妖怪ろくろ回し☆quiet followMOURNING三人娘 ##半妖の夜叉姫 * 手繰る。 今までの大切な記憶たちを。 縄を綯うようにもうずっとずっと昔のことにすら思える、今までのことを。 思い出せなくたって過去を捨てる必要なんてないんだ、と教えてくれた姉を名乗る仲間がいた。思い出したくもない、忘れたいことまで無理に覚えておく必要なんてないんだ、と教えてくれた従姉妹を名乗る仲間もいた。「全く、お節介な奴らだ」「誰がお節介だって?」「……自覚はあるのだな」「そりゃあ、毎回言われたらちょっとは自覚するってば」 いつからいたのか、とわは笑いながらせつなの隣に腰掛けた。「そうそう。とわはもうちょっと冷徹でもいいんじゃねえの? 双子だってのに、せつなとは正反対だな」「もろは」 頭の後ろで腕を組みながらやってきたもろはもまた、とわと反対側に座り込んだ。「はは。でもせつなだってお節介なときもあるよ」「私は……」「ま、確かに。変なところでせつなも頑固だし、妙なところで拘ったりしてさぁ」 そのせいで散々な目に遭ったこともあったっけ。火鼠の衣を纏った少女はけらけらと声をあげた。「で、結局みんな揃って振り回されてさ」と続け、長い階段を降った先、楓の家の前であれやこれやと何か話し込んでいる両親たちに目を向けた。 どれだけ手を伸ばそうとももろはが手に入れられなかったものが、そこにある。 とわと同じ髪色をした妖怪と半妖がいて、もろはと同じ髪色の人間がいて、それからせつなと同じ髪色の人間がいて。あれやこれやと騒いで──娘たちが産まれる前より交流があったという彼らは昔話に花を咲かせているのか、それとも今までのことを語り合っているのか。「でもさ、こうしてみると変な感じだよね」 もろははとわの言葉に顔を上げた。「変?」「だって私たち、偶然こうして一緒にいるだけなのに……」「全員親戚だっていうもんな。……偶然にしちゃあ出来すぎた話、だな」 全ては偶然の積み重ね。 三つ目上臈を退治しにきたせつなたちともろはが居合わせたことも、瞳の虹色真珠に引き寄せられるように時代樹を突き抜け、五百年も先の世界で待つとわと見(まみ)えたことも。 出会ってからこれまでの旅路だって幸運に幸運が重なってきた。「でもさ、それもかごめおばさんだって言ってたじゃん」「運命、か?」 とわの言葉にせつなが答え、三人は頷いた。 全部、運命だったのよ。 もろはの母親は今まで彼女自身に降りかかった出来事の全てを『運命』という言葉で片付けた。高名な巫女の生まれ変わりで、胎に宝珠を孕み産まれてきたことから、その霊力を受け継いだ四半妖のもろはを授かったことまで。或いはその先に起きた出来事も。「そんな言葉で全部片付けられる身にもなれっての」 達観したようなあっけらかんとした声で言い切られたってどう反応していいか分からない。じゃあ、こんな理不尽もあんな理不尽も全部『運命』だからって受け入れられたのかよ? とか。聞きたいことはまだまだ多すぎる。「はは、そんなこと言わないの、もろは。……だって多分、私たちがこうして出会ったのだって……」 運命の作為なのだから。 そうでなければ説明づかない巡り合わせの中を三人は生きてきた。彼女らの親たちがそうであったように、大きな大きな奔流の中をぐるぐる己の意志とは関係なく突き進んできただけのこと。「じゃあとわのお節介も運命の思し召しだな」「お前のその大雑把さもな」「じゃあせつなの照れ屋なところもだね」「誰が照れ屋だ!」 やいのやいの、三人の姫と呼ばれた娘たちは肩を叩き、抱きつき、顔を寄せ、かと思えば顔を背け。 視界の端で話し込んでいた両親たちがそんな娘たちを愛おしそうに見つめていることなど露知らず、同じ年頃の夜叉姫らはひたすらにはしゃぎあっていた。Tap to full screen .Repost is prohibited 妖怪ろくろ回しMOURNING翡翠とせつな*「あぁもう、何を怒っているんだ!」「構うなと言っているだろう!」「だから、それがなぜだと聞いているんだ、せつな!」 