チャイナ「お前に、その価値があると思うの」
白檀の香が焚かれた部屋にメノウ石が施された彫像、金額に換算すれば恐ろしい桁になるであろう飾り物の数々。その部屋の真ん中で決死のような表情で膝をつく男性と、キセルを吹かし嘲笑う青年。問われた言葉に男性は言葉を詰まらせる。ここで何かを言わなければ自分は数刻後には東シナ海に沈むと理解しているのだ。
「ボス、俺の忠義はっ」
「その忠義に泥をぬったのは、お前だよ」
ボスと呼ばれた青年、フェイスの髪と同じ濡羽色の羽織が翻される。組みなおした足を動かせば、跪つく男を別の男が腕を掴み部屋の外へと引きずっていった。ボスへ酌量を求める悲鳴が消えたということは、男は地下室へと連れていかれたのだろう。生きたまま海に沈めば上々、けれどもその隙を見せてしまえば同じ男がネズミのように湧き出るだけだ。ならば、地下室の声が廊下に響くくらいが丁度良い。フェイスの意図を汲み取るのが上手な側近はきっと良い方法を提案してくれるのだから。
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