櫻木真乃/もったいないね? /真乃と仲良くなりたかった人の話んと公園のベンチに座る。
ベビーカー連れのお父さんがゆっくりゆっくり通り過ぎて行って、あとは無。真乃ちゃんは何してるんだろ、と思って横を見たら、真乃ちゃんはうつむいて足元の鳥を見てた。
え、めっちゃ暇してんじゃん。
遊具もない公園で出来ることなんてひとつもない。私がここにいる意味ある? なくない?
チェインを開いて他校の友達に『なんかしない?』と送る。即座に既読がついてクレープを持ったネコのスタンプが送られてきた。クレープか、それもいい。
「用事思い出しちゃったから、帰るね」
「あ……うんっ」
またね、と真乃ちゃんは言ったんだか言ってないんだか、もう覚えていない。
その夜、真乃ちゃんから『今日はありがとう^^』とメッセージがあった。
適当なスタンプを一個送って寝て、翌日から私は真乃ちゃんに話しかけなかった。
どんなに可愛くてもあのノリの悪さは致命的だと思った。
もったいない。
真乃ちゃんがアイドルになったのはその後のことだ。
知らない事務所の知らないユニット。無名じゃん、とか思っているうちにどんどん人気が出てきて、雑誌の特集で真乃ちゃんが着ていた服を買った私は次の日の学校で話しかける。
「こないだ真乃ちゃんが着てた服買ったよー。次の土曜、双子コーデでどっか行かない?」
「あ……ごめんね、土曜日はお仕事で……」
「じゃあ日曜」
「日曜は、用事があるの。……ごめんね」
上目遣いの真乃ちゃんは前にも増して可愛い。
後でツイスタで、その日は真乃ちゃんは同じユニットの子達と遊んでいたことを知った。オフショットとして八宮めぐるのアカウントに上がっていた真乃ちゃんの顔は、私が連れまわした時より断然可愛かった。
アイドルになるんだったら、あの時もっと仲良くしておけばよかったな。
もったいないことしちゃった。