肝試しに行ったら憧れの先輩とお浄めセッ!をしなくてはならなくなった話①やっぱりやめておけばよかった。
国内でも有名な国立大学三年生の江晚吟は目の前にそびえ立つおどろおどろしい雰囲気を纏う廃墟を、死んだ魚より澱んだ瞳で見つめ今本日何度目か分からない溜息をついた。
きっかけは、サークル活動中の友人の一言だった。
「夏だし肝試し行かね?」
馬鹿か?阿呆か?そんな前時代的な夏の楽しみ方に誰が賛同するもんか、の馬の字を口に出そうとした江晚吟の声を遮るように、周りにいた数人の男女がやだー!いいねいいね!えっこわーい!大丈夫、みんなで行けば怖くないよ~etcetc...
(これは、確実に行くことが決定する流れ…)
江晩吟は、自分に話の向きが飛んでくる前に、そっとこの場を離れてすべてを聞かなかったことにしたかった。
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