「トリックオアトリート!」
キースがそういうと寝起きのディノはびっくりした顔になって、その顔が見たかったキースはディノの顔を覗き込んでにんまりした。
「あ、…おはよキース…えーっと」
ディノはまだ寝ぼけ眼だ。今日はハロウィン。間違いなくディノはトリックオアトリート!という。いつも先に言われるのが常だったので、四年間の空白を経た今年は自分が先に言ってやろうと、キースは先に起き出していたのだ。キースはいつもディノに起こしてもらうようになっているけど、別にふっつーに起きる事ぐらいできる。たんにディノに起こしてもらうのが好きだからちょっと寝坊助になっているだけだ。
キースはセリフを先にいえて満足して、ピザが焼けるにおいがしてきたキッチンに戻ろうとした。キッチンはキースが食事の支度をほぼ終えているので、そろそろジュニアやフェイスも起き出すだろう。
「ピザもそろそろ焼けるから顔を洗ってこいよディノ」
とキースはいってキッチンに戻ろうとした、ところでディノに裾をつかまれた。
「キース、俺、お菓子をもってないから…いたずら…して」
キース宇宙猫になる。
もじもじと顔をあからめてキースを見上げるディノは、そーいう時の顔つきで。
「……!」
キースは重心が下半身に傾き、ディノに顔を寄せようと―――
「ふぁあああああああっく!!!!!」
サイレンよりもでかいジュニアも声が隣から響いてきた。なにかフェイスとくだらない言い争いをしているのだろう。
色っぽい雰囲気が霧散して、ディノはしゅっと起き上がる。
「朝から元気だなジュニアは」
といつもの調子に戻ったディノはリビングにいこうとして、キースの耳元で囁いた。
「いたずらは夜にしてくれる…?」
そういってディノは部屋を出ていった。キースは10秒ほど悶絶してからリビングに戻って顔をしかめるほどうんと苦いコーヒーを淹れた。そうしないと顔が緩みっぱなしになるからだ。そういう努力もむなしくフェイスにはジト目で見られたけれど。
とにかくキース・マックスはその日、「夜のいたずら」のことを考えてなんども緩んだ頬っぺたを噛んだり苦いコーヒーを飲んだりするはめになった。まあ最後は甘々な一日だったのでOKかなあ☆