知らなくていいこと.
俵型のころりとしたフォルム。その丸い胴体から短い手足が生えている。動くたびにぴょこんと揺れる髪は若葉のような黄緑色だ。丸い顔の中央に配置されたつぶらな瞳が、ジャミルをじっと見上げていた。
その淡い金色の瞳を見つめ返しながらジャミルはぽつりとつぶやいた。
「……で、これが空から降ってきたとかいう謎の生物か」
「ああ。元の世界に帰す方法がわかるまで僕がコイツの世話をすることになってしまって……仕方なく寮へ連れ帰ったところ図々しくもマレウス様に付きまとい始めて! なんたる不敬! いくら言葉が通じない小動物とはいえ許してはおけん!!」
自分とジャミルのあいだにちょこんと座っている小さな生き物――どうやら『ツム』と呼ぶことになったらしい――をぎろりと睨みながらそう言うと、ふと我に返ったようにセベクはジャミルへと視線を戻した。
3689