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    mame

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    mame

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    出ロデ プロヒ×パイロット
    ※互いに両想いなのはわかってるけど付き合ってないふたり(設定:https://twitter.com/i/events/1431533338406178824
    出、おつかれの巻

     これは、一体。
     出久は目の前の光景に思わず固まる。帰宅すると同時に手に持ち替えていたリュックをどさりとリビングの入り口で落としたが、構うことはない。

    「ええ……? ロディがいる……? なんで……? 僕の見てる都合のいい幻覚……?」

     目を擦ってみても消えないその幻覚は、ソファでコーヒーを飲みながら寛ぎ、テレビを見ていた。

    「おっ、お疲れヒーロー。なんか大変だったみたいだな」

     髪の毛を首の後ろでお団子状にまとめたリラックスモードのロディの幻覚は、どうやら幻覚ではないらしい。だって喋ったし、出久に笑いかけているし、これが幻覚だったらやってられない。
     ソファに背もたれ足を組むロディは出久のセカンドハウスに置きっぱなしのVネックシャツと細身のスウェットを着ていた。しかもロディが見ているテレビに映っているのは、紛れもなく出久自身だ。
     今回も爽快に吹っ飛ばしてんなァ、とマグカップに口をつけながらロディが眉尻を下げて笑う。よろよろとロディに近づいて行けば、どんだけ疲れてんだ、なんて肩を揺らしながら笑うものだから、出久はどうしていいかわからなくなる。
     だって、ちょうどさっき、久しぶりに会いたいなって思っていたのだから。もちろん、ここにいるロディと。
     ロディが見ている映像はついさきほど出久が捕らえたヴィランだ。隠れるのが上手で街中で追いかけっこになってしまった。反省である。人質を取ろうとしたところで出久が未然に防ぎ確保したが、シフト終わり直前の事件発生だったため、出久の帰宅時間はすっかり遅くなってしまった。
     帰宅中、見上げた夜空には星などなく、いつか見たオセオンの吸い込まれてしまいそうな星空が恋しくて、今日のヴィランよりロディの方が手強かったなあなんて思って──ロディとしばらく会えていないことを思い出してしまったのだ。
     出久とロディが会う機会は、すっかりロディ任せになってしまっているのが現状だ。別にお付き合いをしているわけではないので、定期的に会うのを決めているわけでもない。任せているもなにも、と言う感じではあるけれど、月に一回のロディのオセオンー日本便のフライトのときは会えるものだと出久は思っている。
     しかし、先月、ロディから来日の連絡が入らなかった。
     ひと月終わってから、あれ? と思い、連絡を取ろうとしたけれど、そもそも付き合ってないのでそれもおかしな話だ。ぐっと全力で己を沈め、出久はロディに「どうしてこなかったの?」というメッセージを送るのを我慢した。現状、ふたりは友人なので。
     付き合ってしまえば、しばらく恋人に会えていないのでお休みもらいます! オセオンに行ってきます! なんて、出久も強硬手段に出られるのだが、先述した通り付き合っているわけではないのだ。さすがに無理である。
     できれば出久としてはお付き合いをして、ロディに頻繁に会うことを望める正当な理由を手に入れたいのだけれど、告白じみたことをロディに告げようとするたびロディからストップがかかる。ロディもきっと出久と同じ気持ちなのに、頑なに新しい肩書きをロディは作ろうとしない。
     だというのに、こうやってサプライズで出久のセカンドハウスへ訪れることが、これまでに何度もあるロディだ。
     わからない。わからないよ、ロディ。
     そんなことを悶々と考えながら、出久はソファに座るロディの隣にすとんと腰を落とした。
     今日はなんだか朝からずっと忙しくて疲れていたところに、ロディの来訪。疲れているところに好きな人は効く。会えて本当に嬉しい。だから、あまりにも嬉しいのでロディを抱きしめてしまいたいけれど、それも恋人ではないのでできない。恋人関係の許しをもらえていない状況下なのに下心のあるハグをするというのは、出久自身が許せない。

    「なになに、連絡くれてた? 僕見落としてた?」
    「見落としてねえよ。そもそも連絡入れてねえからな」
    「なんで……? たまに連絡いれないで来てくれるのなんなの……?」
    「デクの反応がおもしろいからに決まってんだろ」
    「お茶目……」

     ニッと歯を見せ無邪気に笑ったロディに出久は両手で自身の顔を覆った。ちくしょう可愛い。
     出久がヴィランを確保したあとに受けたインタビューがテレビで流れ終わり、ロディが立ち上がった。マグカップの中身のコーヒーも空になったようだった。

    「飯まだだよな? 空港のデリで色々買ってきたんだ。食おうぜ」
    「ありがとう、ロディ。君がいなかったら僕はストックのカップ麺を食べることになっていました」
    「買い物すらしてこなかったのか。マジで疲れてるな」

     立ち上がったロディはまだ座ったままの出久を見下ろし、癖っ毛の出久の頭をくしゃりと撫でた。苦笑混じりのその表情は、出久を心から労るものだ。

    「キャビンアテンダントのお姉様方がオススメしてたやつなんだ。絶対うまいぜ」

     いまのは、お兄ちゃんのそれ。色気はない。色気はないぞ。落ち着け、僕ーー!!
     テンションが上がりかける自身にそう言い聞かせて、出久はキッチンに歩き出すロディの後を追うべく立ち上がった。シンクにマグカップをことりと置いたロディに話しかける。

    「泊まるんだよね? 明日は休みなの?」
    「そう。お察しの通り明日も休み。そんで明後日往路のフライトでオセオンに戻る」
    「じゃあ飲まない? 僕も明日遅出だし、おいしいデリがあるなら飲みたいなあ」
    「お、いいな。結構味濃そうなもん多かったし、酒進みそう」
    「あ、でも冷蔵庫にお酒のストックなかったな。コンビニ行ってくるよ。ロディはなにかいるもの……」
    「バカ、酒も一応買ってあるって。とりあえずシャワー浴びてこい。風呂も溜めてるし入りたきゃ入れ。イチバンブロは貰ったけどな」
    「ロ、ロディ〜〜!」
    「うるせえ! ほら、騒いでねえでさっさと行ってこい」

     出久の反応にぶはっと吹き出し笑みを溢しながら、ロディが出久の背中を廊下に押しやった。当たり前のようにタオルと出久の着替えをぽいぽいとロディが投げてくる。それを受け取り、付き合うってなんなんだろうなあと出久は思う。
     果たして今晩は口説かせて貰えるだろうか、なんて思いながら出久は脱衣所に入る。
     そうして溜まっていた洗濯物が綺麗に片付いていることに気付いた出久はまたロディを抱きしめたい自分の衝動と戦うことになるのだった。
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