Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    妖怪ろくろ回し

    ほぼほぼネタ箱。
    夜叉姫は先行妄想多々。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 33

    妖怪ろくろ回し

    ☆quiet follow

    三人娘

    ##半妖の夜叉姫

    *


     手繰る。
     今までの大切な記憶たちを。
     縄を綯うようにもうずっとずっと昔のことにすら思える、今までのことを。
     思い出せなくたって過去を捨てる必要なんてないんだ、と教えてくれた姉を名乗る仲間がいた。思い出したくもない、忘れたいことまで無理に覚えておく必要なんてないんだ、と教えてくれた従姉妹を名乗る仲間もいた。
    「全く、お節介な奴らだ」
    「誰がお節介だって?」
    「……自覚はあるのだな」
    「そりゃあ、毎回言われたらちょっとは自覚するってば」
     いつからいたのか、とわは笑いながらせつなの隣に腰掛けた。
    「そうそう。とわはもうちょっと冷徹でもいいんじゃねえの? 双子だってのに、せつなとは正反対だな」
    「もろは」
     頭の後ろで腕を組みながらやってきたもろはもまた、とわと反対側に座り込んだ。
    「はは。でもせつなだってお節介なときもあるよ」
    「私は……」
    「ま、確かに。変なところでせつなも頑固だし、妙なところで拘ったりしてさぁ」
     そのせいで散々な目に遭ったこともあったっけ。火鼠の衣を纏った少女はけらけらと声をあげた。「で、結局みんな揃って振り回されてさ」と続け、長い階段を降った先、楓の家の前であれやこれやと何か話し込んでいる両親たちに目を向けた。
     どれだけ手を伸ばそうとももろはが手に入れられなかったものが、そこにある。
     とわと同じ髪色をした妖怪と半妖がいて、もろはと同じ髪色の人間がいて、それからせつなと同じ髪色の人間がいて。あれやこれやと騒いで──娘たちが産まれる前より交流があったという彼らは昔話に花を咲かせているのか、それとも今までのことを語り合っているのか。
    「でもさ、こうしてみると変な感じだよね」
     もろははとわの言葉に顔を上げた。
    「変?」
    「だって私たち、偶然こうして一緒にいるだけなのに……」
    「全員親戚だっていうもんな。……偶然にしちゃあ出来すぎた話、だな」
     全ては偶然の積み重ね。
     三つ目上臈を退治しにきたせつなたちともろはが居合わせたことも、瞳の虹色真珠に引き寄せられるように時代樹を突き抜け、五百年も先の世界で待つとわと見(まみ)えたことも。
     出会ってからこれまでの旅路だって幸運に幸運が重なってきた。
    「でもさ、それもかごめおばさんだって言ってたじゃん」
    「運命、か?」
     とわの言葉にせつなが答え、三人は頷いた。
     全部、運命だったのよ。
     もろはの母親は今まで彼女自身に降りかかった出来事の全てを『運命』という言葉で片付けた。高名な巫女の生まれ変わりで、胎に宝珠を孕み産まれてきたことから、その霊力を受け継いだ四半妖のもろはを授かったことまで。或いはその先に起きた出来事も。
    「そんな言葉で全部片付けられる身にもなれっての」
     達観したようなあっけらかんとした声で言い切られたってどう反応していいか分からない。じゃあ、こんな理不尽もあんな理不尽も全部『運命』だからって受け入れられたのかよ? とか。聞きたいことはまだまだ多すぎる。
    「はは、そんなこと言わないの、もろは。……だって多分、私たちがこうして出会ったのだって……」
     運命の作為なのだから。
     そうでなければ説明づかない巡り合わせの中を三人は生きてきた。彼女らの親たちがそうであったように、大きな大きな奔流の中をぐるぐる己の意志とは関係なく突き進んできただけのこと。
    「じゃあとわのお節介も運命の思し召しだな」
    「お前のその大雑把さもな」
    「じゃあせつなの照れ屋なところもだね」
    「誰が照れ屋だ!」
     やいのやいの、三人の姫と呼ばれた娘たちは肩を叩き、抱きつき、顔を寄せ、かと思えば顔を背け。
     視界の端で話し込んでいた両親たちがそんな娘たちを愛おしそうに見つめていることなど露知らず、同じ年頃の夜叉姫らはひたすらにはしゃぎあっていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    妖怪ろくろ回し

    MOURNING弥勒と翡翠*


    「ほう! これはまた、久方ぶりのものを……」
    「知っているのですか、父上」
    「あぁ。昔はよく、旅すがらいただいたものです。この背徳的とも言える味、いやぁ 懐かしい限りです」
     サク、サク。
     せっかくだから少しお父さんと話していきなよ、これでも食べてさ。
     そう言ってとわがくれたのは翡翠が今まで見たこともない異国の菓子であった。きっちりと封をされているはずの袋を裂いて開ければあら不思議、濃厚な匂いがあたりに広がった。
    「奇怪な味だ」
    「なれど癖になる。いやはや思い出しますなぁ。こうしてよく、他愛のない話をしながらつまんだものです」
     隣には雲母を膝に乗せた珊瑚がいて、かごめがいて、七宝と犬夜叉が最後の一粒を取り合って。
     甘ったるい果物の汁を分けあって飲んだこともあった。口内に弾け飛ぶ刺激の強い、薬のような味のする甘い汁を飲んで犬夜叉が大暴れしたこともあった。とわが持っているものと似た、やはり大きな背負い袋を抱えた異国人のかごめがこうして菓子を広げてくれて──様々な飲食物を勧めてはくれたが、弥勒は知っている。この菓子を持ち込めるのは限りがあって、貴重なものだということを。
     仲 1338

    妖怪ろくろ回し

    MOURNING殺生丸と両親*


     殺すも生かすも心次第。
     然れど、いつ如何なる刹那であろうとも、殺そうとも生かそうとも忘れてはならぬことがある。命を愛でよ、それが殺すべき息の緒であれ生かすべき玉の緒あれ、分け隔てることなく。
    「皮肉な名前をつけたものだ」
     故に、殺生丸と。
     命を尊ぶ者になってほしいという願いと祈りの込められた赤子はしかし、そんな父の想いなど我知らず。とんだ暴れ馬となったものだ。気の食わぬ者は妖怪であれ人間であれ毒爪の餌食とし、ころころ玉遊びのように他者の命を奪うかつての可愛らしい赤子は、今まさに母の膝上で寝息を立てていた。
    「元気がよいのは結構だが……もう少し父としては慈しみの心があってもよかったと思うが……」
    「慈しみ、のう。闘牙さまの目は節穴か」
    「むぅ」
    「弱き者を苦しまずに殺してやるのもまた、慈悲の心だとは思いませぬか?」
    「……まぁ、下から数えれば……そうなるやもしれんが」
     少なくとも今はまだ相手を嬲り殺すような遊びを覚えてはおらぬだけよい。
     そんな言い方の佳人に闘牙王は大げさなため息を零したが、見目麗しき細君は気にした様子もなく笑みを美しい唇に浮かべたままだ。
    「それに、 1429

    recommended works