大河タケルと円城寺道流:そわそわしてくる:タケルが勘違いする話 たまたま重なった休日に、大河タケルは円城寺道流の買い出しに付き合うことにした。
次に取りたい資格の教本、あみぐるみ用の毛糸、日々の食料品、男道らーめんで考えている新商品の開発用素材。道流の逞しい腕にはたくさんの荷物が抱えられて、荷物を持つと申し出たタケルの腕の中には申し訳程度に毛糸の束だけがある。
「――よし、これで終わりだ! タケルは何か買う物はないのか?」
「ああ。……いや、そういえば手袋が破れたな」
「手袋か」
見計らったように木枯らしが吹く。毛糸を詰めたエコバッグを握るタケルの指先は赤みが差していた。
THE 虎牙道は前職の兼ね合いもあってか、冬場でも屋外のロケが多い。衣装も動きやすいぶん防寒性は乏しいから、せめて私服の時くらいは暖かく過ごしてほしい――などと考えだした道流へと「いや」と厳しいタケルの声が飛んでくる。
「そういうわけじゃない。今週中にでも買いに行こうと思っているんだ」
「うん……?」
否定の言葉は何に向けられたものなのか。首を傾げる道流の様子に気がついたタケルはもう一度いや、と繰り返して、赤くなった鼻先を道流に向ける。
「違うんだ、その……円城寺さんが、誕生日に買ってくれるんじゃないかと思って……勘違いしただけだ」
「……はは、そうか!」
THE 虎牙道の結成以来、誕生日のお祝いを欠かしたことはない。プレゼントのやり取りも何度も繰り返してきたから、期待してしまったということだろう。
そう思うと、タケルがいじらしくてたまらずに。
「タケル。今日は食べたいものはあるか? 何でも作ってやるから、遠慮せずに言うんだぞ!」
「……ラーメンがいい」
つぶやくタケルの隣で、道流は大きな笑い声を響かせた。