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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    アクアマリンの割れる音4

    ##ブルマリ

    あっ、と思ったときには、足が石畳から離れていた。そして、マリーは水溜まりの中へ飛び込み、膝を突いていた。髪から顔から手足から、全身に泥水を浴びた。幾度か咳をして、口に入った泥水を出したものの、マリーはそこへ座り込んで動けなくなった。周囲が、邪魔そうにマリーの横を通り抜けて行った。
    唇の泥水を拭う。――そうだ。彼もまた、こうして泥水を啜るような思いで、芸能界という過酷な業界を生き抜いて来た。言わば戦友だった。痛みを分かち合えると思った。思いが通じて、仲間にも同志にも恋人にもなった。けれど――。
    体は雨で冷え切っているのに、こみ上げて来る涙は未だ温かい。温かいのに、冷たい。冷たいのに、温かい。二人でいられた頃は、温かさも冷たさも、矛盾せず訪れるものだったのに。
    そのまましばらく俯いていた後、やっと手足の力が戻り、立ち上がろうと顔を上げたときだった。
    「セニョリータ……マリー! マリーじゃないか!」
     聞き覚えのある声に目を瞠る。
    傘を差してレインコートを着た、背の高い男が、こちらへ駆け寄って来るのが見えた。
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    まろんじ

    PROGRESS星の声18──ここまで話してから気付いたけれど……七緒には、彼女の話を聞かせない方がいいのだろうか。
     聞いていて辛くなるようなら、次のトラックまでスキップして欲しい。それが最後のメッセージだ。
     彼女からどんな理不尽な目に遭わされても尚、七緒が彼女を慕っているのは、俺もよく知っている。
    俺のように広い世界を自分の目で見て歩いて触れる日が、お前にも必ずやって来る。俺が言うと、お前は微笑んだのだ。「うん、楽しみにしてる。そのときは、お母さまとクロも一緒に行こうね」。一人では寂しいだとか、どう歩けばいいか分からないだとか、そういった理由だったのかもはしれない。けれど、七緒が当たり前のように彼女を、人生を共にする家族と思っているのを見ると……俺は、罪悪感で胸がいっぱいになる。
    彼女を慕わずにはいられない、というのもあるのだろうな。十になったばかりのお前はまだ、大人の手を必要とする子どもだ。何から何まで世話が必要な赤ん坊ではなくとも、大人からの情というものをお前は注がれなくてはならない。ただ、彼女のそれは時にお前を苦しめている。傍にいることしかしてやれなくて、本当にすまない。
     俺がいなくなった後、お前 708