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    へるはうんず

    供養:すけべ
    自主練:自カプ

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    へるはうんず

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    なんやかんやの都合でしょたになってしまったあるたーさんとののさんがエンカウントする話冒頭
    書きたいところだけ書いたので増えるかどうかはわからん

    ての※アイディス通過後。ののさんがはじめさんの家に泊まるくらいになった想定


    まだ薄暗い時間、ふいに目が覚めた。
    どことなく冷え冷えとした空気を感じて、布団からのそのそと出てガスストーブをつける。室温は15℃、うん、通りで少し肌寒い。
    家主はまだ寝ている頃かと思って、隣接した部屋のドアを静かにゆっくりと開ける。カーテンの締め切られた、いっとう寒く暗い部屋。ここが彼の、はじめの世界。
    視線を右に動かすと、ベッドがやんわりと膨らんでいる。彼には頭まで毛布をかぶる癖があるらしく、いつも顔は見えない。それでも眠りが浅いのか、私が部屋に入ると九割八分で目を覚まして、深海のような目色をこちらへ向けてくる。
    しかし今日はどうも違った。私がそろそろとベッド脇まで来ても、一切目を覚ます気配がない。それどころかピクリともせず、すうすうと小さな寝息だけが聞こえる。
    別に起きないなら起きないでいい。けれどあまりに珍しいものだから拍子抜けして、ベッドを覗き込むなんてことまでしてしまった。当然毛布の下に隠れた姿は見えなかったけど、代わりに布団から赤錆色の髪がはみ出ていた。

    「…はじめ?」

    私が驚いたのは、その髪が長い一束になって溢れていた事だ。確かにはじめは男の人にしては襟足が少し長いけど、こんな束にできるほどではない。おまけにいつもより少し明るい髪色に見える。
    そういうわけで私はその布団の中にいるのが、家主本人かどうか疑わしく感ぜられてしまったわけで。思わず名前を呼んでしまった。起こすのも申し訳ないかと一瞬思ったものの、口を噤むより先に布団がもぞもぞと動いて小さな顔が覗いた。

    「…??」

    確かにはじめだった。でも、私の知っているはじめじゃない。目は少しくりっとして顔つきは幼く、艶のない髪は長く垂れ、顔中に湿布や絆創膏が貼ってある。一口に言えば、怪我だらけの貧相な子供がそこにいた。
    寝ぼけ眼でこちらを見たその子は暫くぼーっと私を見つめて、そして丸い目を大きく見開いたと思えば、毛布に包まりながら一目散に机の下に隠れた。

    「だ、だれ?!?!」
    「や、それは私の台詞…と言いたいところだけど、多分はじめよね?」
    「………」

    見かけ的に10,11歳くらいのはじめは、毛布の隙間から私をじっと観察した。つま先から頭の先まで、一目でも見逃すまいとするように、何度も何度も確認した。
    いつものはじめを知っている私からすると、まるで違いすぎて笑ってしまいそうになるけれど、状況は全然笑えないので口角は上がらない。

    「…お姉さん、お父さんの知り合いの人?」
    「ううん、私ははじめの知り合いよ」
    「でも僕お姉さん知らない」
    「未来のはじめの知り合いなの、何言ってるかわかんないと思うけど」

    私はびっくりするくらい今の状況を受け入れていた。いやいやそうはならないでしょ、とはならなかった。何故かは分からないけれど、何となくこういうのってしばらくしたら戻る、みたいなオチになりそうだったっていうのはあるかもしれない。
    それにこういうはじめを見るのは、実は初めてではない。オレンジのランプが照らす世界で、私は小さなころのはじめと話したことがあった。

    「ゆうかい?」
    「誘拐なんてしないわ、私にメリットないし」
    「じゃあ助けてくれたの?」
    「助け?」

    小さなはじめはほんの少しだけ机の下から身を出して、私を伺い見た。

    「…お父さんが、僕に酷いことしてるから、助けてくれるのかなって…でも、多分違うんだよね、変なこと言ってごめんなさい」

    はじめは酷く小さな声で謝って、また机の下で布団に包まる。
    あの日から私の中でぼやけていた輪郭が、段々とはっきりしてきた。はじめの過去に何があったのか、私は何も知らない。ただ、女癖が悪いことに何か理由があって、それがトラウマ級の過去の記憶と繋がっていることは、あの日のはじめの口ぶりから何となく察しがついていた。
    はじめは、父親から家庭内暴力を受けていたんだ。しかも離婚か何かで、母親はいない。はじめのこと、誰も助けてくれなかったんだ。
    音楽以外は。

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