かしましい声があぜ道に響き渡り、ずんずんと大股で歩くせつなを追って小さな化け猫を抱えた翡翠が重たい飛来骨を背負って走る。なぁ、話を聞け、いいから、とにかく。そう言ったって眼前を進む年下の少女は聞く耳を持ってくれそうにはない。 しかし呼び止めようとする側の翡翠もまた、伝えたいことはたくさんあるのに伝えるべき言葉はなにも浮かばない。 けれどここで彼女を見送ってしまってはいけないと青年はもう一度「せつな!」と大きな声で名を呼んだ。「……」 そして、娘は立ち止まる。「叔父上の話を聞いていたろう。お前が半妖だからといって……」「……」「あぁいや、そうじゃない。叔父上は関係なくて……その、俺はお前が半妖だとは知らなかった。腕っ節の強い女子(おなご)だとばかり思っていた」 しどろもどろに目を泳がせながら翡翠は言葉を選んではそうじゃない、違う、と一人芝居を繰り返す。 せつなはその姿に呆れてため息をつき、「……それがなんだと言う」 と言い放てば、目の前の 1932 妖怪ろくろ回しMOURNING弥珊と翡翠*「さぁともあれ酒です、翡翠。ほら珊瑚も」「えぇっ 酒?」「当たり前です。めでたいことがあれば酒。万病の薬でもありますから」「もう、法師さまは飲みたいだけでしょう?」「母上」「翡翠。父上の相手をしてやって」 金烏と玉兎もいればよかったのだが、と弥勒は徳利かに口をつけた。「母上まで」 翡翠は非難の声をあげたものの、苦笑を浮かべながらも肩に手を置いた母親がそう言うのだからそれ以上の悪口は飲み込んでしまう。母上は甘いんですよ、と苦し紛れの言葉も、「そうだね。だけど今日くらい許してやって」なんて言われてしまえばそれで終わり。「珊瑚、ほれ珊瑚。お前もだ」「私はいいよ」「いいからいいから」「あっ もう」 引っ張らないで法師さま。 珊瑚は言われるがままに弥勒の前に腰を下ろすと、押し付けられた盃にとくとくと音を立てて注がれる香り高い酒を鼻で味わった。「母上まで」「……いいんだ、翡翠」「いやぁ、これで私の夢はひとつ、叶いましたね」「そうだね、法師さま」「夢? どういうことです、父上 母上?」「まぁまぁいいから。とにかくお呑みなさい、翡翠」「はぁ」 いささ 2128 妖怪ろくろ回しMOURNING殺りん*「りんは……きっと死んじゃうね」 十年先か、二十年先か、五十年先か、それとも明日か。 それは誰にも分からない。いかな殺生丸といえども、天に座すあの全智を持つとすら見える彼の母親であれど、誰一人としてそれは分からない。更に言えば、死すはりんではなく殺生丸やもしれぬ。 命とはそのようなものだ。「……」「でもね、桔梗さまがそうだったみたいに……もしかしたら、生まれ変わってまた会えるかもしれないね」「……」「そしたら殺生丸さま、りんを見つけてくれますか?」「断る」 殺生丸は即答した。 何を血迷ったことを言っているのかとも言いたげな視線を少女にやった妖怪はしかし、膝の上で困惑した表情を浮かべたりんの髪の毛に長い指を差し入れた。指であっても通らぬほど強張った髪に彼は少しばかり目を細める。「殺生丸さま……」 あのかごめという女は。 桔梗という名の、犬夜叉などという半妖に心を奪われた巫女の生まれ変わりであるというのは事実だろう。だが、間違いなくあの女は『別人』だ。最初こそ似た匂いを纏わせてはいたが、桔梗の多くを知らぬ殺生丸ですら彼女らの言動は互いにかけ離れてた場所にい 1548 妖怪ろくろ回しMOURNING三人娘* 手繰る。 今までの大切な記憶たちを。 縄を綯うようにもうずっとずっと昔のことにすら思える、今までのことを。 思い出せなくたって過去を捨てる必要なんてないんだ、と教えてくれた姉を名乗る仲間がいた。思い出したくもない、忘れたいことまで無理に覚えておく必要なんてないんだ、と教えてくれた従姉妹を名乗る仲間もいた。「全く、お節介な奴らだ」「誰がお節介だって?」「……自覚はあるのだな」「そりゃあ、毎回言われたらちょっとは自覚するってば」 いつからいたのか、とわは笑いながらせつなの隣に腰掛けた。「そうそう。とわはもうちょっと冷徹でもいいんじゃねえの? 