どこか気を立たせた野生動物のような気配がする男。戦場で避けられない残酷な命の選択を躊躇無く行いながら、その痛みまで怒りに変えて戦い続けるような戦士――流竜馬。
    オーストラリアでのインベーダーの一件から、その男を心身ともに強靭な戦士であると見込んでいっそ無邪気にも協力を頼んだ青年がその後ろを追い掛けていた。
    竜馬よりは幾分歳下の様子の、ツンツンと立たせた髪と赤いバンダナが印象的な姿。砂漠のカラッとした、その実燃えるような熱さを含む太陽を思い出させる青年。カーズである。

    「なんでダメなんですか師匠!?」
    「だから師匠じゃねえ!!」

    元々他人をわざと遠ざけているような、近づき難い雰囲気を持っている竜馬にここまで食い入る人間は多くは無い。
    早乙女博士がその身を犠牲に「扉」を閉じたあの日。神隼人と車弁慶も合流してしばらくは、カーズは連戦の末にアスモデウスに搭乗した後遺症でまともに動く事もできない状態だった。
    ある程度回復し動き回れるようになった彼が「師匠! 俺を弟子にしてくれ!!」と順番のおかしな事を叫びながら流竜馬の部屋の扉を叩いたのは最近の話である。
    その時、偶然廊下に居合わせた異世界における対インベーダー勢力の司令官にして流竜馬の戦友――神隼人はわずか目を丸くしながら「また威勢のいい弟子希望者が現れたな」とさして驚く事もなく呟いていたが、元来、流竜馬の空手道場には「一般向け」の教室とは別で押しかけ弟子が集まりがちだったらしい。
    「なら俺が弟子になってもいいじゃないですか竜馬師匠!!」
    「なんでこいつ調子に乗らせた隼人!?」
    「ただの事実だろう」
    どうせお前は元々ツッパるのは向いてねえんだしよ、とだけ竜馬に残して行ってしまった以降、隼人は傍観を決め込んでいる。
    そうして不機嫌そうに艦内を歩く竜馬の後ろをカーズが追いかけ回し、時には更にその後ろをアイが追っている姿はこの数日皆の笑いを誘っていた。
    ゲッターロボを竜馬と共に駆っていた残る二人、巴武蔵と車弁慶もすっかり高みの見物を決め込んだらしく「どうせ根負けするんだからさっさと弟子にしてやりゃ良いだろ」「おめぇ、昔から懐かれると厳しくはできても邪険にゃできなかったじゃねえかよ」などとそこかしこで繰り広げられる彼等の様子を見ながら笑い含みで竜馬に声を掛けていた。
    ……確かにその通りではあったが、そう言われれば尚更素直に許可するのは癪になるのが今の竜馬であった。
    以来しばらく突っぱねていたがカーズには諦める気配も無い。毎日のように後ろを着いて歩いては「弟子にしてくれ!」と頼み込まれるのは今の自分の容貌からも手下を引き連れているように見られて竜馬は嫌だった。過去から現在に至るまで、勝手にそうしてくる人間はいたが、彼自身は自分に媚びへつらうような存在を望んだことなど無かった。

    足音も大きく辿り着いた休憩室は長机の片隅でコーヒーを片手に静かに書類を捲る隼人の姿だけがあった。ソフィア達は最近武蔵や弁慶が稽古をつけていると聞いていた。恐らくトレーニングルームだろう。マッドサイエンティストは大半研究室に篭り、アイもその生態の研究のためにと度々付き合わされているようだ。
    横目でこちらを見やった隼人がふと口元に苦笑に似た薄い笑みを浮かべた。「諦めてやったらどうだ」と聞こえたような気がして竜馬は眉をひそめた。
    ……仕方ない。
    入口近くに置かれたソファに乱暴に腰掛け、俯いて大きく息をひとつ吐く。
    「……はぁあああ、あのな」
    「はい!」
    向かいのソファに座った顔をちらりと見れば、カーズが期待に満ちた瞳で見つめている。内心躊躇する竜馬の肩をひとつ叩いて隼人はコーヒーを片手に出ていった。
    自分達だけが残った休憩室に、機械音や時折遠くからの皆の声がさわさわと届く。激しく厳しい戦争の中のふとした日常はどこの世界も変わらないのかと、不意に竜馬の頭をよぎった。
    ――自分は「戦うもの」である。戦争などという狂った状況下で前線に立ち、敵を切り伏せ、時として味方すら犠牲にする選択肢も突きつけられながら戦い、そうして今も自分と他人の命を掛けた生死の狭間で戦い続けている。
    自分には同じように戦う隼人や、武蔵や弁慶がいる。それだけで充分であったし、まだ歳若い人間を戦わせるなど本音では不本意だった。戦いたくないものを戦わせる必要は無い方がいい。未来ある人間が死地を臨む事など。
    しかし、この世界で、彼等にも彼等の戦う理由があり守りたいものがある事も、戦いが避けられない事も理解はしていた。

