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    Laurelomote

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    ブラチャン考察備忘録 Extra
    エピソード0の考察おまけ部分をめちゃくちゃ拡大したverです。
    ものすごく長いです。誤字脱字は許して。
    この文書が誰かの考察の参考になれば幸いです。

    ブラチャン考察備忘録 Extra【はじめに】
    この文書は漫画『ブラックチャンネル』の各エピソードについて、実在の旧約聖書・新約聖書といったキリスト教神学、悪魔学、ユダヤ教神秘主義などの観点で考察した内容をまとめたものです。
    コミックス最新刊および、週刊コロコロの掲載最新分のネタバレを含みます。まだ読んでないよという方はご注意ください。
    上記の通り宗教的な話題に触れます。苦手な方はブラウザバックで閉じる事を推奨致します。
    あくまで個人の考察です。自己満足のため読了後の苦情は一切受け付けておりません。

    なお、本文書は以前アップしたエピソード0についての以下考察から、一部文章を流用している部分があります。ご了承ください。
    【ブラチャン エピソード0について実際の神話学と比較した考察備忘録】
    https://poipiku.com/1366184/7095728.html

    目次:
    前回のエピソード0にフォーカスした考察から一転、今回はブラックチャンネル全体の色んなエピソードについて思いつく限りの内容をまとめました。
    かなり長いですがお付き合いいただけますと幸いです。
    【力を手に入れた鹿江くん】
    【ユウトくんと悪魔の法律貼り紙】
    【どっきーと牛乳】
    【ブラックのオブジェクトクラス?】
    【魚になった平くんとコウヘイテンビン】
    【平くん回の表紙】
    【バニラちゃんとデリシャススプーン】
    【ホワイトとの対決に用意された1週間の猶予】
    【ブラックサンタ】
    【小谷くんと失わ騎士(ナイト)】
    【魔王が嗤うサバト】
    【火炙りのミライちゃんとだれでも伝記アプリ】
    【星の下に生まれた命】(22/12/28追記)
    【ゴーレムは破壊神?】(22/12/28追記)

    【力を手に入れた鹿江くん】
    ブラックがさとくんと出会うよりも以前、読み切りでのお話に登場した鹿江くんは、クラスのいじめっ子に反撃できず怯える日々を送っていました。ブラックは彼に従来よりも100倍増やした攻撃力を授け、いじめっ子に対抗する鹿江くんを撮影します。1ヶ月過ぎた頃には彼らの立場は完全に逆転しており、加えて鹿江くんは他のクラスメイトに対しても威張り散らすようになっていました。勿論、ブラックとの契約で防御力が0になった彼の行いは、ここまでの経緯を含め全て動画に収められていました。
    彼と同じく、力に溺れた存在が旧約聖書 サムエル記に登場します。イスラエル王国の初代国王 サウルです。
    サウルは国王に任命されてから、国に攻め込んでくる敵勢力を次々と返り討ちにし、英雄として崇められました。しかしサウルは、それまでの勝利は神の祝福があったからこそという事実を次第に忘れていきます。そこから適正ではない生贄を捧げたり、同じく祝福を受けた青年ダビデに危害を加えたりと、自らの権力を過信した彼は徐々に衰退の道を歩んで行きました。
    鹿江くんも、ブラックとの契約を忘れていなければ、いじめっ子を倒した英雄のままでいられたのです。


    【ユウトくんと悪魔の法律貼り紙】
    優等生のユウトくんはブラックが用意したデビルツール「悪魔の法律貼り紙」で学校の理不尽なルールをどんどん変えていき、結果的に学校は生徒がのびのびと活動しやすい環境になりました。しかし、時間の経過と共に他の生徒達はいくらルールが修正されても不満ばかり漏らすようになり、怒りが頂点に達したユウトくんは遂に学校の為ではなく自分の為に貼り紙を使った事により魔界へと堕ちてしまいました。
    このお話は、旧約聖書 出エジプト記に登場したモーセの十戒のエピソードを想起させます。
    モーセは、神の啓示によりエジプトにて虐げられていたヘブライ人達を約束の地へと導いた者で、シナイ山で神から十戒という二枚の石板を授かります。(解釈によってはモーセ自らがこの石板を用意したという説も)ところが日が経つにつれこの十戒に不満を覚える者が増え、これに怒りを覚えたモーセは神の指示を破った為に、指導者でありながら約束の地へと入ることが出来なかったとされています。
    同じく友人達を思い、学校を救う神になった筈のユウトくんも、感情に身を任せた行いによって「自分ではなく他人の利益ためのルールを作る」という契約に違反してしまいました。


