ちょうこうせい プロデューサーが提案したレッスンスケジュールを葛之葉雨彦と古論クリスは承諾し、北村想楽は変更を申し出た。
「その日は受けたい講義があるんだー。午前の方がありがたいんだけど、どうかなー?」
「分かりました、スタジオに確認してみますね」
お待ち下さいと言い残してプロデューサーはスマートフォンを手に席を立つ。手帳にスケジュールを写していたクリスは顔を上げると、傍らの想楽に微笑みかけた。
「学びを深めるのは良いことですね。どのような講義でしょうか」
「国文学の土台となる文化基盤に関する授業なんだけどね――」
手元にシラバスはないが、授業の概要は頭に入っていた。想楽の説明をクリスはうなずきながら、雨彦は目を細めて聞いている。長語りにならないようにと適当なところで「そんな感じのー」と想楽が話を切り上げると「面白そうですね」とクリスが声を弾ませた。
「ぜひとも聞いてみたいお話です!」
「うちの大学、聴講生は募集してるのかなー」
「聴講できたらとても楽しいでしょうね。雨彦はいかがですか?」
「悪くない提案だな、ついでに構内の掃除も出来るだろうさ」
「それはちょっと……――」
講義を受けた生徒が突然モップやハタキを使いだすのは目立ちすぎやしないか――思ってこの二人が聴講に来たところを想像すると、想楽の眉は自然と寄った。
大学生の平均年齢からはみ出た男二人が連れ立って姿を見せれば、さぞ目立つことだろう。ましてそれがアイドルともなれば、大学中が混乱に陥る可能性だってあるのだ。
「美丈夫に、惑乱しては学べないー。……うん、二人は大学には来ない方がいいかもねー」
「そうですか……? 残念ですが……何かの機会に学んでみたいものですね」
「仕方ない、後から北村に授業の内容を教えて貰うとしよう。――北村、この日はレッスンが終ったら授業だ。頼んだからな」
「二人の分まで、聞いてこないとねー」