    「確かに俺は空手道場やってたが、お前みたいな奴に『教える』のは慣れてねえ。……そもそも教えてどうなるっつうか……」
    そう言って竜馬はカーズから目を外し頭をかいた。
    「あー、こういう時あいつなら説明上手いんだろうけどよ、俺は苦手なんだよな……」
    俺は体育会系なんだよなどとボヤきつつ癖の強い髪の毛を掻き回し、考えを纏めるようにひとしきり唸ったあと、竜馬はカーズの顔を正面から見た。

    「……お前が欲しいのは、自分を守る力じゃねえんだろ」

    その問いに、カーズが目を開き口元を引き結んだ。普段はわざと明るく軽く振舞うその内にあったのだろう、ひどく真剣な表情にやはりそうかと竜馬は内心嘆息した。
    「自分が死のうがなにしようが、誰かを守りたいからここでどうしたって勝ちたいってやつだろ」
    そりゃ、わかるけどよ。
    そう呟いて竜馬はあの機体を思い出していた――「魔神」アスモデウス。如何に危険なものかはコクピットからボロボロになって救助されたカーズの姿から明らかだった。
    そうなる事も理解してそれに乗ったと聞いた時、竜馬は内心でカーズに自分と似たものを感じていた。
    ゲットマシンで隼人と共に自爆しようとしたこと。絶望的な戦力差を前に三人で死を覚悟したこと。何度も死にかけ、それでも戦った。
    自分が、自分達が過去、何故そうしたのかなど言うまでも無く、それ故に似た思いを持つ人間を止められないだろう事も知っている。
    竜馬の目線の先、カーズの顔はなにか思い詰めたように真剣なままだった。ぽつりと絞り出すような声が聞こえた。
    「……俺は。
    俺は、もう、あんな気持ちはしたくないんです」
    地獄を歩まずに済むならそうであって欲しかった。けれど、この青年は恐らく既に決めてしまっている。自分の命にかえても守りたいものを見つけてしまっている。
    彼が自ら生き地獄を歩んでしまうことを、きっと誰にも止められないのだ。自分や隼人がそうであったように。
    「――ならお前には、俺が空手道場で教えてた護身術だの自分を磨くための武道だのは意味ねえ」
    この青年に必要なのは、自分や他人をも守れる単純な力だけでは無い。
    迫る自らの死を前に、その運命に抗い足掻こうとする覚悟も姿も見た。真のゲッター乗りに繋がる必要な資質のひとつは仲間たちも認めたのだ。
    ならば、腹を括ってやろう。付き合ってやろう。
    こいつを守るべき「子供」ではなく、共に戦場に立つ「男」として認めてやろう。
    地獄を生き延びるために、紙一重の命を繋ぐために、ギリギリまで生きて守り続けるために。最後まで諦めないために。それが例え自らの死に繋がる道であろうと、止められないのなら。