    【どっきーと牛乳】
    ドッキリ大好きどっきーは、色んな人に過激なドッキリを仕掛け、あまり良い印象を得られなさそうな笑いの取り方をするも動画チャンネル登録者数は非常に多い人気者。デビルツール「ニコニコ悪魔バッジ」の力を借りると、何をしても笑いを取れる存在になり、ドッキリの悪辣さも増していきます。そして最後は、撮影用に仕掛けた落とし穴に自ら足を滑らせて落ちてしまい、助けを求めるも誰もが笑って助ける事はなく、魔界へ突き落とされた後はブラックにその身を切り裂かれる事になりました。
    聖書内で否定されたハンムラビ法典(目には目を歯には歯を、でお馴染みの古代バビロニア帝国の法典)を肯定するようなお話です。ドッキリにはドッキリを、牛乳には牛乳を?
    …この回のブラックは妙に炎タメでの殺意が高かったですね。牛乳は旧約聖書 創世記18章8節にて地上へ来訪した天使へのおもてなしとして用意されたりと神聖な扱いが多く、それ即ち悪魔からすれば忌々しいものなので、それをお気に入りのさとくんに被せたどっきーが少々気に障ったのかもしれません。
    また、今回のデビルツールはどっきーのアンチ(ドッキリ動画でウケてくれない人)を消すという効果があり、これはソロモン72柱が一人 悪魔ベリアルがもたらす力に近いものがあります。(※ベリアルについては冒頭URLの考察参照)ベリアルはどんな敵も味方として助力してくれるようになる力を召喚者に授けるというもので、これはどっきーだけでなく市井ちゃん、オダくんといった他の犠牲者達にも似たようなケースが見られます。


    【ブラックのオブジェクトクラス?】
    ブラックがSCP-096 通称シャイガイを退散させた際、一部始終を監視していた財団職員が呟いたのは、ブラックを仮にSCPオブジェクトとして収容した場合のクラスについて。しかしその名称は伏せられており、少なくともシャイガイのようなKeter(要するに鬼ヤバ)とはまた異なるクラスである事がわかります。
    ブラックがKeterクラスオブジェクトを退けた事から、クラスは財団の中でも一部の関係者しか存在を知らないThaumielであると推測できます。
    Thaumielクラスのオブジェクトは「反Keter」という俗称が指す通り、Keterクラスオブジェクトによって世界が終焉を迎えるような事態に陥った時に発動される、謂わば財団の最終兵器とも呼べる存在です。しかし、反Keterという事はすなわち、Keterクラスと同等の力を持つ非常に危険なものでもあるため財団が積極的に利用する事はありません。
    ちなみに、このKeterとThaumielの語源は、ユダヤ教神秘主義にて語られる、地上にあらゆる美徳と悪徳を送り出すセフィロトの樹/クリフォトの樹の、それぞれ頂点に君臨するエネルギーのようなものに冠された名称です。Keterは「王冠」を意味し、想像や思考を司ります。これに対してThaumielは「無神論」を表し、それを守護しているのは悪魔の長たるサタンなのです。


