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    Rymym1100

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    妄想を小説にできるか挑戦!

    #ユキモモ

    僕たちの幸せ「ピクニックに行こうか」

    特に予定を決めることなく、いつものようにのんびり過ごすものだと思っていた。
    ユキは自分と違って基本インドア派だ。
    だからこうしてオフが重なった日は家で過ごすことが多かった。

    「だから、ピクニック行かない?」

    「へ!?あ、い、行く!!!?」

    反応できずにいたら首をかしげながら不思議そうに
    同じ台詞を言われてしまった。
    モモが提案することはあっても、ユキが自ら外に行こうというのは珍しいことだった。





    近くの少し大きめな公園に軽く変装をしてやってきた。
    やりすぎるとそれこそ芸能人だと思われていしまいそうだし、
    みんな個々の時間を過ごしている為、案外バレないものなのだ。
    ユキからの珍しいお誘いに今日は雨でも降るんじゃないのか。と思っていたが
    空は雲一つない晴天。
    まさにピクニック日和だった。
    いつもと違う休日にユキの顔をチラリと盗み見るとただ歩いてるだけなのに
    胸が高鳴った。

    その公園は遊具などは特別なく、
    犬の散歩をしていたり、ベンチに座って過ごしたり、
    バドミントンなどスポーツをしたりと多くの人達がそれぞれ楽しんでいた。
    俺たちは大きな木の下にレジャーシートを敷き、
    ユキの作ってくれたお弁当を食べることにした。
    中身は好物ばかり入っていた。

    「んん~!!美味しい~!
    お弁当作ってくれてありがとう!
    やっぱユキのご飯は最高に美味しいね!」

    「ありがとう。
    モモの為に作ったからいっぱいお食べ。
    たまにはこういうのも悪くないかな。」

    「…ねえ、ユキ」

    どうして今日は外に行こうなんて言ったの?

    と、聞こうと思ったら
    その時、一つのボールが転がってきた。
    それを追いかけて一人の小さな女の子が目の前に。

    「ボール、ごめんなしゃい。」

    「はい、どうぞ」

    女の子はボールをユキから貰うと、照れながらお礼を言って
    パタパタと両親のもとへ走っていきキャッチボールをはじめた。

    「いいね、なんだか見ているこっちが幸せな気持ちになれるね。」

    ユキも同じことを思っていたみたいで
    木漏れ日の中、髪が風でなびいて、ユキのその優しい表情をより際立たせていた。

    俺はそんなユキを見て幸せに思いながら
    どこか胸がしめつけられた。




    あれからしばらくのんびりと過ごして帰ると
    一日はあっという間で夕飯の時間になっていた。
    今日はなんだが特別モモを甘やかしたい気分だった。
    たまにやってくるんだよね。
    いつもは僕の家で過ごすことが多いから
    たまにはモモの好きな外もいいかと、難易度の低そうな公園を選んだ。
    モモは面白いくらい驚いていて、その顔を見れただけで誘った甲斐があった。
    喜んでくれていると思ったのに
    今、向かいに座っているモモはどこか上の空だ。

    「モモ…、今日あんまりだった?」

    「え?めちゃくちゃ楽しかったよ!
    いつものおうちデートもいいけど
    ユキとプライベートで公園なんてめちゃくちゃハッピーだったよ!」

    「そう…ならいいんだけど」

    また何か隠してるな。
    そうは思うのだが、こういう時のモモは厄介で隠しているものを簡単には見せないのだ。
    何を考えているかまでは神様でもないユキには分からない。
    しばらく要観察だな…。
    それからはお互い言葉を発することなく無言で食事を進め、
    食べ終わった食器を片付けようとユキは席をたった。
    モモのお皿をみると相変わらず箸が進んでいないようだった。

    お酒で酔わせて吐かせるか、などと考え席に戻るとユキは目を見開いた。

    「モ、モモ…?!」

    俯いて表情はよく見えないがモモは涙をポロポロと零していた。
    涙を拭くべきなのか、何か気の利いた言葉をかけたいが分からず、
    内心焦りながら駆け寄り、正解が分からないまま、ただただ無言で背中を撫でる。

    「ユキ…ごめんなさい」

    しばらくそうしているとモモは小さな声でそう言った。

    「何に対するごめん…なの?
    謝られるようなことされた覚えないんだけど…」

    「…昼間、キャッチボールしてる家族が、いたでしょ。」

    「うん」

    「すごく幸せそうだった…」

    「そうね」


    そう言うとモモは椅子の上で膝を抱えて蹲ってしまった。


    「…それで?」


    背中から頭に撫でるのを変え、次の言葉を促した。
    モモは一瞬びくっとしたが、たどたどしく続きを言った。


    「ユキに…世間一般でいう幸せをあげれなくて…
    こどもを、残せなくてごめんなさい…。」

    「は?
    お前、またそんなこと考えてたのか?
    僕の幸せは僕が決める!
    世間一般っていうやつに僕を縛るな!」

    「っ…!
    だから!謝ってんじゃん!
    もう…ユキのこと離せない…!」

    モモの突然の叫び声に驚き、撫でる手を放してしまった。
    それから隠していたものを少しずつ吐き出してくれた。


    「ユキを俺以外の誰かになんて絶対渡したくない。
    ユキのこと絶対幸せにするよ!誓うよ!!
    でも俺は…当たり前だけど、どうしてもこどもだけは残してあげられない…。
    だからせめて謝らせて…。」

    「……」


    正直、驚いた。
    てっきりまた別れるだとかそんなことを言い出すのかと思った。
    まだお前は僕の幸せが何か分かっていないのか。
    勝手に決めつけるな。
    と説教しなければとならないと。


    頼んでもいないのに僕の為と勝手なことばかりしていたモモがようやく僕との未来を選んでくれた。
    やっと自分に素直になってちゃんと僕のことを見ててくれる。
    ここまで長かった…。
    以前のモモならその気持ちを隠して上手くやって僕から離れようとしただろうな。
    それがすごく怖かった。
    でもやっとこの不安から解放されたんだ。


    「ふふ、あはは…っ!」

    「ちょっとダーリン!笑わないで!
    モモちゃんのこと重いとか思ってるんでしょ!」


    モモはようやく顔を上げて涙目のまま頬を膨らませていた。
    可愛い。
    そんな必要ないのに、この子はただ謝りたくて
    それで泣いていたなんて、本当になんて優しい子なんだろう。



    「いや、それなら僕だってモモにこどもを残せないじゃない。
    ごめんね。」


    「いいよ!
    俺はユキと居られるだけで世界一、ううん、宇宙一幸せだから!!!」


    「僕もだよ。
    モモがずっとこれからも、そばにいてくれることが一番の幸せだよ。」


    僕たちはお互い目に涙を残したまま、
    満面の笑みでそう言いあった。
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