invitation「ガス爆発だ。お気の毒にな」
真っ黒な骨組みだけ残して燃え尽きた紅茶屋の前で、小太りな刑事が立ち尽くしている小柄な男の肩を叩いた。
モルテ・アッリデーレ。毎週この店に顔を出す紅茶好きの常連客だ。彼はゆっくりと刑事の方を向くと、「いつ?」と小さく質問を返した。表情からは何も読み取れないが、声色にはほんの僅かな動揺が滲むのが感じ取れた。
「昨晩ズドンと。そのまま燃え広がって、朝方やっと鎮火した。店主のノックスは病院に運ばれたが、重度の火傷と……肺をかなりやられてるらしい。助かるかは、わからん」
「この店にガスは引かれていないはずだけど」
「ああ。そうだな」
「で、ガス爆発?」
「ああ。不運な事故だ」
刑事は空を仰いだ。深く追求せず、口に手を当てて何やら考え始めたモルテに、刑事は腰のポケットからあるものを出して強引に手渡した。そのまま顔を近づけて、小声でこう告げる。
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