双子だってのに、せつなとは正反対だな」「もろは」 頭の後ろで腕を組みながらやってきたもろはもまた、とわと反対側に座り込んだ。「はは。でもせつなだってお節介なときもあるよ」「私は……」「ま、確かに。変なところでせつなも頑固だし、妙なところで拘ったりしてさぁ」 そのせいで散々な目に遭ったこともあったっけ。火鼠の衣を纏った少女はけらけらと声をあげた。「で、結局みんな揃って振り回されてさ」と続け、長い階段を降った先、楓の 1578 妖怪ろくろ回しMOURNING弥勒と翡翠*「ほう! これはまた、久方ぶりのものを……」「知っているのですか、父上」「あぁ。昔はよく、旅すがらいただいたものです。この背徳的とも言える味、いやぁ 懐かしい限りです」 サク、サク。 せっかくだから少しお父さんと話していきなよ、これでも食べてさ。 そう言ってとわがくれたのは翡翠が今まで見たこともない異国の菓子であった。きっちりと封をされているはずの袋を裂いて開ければあら不思議、濃厚な匂いがあたりに広がった。「奇怪な味だ」「なれど癖になる。いやはや思い出しますなぁ。こうしてよく、他愛のない話をしながらつまんだものです」 隣には雲母を膝に乗せた珊瑚がいて、かごめがいて、七宝と犬夜叉が最後の一粒を取り合って。 甘ったるい果物の汁を分けあって飲んだこともあった。口内に弾け飛ぶ刺激の強い、薬のような味のする甘い汁を飲んで犬夜叉が大暴れしたこともあった。とわが持っているものと似た、やはり大きな背負い袋を抱えた異国人のかごめがこうして菓子を広げてくれて──様々な飲食物を勧めてはくれたが、弥勒は知っている。この菓子を持ち込めるのは限りがあって、貴重なものだということを。 仲 1338 妖怪ろくろ回しMOURNING殺生丸と両親* 殺すも生かすも心次第。 然れど、いつ如何なる刹那であろうとも、殺そうとも生かそうとも忘れてはならぬことがある。命を愛でよ、それが殺すべき息の緒であれ生かすべき玉の緒あれ、分け隔てることなく。「皮肉な名前をつけたものだ」 故に、殺生丸と。 命を尊ぶ者になってほしいという願いと祈りの込められた赤子はしかし、そんな父の想いなど我知らず。とんだ暴れ馬となったものだ。気の食わぬ者は妖怪であれ人間であれ毒爪の餌食とし、ころころ玉遊びのように他者の命を奪うかつての可愛らしい赤子は、今まさに母の膝上で寝息を立てていた。「元気がよいのは結構だが……もう少し父としては慈しみの心があってもよかったと思うが……」「慈しみ、のう。闘牙さまの目は節穴か」「むぅ」「弱き者を苦しまずに殺してやるのもまた、慈悲の心だとは思いませぬか?」「……まぁ、下から数えれば……そうなるやもしれんが」 少なくとも今はまだ相手を嬲り殺すような遊びを覚えてはおらぬだけよい。 そんな言い方の佳人に闘牙王は大げさなため息を零したが、見目麗しき細君は気にした様子もなく笑みを美しい唇に浮かべたままだ。「それに、 1429 recommended works ノウァDOODLE殺生丸様 創作BLの息抜きで描いたやつ んー続話制作がんばるぞー💪💪 2 火燈弥紗💀🔥Skeb募集中DONE夜叉姫5話の雲母に乗るせつなととわと、せつなの近くに寄って耳打ちするとわが可愛かった※せつとわ 2 火燈弥紗💀🔥Skeb募集中DONE半妖の夜叉姫12話の雲母と戯れるとわが可愛かった※せつとわ 火燈弥紗💀🔥Skeb募集中DONE半妖の夜叉姫14話のとわのスマホを持ちたがるせつな※せつとわ 火燈弥紗💀🔥Skeb募集中DONE【半妖の夜叉姫】友人に送ったせつなととわの年賀状 雪風(ゆきかぜ)。DONE今日は17話!11話で、千代ちゃんに救いの手をさしのべるとわちゃんがイケメンすぎた。惚れる。 雪風(ゆきかぜ)。DONE今日は22話!14話、新年最初の放送だけどかなりずしんとくる内容。最後、焔がああいった終わり方をしたことに対しての3人の心境を描いた。 雪風(ゆきかぜ)。DONE今のEDすごく好きとくにとわちゃんが駆けだしていってせつなが手を掴んでくれるあそこすごく良い 雪風(ゆきかぜ)。DOODLE白ワンピで夏の装いな双子姉妹ちゃん