saving happiness「東雲!」「荘一郎さん!」「ソーイチロー!」「そういちろう!」
お誕生日おめでとう! の声は、客席にいるファンたちと揃った。
「――ありがとうございます」
ステージの中心に立つ東雲荘一郎は薄く微笑んで、客席に並ぶサインライトを見つめる。
ステージに光が集められ、客席の明かりは落とされている。客席を照らすものは彼らが持つサインライトだけで、手元の光を帯びた彼らはみな一様に笑みを浮かべていた。
「とても、綺麗な景色です」
小麦の粒を手で確かめるように、丹念に、一人ひとりに顔を向ける。
ある者は満面の笑みでサインライトを振り、荘一郎と目が合って肩をすくめる者もいる。少しずつ異なる笑顔と喜びを前にすると、荘一郎の胸にもとりどりの歓喜が湧くようだった。
「こんなにたくさん、頂いてしまったら――」
囁くように語りかける荘一郎の胸には予感がある。
今ここにある笑顔が、もっと甘く膨らむ瞬間への。
「私達も、皆さんに幸せをお届けしたいですね」
語尾をかき消すように響き渡るイントロはDelicious Delivery。
歓声を受け止める荘一郎は、見渡す限りの輝きに包まれていた。