    【魚になった平くんとコウヘイテンビン】
    平くんは先生から褒められた回数やお小遣いの金額など、あらゆる不平等を陰湿なまでに記憶しておりその正当性を主張します。ブラックは彼にデビルツール「コウヘイテンビン」を与え、それにより平くんは裕福な家の子も一般家庭の子も同じ金額のお小遣いになるようにしたり、生徒だけではなく先生もテストを受けるようにといった「公平さ」を作っていきます。しかし、自分がチビで足が遅いというコンプレックスを抱えていた事を思い出した彼は結局自分だけの為に天秤を使うようになり、やっぱり魔界行きとなりました。
    キリスト教神学において、天秤は大天使ミカエルの持ち物として登場します。宗教画のテーマの一つである「最後の審判」では、全ての人間は審判の日までに一度死に、その魂が天国か地獄のどちらへ行くのかをミカエルの天秤で量るというモチーフが多く登場します。
    また、平くんはブラックの悪戯で魚に変えられてしまいましたが、魚というのもまたキリスト教神学でよく出てくるキーワードです。新約聖書 ルカによる福音書ではイエスが漁師のペテロという男に対し「これからは魚でなく、人間を取る漁師になるのです」と言い、ペテロはイエスの弟子となりました。ここで言う"魚"はイエスの教えを理解する信徒の事を表します。他にも聖書には魚に関する記載が多々ある事から、魚=キリスト教徒という考え方がされます。
    平くんが変容させられる動物は別にノミでも蟻でも何でも良かったはずなのに敢えて魚を選んだブラック、そして魚になった平くんを天秤の皿に乗せ、もう片方の皿にブラックは全体重をかけて魚を跳ね上げ魔物の餌にしてしまいました。天界への叛逆者であるブラックらしい悪意に満ちていますね。


    【平くん回の表紙】
    (右手に天秤、左手に剣を持ったブラックがこちらを見て笑っている。天秤の両皿にはカメラちゃん、さとしがそれぞれ乗っており、落っこちそうなさとしが掴まっている皿は少し下に傾いている。)
    意味を理解した途端あり得ない音量で叫びました。怖すぎる。これを月刊コロコロ本誌に載せたのか!?ちょっとこの表紙のブラックだけ顔を直視できないです。洒落にならない。
    この絵でブラックが両手に持っているアイテムの組み合わせ、本来は大天使ミカエルのものです。ミカエルは「神に似たもの」という由来の名を持ち、サタン率いる悪魔の軍勢を退けた剣を掲げ、もう片手に持つ天秤で人々の魂の公正さを量るとされています。天秤についてはエジプト神話やギリシャ神話にも似たような逸話が有り、どれも下に傾けば悪とされる(罪が重い)ので同じように解釈して問題はないと思います。(ただしミカエルの天秤の場合は諸説あります)
    悪魔を倒した聖なる剣と、魂の罪深さを見る天秤をブラックほどの強大な悪魔が持っている時点で完全に神や天使への侮辱となる光景であり、しかも天秤はカメラちゃんの皿よりもさとくんの皿が若干下に傾いている。さとくんにこれから待ち受ける運命を示唆しているかのようです。(少なくともこれを書いてる時点では漫画版の)さとくんはブラックの契約書にサインした事は無いはずなのに、その魂は地獄すなわち魔界へ傾きつつあるのは何故なのでしょうか。
    そういった悍ましい程に想像の余地がある構図だと思います。仮にブラックチャンネルが海外(特にキリスト教圏)進出とかの話が出たらこの辺大丈夫なんか…?


    【バニラちゃんとデリシャススプーン】
    天使系ヨーチューバー バニラちゃんは食べ物とあれば売り物だろうとお構いなしに食べ尽くしてしまうという、おおよそ天使らしからぬ胃袋の持ち主。ここまでの暴虐っぷりでありながら、天使の神秘的な力と無邪気な魅力により、周りの大人は彼女を許してしまいます。これに目をつけたブラックは彼女にデビルツール「デリシャススプーン」を渡し、タイヤをケーキに、観覧車を巨大なペロペロキャンディーに変えたりと、全てを食べ物に変えるスプーンの力でバニラちゃんに目に付くもの全てを貪らせてしまいました。
    新約聖書 ルカによる福音書4章には次のような記述があります。イエスは洗礼者ヨハネによる洗礼を受けた後、聖霊によって荒野に送り出され40日もの間飲まず食わずで滞在しました。するとその最中に悪魔(サタン)が現れ「お前が神の子なら、この石をパンに変えてみよ」と挑発して来たのです。これに対しイエスは旧約聖書 申命記の言葉を引用し「人はパンで生きているのではなく、神の口より出づる言葉一つ一つで生きているのです」と返し、サタンの挑発に乗りませんでした。
    話をバニラちゃんに戻して、彼女は曲がりなりにも天使=神の御使いです。そんな人間以上に神の加護を受けているはずの存在ですら常にお腹を空かせているし、悪魔の術で無限に溢れる食物にがっつく光景が撮影されたあたり「神の御霊だけで腹は満たされぬだろう」という悪魔の反論が見受けられます。


