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    mame

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    mame

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    出ロデ

    三千世界の鴉はお前がころしてくれた ある時から、昼寝をすると決まって悪夢を見る。
     例えば知らない人間が誰かに追われて殺される夢。例えば知ってる人間がビルの屋上から落下する夢。
     いつだってその悪夢の中にロディはいなくて、目が覚めたとき、やけに存在を主張してくる心音と、ただただ居心地の悪さがそこに転がっている。
     ーーーーあの悪夢のどこかにも自分はいるのだろうか。
     路地裏に転がって、殴られた痛みを頭の端で消化しながら見上げたやけに青い空に、ロディはそんなことを思った。多分ここで意識を手放せばまた悪夢を見るんだろうと思い至ったので。だから、先回りして昼間に見る夢について考えたのだ。
     ロディが昼に見る悪夢の中では常に自分が当事者になることはない。しかし、なぜか登場人物の感情はすべて自分のものだ。登場しないのであれば映画を見る観客のような立場でありたいのに、殺される人間の感情も、殺す人間の感情も、落下する人間の感情も全て拾ってしまう。全員ロディでなくて、全員ロディだった。
     ある時から悪夢を見る。それがなぜなのか、なんなのか、ロディにはわからないしわからなくていいと思っていた。考えないようにしていたともいう。
     だって夢は夢で、でも、やっぱり、昼に眠るのは苦手だった。
     明るい場所では、影になるところまで角度によってはっきり見えてしまう。明るい内に寝るせいで、自分の駄目なところも嫌なところも全部夢に出てきている気がして、これがお前だと突きつけられている気がして、苦手だった。


    「……んだけどなあ」
    「ん? なにか言った?」
    「いいや? こっちの話さ」
     遮光カーテンの隙間から伸びた光が、ロディが包まるシーツに線を引く。肩から抱えた膝まで真っ直ぐに伸びた光の線は、ぐちゃぐちゃになったベッドを整える出久の傷だらけの腕まで到達する。
     夜勤明けの出久と、早朝到着便のフライトで日本にやってきたロディが、出久の部屋で事を致す。それはもう片手で足りない程の回数になっていて、つまりその数はそのままふたりで清潔になったベッドで昼寝をする回数もイコールだ。
     ヘトヘトになった身体では夢も見ない。見たとしても、悪い夢を見た気がするなとふんわり思う程度で、隣で口を開けてロディを抱えるようにして眠る出久を見るとどうでも良くなる。


    「みんなが活動してる時間にエッチなことしてそのまま眠るって、背徳的で贅沢だよね」
     最初に真っ昼間から事に及んだ後、緩んだ顔でむにゃむにゃとそう言って出久は寝落ちした。幼い子どもみたいな表情で眠ったくせに、とんでもない言葉を言い残していった男を見つめ、ぱちりと大きく瞳を瞬いて、ロディは声を出さず笑った。
     ぐるぐる考え続けていたことが馬鹿らしくなって、そうだな、たしかにこの昼寝は贅沢だ。なにせ隣にヒーローがいて守ってくれるんだから、なんて考えた自分がおかしくて涙が出るほど肩を震わせて、ロディはそばかすが散った顔の真ん中になる鼻を軽く摘んでやった。
     ふが、と間抜けな音と共に飛び起きた出久をロディは今度は声を出して笑って、その身体に抱きついた。寝落ちしてすぐに悪戯に起こされた出久は多少混乱していたようだが、それでも上機嫌のロディに別にいいかと結論を出したようで、ロディの背を抱いて再び眠りについた。

     シーツの皺を伸ばして、枕をセッティングし直して、出久がお待たせ! と笑った。そのままごろんとロディが転がれば、笑いを崩さない出久がロディが体に巻いたままのシーツを剥がしていく。それにロディも笑ってから「早く眠ろうぜ」と、光を透かすカーテンをバックに目尻を下げたのだった。
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