    竜馬は深く深呼吸した。最終通告だ。もう後戻りなどできない。
    「そういう奴にはな、俺は、俺が親父に叩き込まれたような事しかできねえぞ。
    何回も何回も今ここを切り抜けなきゃ死ぬみたいなそういうの繰り返してお前が自分で考えて覚えてくしか。『生きたい』ってお前が思ってどんだけやれるかの上限上げてやるみたいなよ」
    俺は、俺の弟子なら尚更、守ってなんかやらねえ。自分の足で、どんだけボロ雑巾になっても踏ん張って立てる「男」しか認めねえ。
    竜馬は一気にそう言い切り、わかるか? と問うように目をやる。深く、ひとつ、しっかりと頷くカーズの姿があった。
    それを受け止め、片眉を上げながらふうと軽く息を吐き、さてどうしたものかと首の後ろをかいていればカーズがふとからかうように笑った。

    「師匠」
    「あんだ」
    「男女差別じゃね?」
    「うるせえよ! てめえだって使う癖に生意気だな」

    身を乗り出してガシガシと尖った髪の毛を掻き回してやれば「やめてくれ!」などと笑い声が上がる。そうこうしているうちに隼人がアイの手を引いて戻って来た。
    「話は終わったか? アイが暇を持て余してるぞ」
    「出待ちかよ、隼人」
    「なに、アイには俺の話に付き合ってもらっていてな」
    「カーズ、遊ぶグァオ!」
    「おう、ア痛っってえええ!!」
    カーズを見つけた途端アイが勢い良く飛びつき、まだ治りきらない傷が堪えたのか悲鳴を上がる。その様子を竜馬と隼人は目を細めて眺め、小さく微笑んだ。
    苦笑するように、懐かしむように。


    +++++


    「おらぁ! 目ぇ閉じんな、敵は待っちゃくれねえんだぞ! チビっていいから目ぇかっぴらいて動きよく見ろ!!」

    数日後。まだ皆起き始めるかどうかの早朝からトレーニングルームに竜馬の怒声が響いていた。
    これは見せられる人間が限られるな、と入口付近に寄りかかり隼人はその様子を眺めていた。
    武蔵や弁慶は教えるのは得意だ。だが、だからこそ「殺意」には乏しい。「訓練」で容易く向けるものでもない。
    どれほどに戦闘訓練を重ね、技術を身につけようが、戦場に晒されて理性を保ったまま戦い続けられる人間は限られる。誰かを殺し、誰かに殺される。その精神的負荷を考えないことで減らし、刷り込みや反射も含めて半ば機械的に動く為に「兵士」の訓練はあるが、今ここで繰り広げられているものはそうでは無い。

    「馬鹿野郎、動きが甘え! 自分ならどうやって息の根止めに行くか考えろ!」

    指摘してやるだけ、急所や弱点は狙いながら致命打は避けているだけ竜馬はまだ本気では無い。カーズには返事をする余裕も無いようだが、涙目で済んでいるのだから上々だ。喜ぶべきか否かはわからないが。
    「戦い方っつーか、技術なら昼間にやってやる」「ここでは俺を殺すつもりで必死に生きろ」
    そうとだけ言って数十分とはいえ「稽古」にも「訓練」にもなりはしないものを始めるのだから極端なものだ。理解はできるが。いきなり野生動物と戦わせられるのとどちらが良いかと言えばさして変わらないような気もした。
    万が一を考え、この時間だけは見守りをかってでた隼人は、それでもまだ殺意は抑えている竜馬とそれを必死で切り抜けようとするカーズを見つめていた。
    稽古や訓練では到底感じられない、肌が粟立つほどにビリビリと張り詰めた空気。隼人にはいっそ懐かしく馴染み深いものでもあったが、常人はこれだけでもそう耐えられるものではない。
    殺意のプレッシャーを特に生身で受けるのはそれだけで精神力を削る。まして自らの死を前にするとなれば、怯え泣き吐いて失禁した人間は数多く、隼人自身も初めてそれを間近にした時はそうだった。あの醜態を見た人間は、隼人を地獄に引きずり込んだ竜馬しかいない。
    自分達はできてしまったが、万人がそれを自らのものとして戦える訳では無い。
    「……自分から、片足突っ込んじまうなんてよ」
    竜馬とカーズの間で何を話されたかを隼人は知らない。こちらの世界に来て日も浅く、この艦に集う人物達を全員理解できたわけでもない。それでも、今必死で生きる術を身につけようとしている青年は「こちら側」の人間だろうとは思っていた。