    【ホワイトとの対決に用意された1週間の猶予】
    もう誰の目に見てもブラックが心底お怒りなお話でしたね…敵対者にお気に入りが取られそうになったらまあ誰だって怒りますが。
    突如現れた天上の神 ホワイトがさとくんにちょっかいをかけてきた事で始まった動画対決。ここで動画制作期間として用意された1週間という期間は、旧約聖書における天地創造+安息日までの7日間からではないかと思われます。あの対決が行われたのが何曜日かまでは不明ですが、もし日曜日ならホワイトは最後の安息日(=仕事をしてはいけない日)に活動したという事で負けたのかも。
    また、以前エピソード0の考察で「原作ホワイトは正真正銘の神かも」みたいな記載をしましたが、後々で漫画読み返していたらそれも違うような気がしてきて、改めて考察しました。彼の正体は、旧約聖書偽典 エノク書に登場する天使メタトロンではないかと考えます。
    メタトロンは別名「神の代理」あるいは「小YHWH(ヘブライ語で『神』の意)」とも呼ばれ、ミカエル達4大天使をも凌ぐ強大な力を持った天使とされています。人間から天使になった非常にイレギュラーな存在である事、夥しい数の翼と眼を持っているという事がよく特徴として挙げられます。
    作中のホワイトは、天界の雲という雲にカメラを仕掛け、24時間100アングルでさとくんを監視していた事がブラックにより明かされます。このカメラこそ彼の「眼」と言っても過言ではないでしょう。神とほぼ同等の力を持つとされる天使なら造作もない筈です。彼が後から神の座を引き継いだ者という点も、天使としては比較的若い部類であるメタトロンの特徴に近いです。(※エピソード0の考察については冒頭のURLを参照)
    また、メタトロンは大人になる前に死んでしまった子供の魂を集めて天の学校で教育しているという逸話があり、そこから転じて子供の守護天使とみなされる場合もあります。ホワイトがさとくんに目をつけた理由も、もしかしたら悪魔憑きの少年を気がかりに思った部分があったからなのかもしれません。


    【ブラックサンタ】
    さとくんの元にやって来たクネヒト・ループレヒト(ブラックサンタ)。本来はドイツを中心とした民間伝承で、聖なる夜に悪い子供へ粛清を行う悪魔とされています。その粛清方法は作中でもブラックが語った通り、部屋を荒らしたり子供を連れ去ったり、時にはプレゼントの代わりに石炭や木の棒、何かの内臓を置いて帰っていくというものまで多岐に渡ります。しかし、こういった行いはほとんどが子供を更生させる為であり、実際さとくんが連れ去られそうになったのも、彼が悪魔に取り憑かれているからという至極真っ当な動機によるものでした。
    というか、大元である赤いサンタクロースの文化はキリスト教の聖人 聖ニコラウスの伝説から広まったものであり、その聖人が元となった赤い服のコスプレを悪魔であるブラックが纏っているという構図はだいぶアレですね…


    【小谷くんと失わ騎士(ナイト)】
    少年野球チームに所属する小谷くんは、ずっとベンチ組だった中ようやくスタメンとして選ばれた喜びを噛み締めていました。ところが後日やってきた転校生は彼と同じポジションにして天才的な才能を発揮し、早くも小谷くんのスタメンとしての立場が危うくなってしまいます。彼にブラックが手渡したのはデビルツール「失わ騎士(ナイト)」。有形無形問わずあらゆるものを守ってくれる騎士の人形にスタメンの座を守らせた小谷くんは試合で大活躍しますが、今度は沢山の下級生がチームに加わり、恐ろしくなった小谷くんは騎士に「守らせる」のではなく「攻撃させる」という契約違反を犯し、魔界へ送られてしまいました。
    この甲冑が眩しい騎士の人形ですが、十字の紋章が象られた盾を持っており、おそらく十字軍やそれに関連する騎士修道会の戦士がモチーフかと思われます。
    十字軍は11世紀〜13世紀頃に行われたキリスト教徒による軍事行動の通称ですが、失業者が溢れていた当時のヨーロッパにおける救済措置としての役割も有ったが故に騎士道とは無縁の人間も多く集まり、聖書の教えを守るという大義名分から掠奪や殺戮、他にも言葉で表せない程の蹂躙を行う兵士が後を絶たなかったとされています。このような経緯から、十字軍自体が「もっともらしい理由をつけて道理を欠いた行動をする者」の例えとして使われる事もあるそうです。まさにエピソード終盤の小谷くんのようですね。


