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    Legenders:Reach:ダンスレッスンをする話

    Legenders:Reach:ダンスレッスンをする話 ダンストレーナーが休憩を言い渡すより早く、想楽はスタジオの床に腰を下ろしていた。
    「――あー……――」
     首をのけぞらせて見上げた天井が滲んでいた。首に巻いていたタオルをほどいて目に入った汗をぬぐうと瞳に電球の光は眩しく、そんな想楽へクリスはスポーツドリンクを差し出した。
    「お疲れ様です、想楽」
    「ありがとうー」
     封を切って口をつけ、ようやく喉の渇きを自覚した。
     トレーナーは休憩を宣言してすぐにスタジオを退出したから、室内にはLegendersの三人しかいない。肌の火照りはそのままに体の内側を冷やし想楽の傍ら、雨彦は着ていたジャージを脱いでタンクトップ一枚になると壁にもたれると想楽を見下ろした。
    「なかなか堪えたか?」
     新曲の振り入れは終わっており、合わせる段になってばらつきが生まれた。腕の角度や立ち位置のバランスなど三人で調整が必要な部分もあるが、想楽の耳にはトレーナーの指摘の言葉が残っていた。
     遅れている、合わせて――何度も繰り返され、そのたび想楽は期待に応えようと動き方を変えたが、まだ足りていないことは分かっていた。合わせ始めて間もないタイミングだから完璧にいかないことは分かっていても、雨彦とクリスの両名と比べて遅れている自覚はある。焦るほどにずれていく想楽を見かねた休憩だと思えば、滲む汗が疎ましかった。
    「……二人ほど、体力があるわけじゃないからねー」
     ようやく声を絞り出せるようになった想楽とは違い、雨彦とクリスは汗こそかいているが疲労の色は強くない。二人との体力の差は歴然としていると思いながら、想楽は額をタオルでぬぐった。
     スタジオの壁は一面が鏡になっており、こうしている間も三人の姿は映し出されている。何気なく見やった自身の襟足では、汗で固められた髪の束が上向きに跳ねていた。隠すようにタオルを首に巻き直す想楽の横で、クリスの長髪は汗を帯びながらもサラリと揺れている。
    「……」
     視線を感じて顔を動かせば、雨彦の目は想楽に向けられていた。
    「……」
     無言のまま、雨彦は想楽と目を合わせて口元を緩ませる。何を見ていたのかを悟った表情に想楽は顔を背け、胸の内でだけ言葉を整える。
    (詮無きと、分かっていても、比較して)
     年齢も、これまでの生き方も違うのだから。
    (頑張らないとねー)
     勢いをつけて立ち上がり、大きく伸びをする。
     つま先が床を叩いた。トレーナーから指導があった箇所のステップを確かめるように踏んでみると、休憩前よりは動きが正確になっていると感じられた。
     繰り返される足音に自然と雨彦とクリスは顔を見合わせる。互いに浮かべる微笑は、同じ気持ちを示していた。
    「さ、始めるか?」
    「はい、行きましょう!」
     タイミング良く戻ってきたトレーナーの前で、三人は予定の位置につく。
     同じだけの距離を取り合う三人の頭上、音楽は鳴り響きだした。
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