    不意に誰かが駆けてくる足跡に気付き、隼人は入口に立った。
    何か感じたのか慌てた様子で駆けてきたアイが隼人越しに中の様子を覗き顔色が変わる。
    「……!!」
    カーズの身の危機と思ったのだろう、今にも飛び込みそうなアイに座り込んで目を合わせ、隼人は語りかけた。
    「アイ、ちょっと待ってくれないか」
    「……グァオ?」
    「カーズを殺したいわけじゃないんだ、あいつは」
    「……本当グァオ?」
    疑う気持ちはよくわかる。信用しきれない、と言った様子のアイに隼人は苦笑した。
    「修行、特訓……戦闘訓練、なら通じそうかな? 今あいつがやっているのはそういったものだ」
    「……」
    不安そうに隼人のコートの裾をぎゅっと握って、カーズを見つめるアイには明確な感情が見て取れる。
    本来敵であるはずらしい、人類とは異なる知性体。この子は何故この姿を取り、意思を、感情を表現するのだろう。
    不意に元の世界を託したゴウ達のことが思い出された。
    「カーズが強くなりたいと自分から頑張ってるんだよ。だから、君はもう少し待ってあげてくれないか」
    「……グァオ」
    「ありがとう。そうだな、次にカーズが倒れたら行くといい」
    渋々と頷いたアイの頭を撫でて、二人で様子を見守る。時に恐怖に身を震わせながら、歯を食いしばってそれを隠し、立ち続けるカーズの姿を。

    「……あいつとカーズは、よく似てるよ」
    「? 似てないグァオ」
    「見た目はそうだな」

    でも、似てるよ。とても。

    不意にこちらの様子に気付いたとでもいうように、発された時と同じく唐突に竜馬の殺意が収められた。解けた緊張に我慢しきれなかったようにカーズが膝をつき、アイが待ちかねたと走り寄る。心配し身体を支えるように寄り添いながらきっと睨みつけられたことに、竜馬が困ったように頭をかき、カーズが宥めはじめる。

    だから、心配だ。
    カーズの方が「優しい」ようだから、特に。

    胸の内でだけ呟かれた言葉は誰も聞いておらず。
    ただ、目が合った竜馬の瞳の底に、同じようなものを隼人は見ていた。



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    ナナシ/ムメイ

    DONEアイサガコラボストーリー軸の竜隼がきちんと仲直りする話。
    カプと言えばそうなんだろうけど、そもそもあの二人は漫画や東映からわんにゃんが仲良く寄り添ってるみたいな雰囲気をよく感じたのでそういう感じ。わんおの愛が重いと言うより分厚すぎて揺るぎもしない感じの……。
    時系列は四人でアイサガ世界に残った三ヶ月間、前に書いたカーズ君弟子入り話の後くらい?
    ■ 残る鎖どちらかだけ知っていればなんとなく読めるとは思いますが、書いてるうちにアイサガキャラの隙間埋め部分も増えたので、コラボストーリーは知っていた方がわかりやすいかとは思います。
    アイサガ本編がそうなのでエレインとセレニティの関係もちょっと触れてます。
    実はコラボ元のチェンゲ自体、最後まで見てもひとつもまともに謎が解決していないのもあり、不明箇所は漫画とか東映、チェンゲ今川監督担当分(アイサガでも前提となっている三話まで)の考察から引っ張って再設定しています。

    コラボストーリーでは時間の流れの違いは一言で終わり、なんなら「なんかありましたっけ?」くらいの勢いで丸っと触れられ無かった(漫画版に寄せて展開するためと理解はできますが潔すぎて笑いました)竜馬と隼人の関係だけど、個別パイロットボイスには言及があるし、表向きチェンゲ名義でありながら隼人から「リョウ」呼びと素の口調まで出てるならきちんと仲直りしたよ話が欲しいかもなって。
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