    【魔王が嗤うサバト】
    長編エピソード『異世界最強トーナメント BREAKING THE WALL』にて、ブラックが初めて見せた"魔王"としての姿。彼が天界に叛逆し、魔界にて頂点に君臨する事となった経緯は、神と人類に敵対する大悪魔サタンそのものです。
    また、ブラックは一つの空間に集められた別世界の住人達を次々と凶暴化させ、サバトと呼ばれる悪魔のパーティを開きます。
    作中でブラックは「パーティ」とざっくり称していましたが、本来のサバトは悪魔崇拝の集会であり、その内容は乱交やカニバリズム、違法薬物の濫用といった背徳を極めるものであるとされています。しかし、こういったサバトの概念は15世紀〜17世紀頃のヨーロッパで大規模に横行した魔女狩りにおいて、当時の異端審問官や学者達によって作り上げられた想像の産物とも考えられています。ブラックが悪魔化させたのは、全員が漫画やゲームといったフィクションの登場人物であり、彼らもまた人間の想像から生まれた存在なのでサバトの開催も可能だったのでしょう。
    余談ですが、サバト(Sabbath)の語源は、安息日(※ホワイトの項目参照)を意味する「シェバト」と同じであり、「悪魔崇拝者が聖なる祈りではなく悪魔に身を捧げる日」という意味から同じ語源が使われたという説があります。


    【火炙りのミライちゃんとだれでも伝記アプリ】
    クラスの物知りご意見番ことミライちゃんは、培ってきた豊富な知識とデビルツール「だれでも伝記アプリ」でみんなの将来の姿を覗き見し、クラスメイトの未来のため片っ端から助言していきます。ところが、数日経っても誰も彼女の指示通りに動こうとせず、アプリの未来予想も納得の行かないものが出てきてミライちゃんは憤りを募らせます。そして彼女はアプリでの表示が最も不愉快だったさとくんの将来を変えようとする契約違反を犯し、魔界へ堕とされてしまいました。それどころか、その身はブラックが両手にかざした炎に包まれ…
    今回のブラックは個人的には物凄く"やり過ぎ"というか、失敗を恐れ何も挑戦しなかった将来の姿を見せた時点で十分な炎タメになってると思うのですが…さとくんの将来にケチつけられた事で、彼に取り憑く悪魔の逆鱗に触れてしまったのでしょうか。
    キリスト教における葬儀は、「肉体を最後の審判の日(※平くんの項目参照)まで残しておく」という思想から土葬が主流です。一方で火刑(火炙り)は、罪人を灰にする事で審判の日が訪れても神の慈悲を与えてもらう資格を永遠に剥奪するという宗教的にも大変恐ろしい処罰であり、特に魔女狩りの被疑者が多く課せられたとされています。当時、魔女とされた者は全くの無実である人も多く、医学など何かしらの知識に長けていた女性が「悪魔と交信して得た力を持つ」として告発され火刑台へと送られる事も少なくなかったそうです。ちょうどあらゆる知恵に秀でたミライちゃんのように。
    話を変えて、今回のデビルツールは「あらゆる未来を知っている」という点から、元ネタはラプラスの悪魔ではないかと推測しています。
    ラプラスの悪魔とは、フランスの学者ピエール=シモン・ラプラスが提唱した古典物理学における仮説で、全ての事象は計測によって未来が判り、それらのデータを解析できる知性(悪魔)が存在するという考え方です。しかし、後に発展した量子力学においてこの仮説は完全に否定されました。伝記アプリも、覗けるのはあくまで「現時点で計測し得る範囲の未来」であり、それは当人の行動一つでいくらでも変更する事が可能なのです。


    【星の下に生まれた命】(22/12/28追記)
    すみません、順番が前後してしまうのですが『BREAKING THE WALL』でもう一点気づいた事があるので追記させてください…
    大会を主催した「S」と名乗るゲームマスターの通話画面には、8つの角を持った星のようなマークが表示されています。この形…八芒星は、ベツレヘムの星とも呼ばれる重要なシンボルです。
    エルサレムにてイエスが産まれた後、空には大きく輝く星が現れ、それを見た三人の賢者がユダヤ人の王=イエスに会いに行くため東の国から旅に出ました。(新約聖書 マタイによる福音書/ルカによる福音書)この星こそがベツレヘムの星です。クリスマスの時期になるとツリーの頂上に大きな星を飾りますが、これも上記に由来する風習とされています。
    『BREAKING THE WALL』の会場では、この八芒星を象ったSのもと、卵の殻を破り「究極のキャラクター」であるンダが誕生しました。彼の頭上には、常に八芒星の画面が浮かび上がっています。イエスが「王の中の王」と称されるように、ンダが全てのキャラクターの王であるというSの意思表示なのでしょう。
    また、卵といえばイースター(復活祭)の連想があります。これは、十字架にかけられて死んだイエスが、遺体の収められた墓地から3日後に復活を遂げたという出来事にちなんだ祝日です。
    これまでにSによって消費されてきた、夥しい数のキャラクターの残骸の中から、ンダは産まれました。そして、ンダは本作の作者であるきさいち先生のデビュー作『パンダんだ』がベースにあると思われます。数々の名作を踏み躙った墓場のような場所で、デビュー作に似せたような「究極のキャラクター」を誕生させた漫画家に、ブラックは何を思ったのでしょうか。


    【ゴーレムは破壊神?】(22/12/28追記)
    優中部小の子供達からゲーム機を取り上げ、あまつさえ他人がゲーム内で製作した建造物を破壊する事に喜びを感じていたアバレくん。デビルツール「ゲーミングハンマー」で世界がMin●craft的なサンドボックスゲームの様相になってもそれは変わらず、学校中に爆弾をばら撒く危険人物と化しました。
    学校を取り戻そうとするさとくん達の熱意に感銘を受けたブラックは、ブロックで巨大なゴーレムを作成し、アバレくんごと学校を爆破するという暴挙に出た事で町を焼け野原にしてしまいました。(今回のお話やたらハチャメチャじゃないですか…!?なんだ同時多発契約って)
    ファンタジーやRPGの世界においてはもはや定番とも言えるゴーレムですが、本来はユダヤ教に伝わる泥で出来た自動人形(ロボット)です。生殖行為以外で生命を創り出すこと自体が神への冒涜に繋がるため、思い通りに製造〜運用するためにはいくつもの厳しい制約を守らなくてはいけないとされています。ゴーレムは単純労働を手伝ってもらったり、街を守るガードマンにするために創られる事がほとんどですが、上記の制約をしっかり守らないと凶暴化し、無差別な破壊を繰り返す怪物となります。悪魔が、それも数分しか時間をかけずに造ったゴーレムならまあ理性は芽生えず破壊神と化すでしょう。
    ちなみに後でフォロワーさんから教えていただいたのですが、今回の元ネタであるMinecr●ftではアイアンゴーレムというモンスターを召喚する事ができ、村人に危害を加える敵を確認するとどこまでも追いかけて倒してくれるそうです。(プレイヤーが同じ事をやるとプレイヤーにも攻撃してくるらしいです)


    長々と記録していて満足しました、終わり。
    ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!
    「この話でこういう考察あるんだけど」みたいなコメントがあればぜひマシュマロ等でご連絡ください。また何か発見かまたあれば追記するかもです。
    それでは、またどこかで。

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    この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
    SCP-096 - "シャイガイ"
    
著者: Dr Dan

    URL: http://scp-jp.wikidot.com/scp-096
    
作成年: 2022
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    Replies from the creator

    recommended works