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    [サンドマン] 夢王の思いつきでハロウィンをすることになったと告げられるドリーミングの住人たち。
    特に話にすじはありません。不真面目です。

    ##サンドマン

    ドリーミング・ハロウィン「明日は目覚めの世界ではハロウィンという日らしい」
     王座の間に集められたドリーミングの住民たちを前にモルフェウスは切り出した。
    「聞くところによると、最近では世界中に広まっている祭だそうだ。子供たちが菓子をもらったり、仮装をしたりするらしい。そうだな、コリント人」
     いきなり話を振られたコリント人は急いで顔を上げた。「ええ、まあ」
    「だが中にはそのような楽しみを味わえない子供もいる。だから、今年はここドリーミングでハロウィンなるものを開催し、そんな子供たちをもてなしてはどうかと思うのだ」
     それを聞いてゴールトの背筋がすっと伸びた。彼女の黒い肌が美しく輝く。
    「だが菓子というのは難しい。美味しそうにすればするほど食べる前に目覚めてしまう決まりだ。子供たちにそのような悲しい思いをさせたくはない」
     モルフェウスが悲しげな表情を浮かべた。昔は面をつけたように無表情だった王が、このところ少しばかり表情豊かになったことに皆気づいている。
    「というわけで、皆に仮装をしてほしい」
     微笑ましく見つめていた一同に、ざわめきがさざなみのように広がった。
    「仮装と言われましても、どのような……?」誰かが尋ねる。
    「好きなものになるが良い。私は皆の自由な意思を尊重したいと思う」
     最近の王は変わった。少しばかり肩の力が抜けたというか、ドリーミングの住人たちにも頼り、耳を傾けるようになった。多くはそんな変化を好意的に受け止めていたが、しかしそれがここで発揮されるとは。
    「各自、自分の似合うものになってみるのはどうか」
    「では」ゴールトが目を輝かせながら手を挙げる。「私は妖精になりますね」
     それは果たして仮装なのかと考える面々を残し、彼女は足取り軽く広間から消えた。
    「じゃあ俺は、真っ黒なツノと翼と尻尾でもつければいいですかね」
     口の端を上げながらコリント人が言うとモルフェウスはわずかに微笑んだ。
    「ああ。聡くなったなコリント人よ」
     コリント人は首の後ろを掻きながら隣のルシエンに囁いた。
    「我が君の単純さにびっくりなんですが」
     ルシエンは無言で同情に満ちた、いや、同情を求めるような眼差しでコリント人を見た。
    「なるほどなるほど、では私は」ギルバートがニコニコと笑いながらふくよかな手を挙げた。「サンタクロースに」
     流石にそれはどうなのだろうという微妙な空気が流れたが、モルフェウスは少し考え「良いだろう」と頷いた。
    「ありがとうございます。ちょっと憧れてたんですよ」
     ギルバートは眼鏡に手をやりながら丸い顔をほんのり赤らめた。
     この調子でいくと、ハロウィンとクリスマスが入り乱れる十月終わりのスーパーマーケットのようになりそうだとコリント人は思った。だが混沌こそ悪夢の得意分野である。面白いことになりそうだとサングラスの奥で小さく舌舐めずりした。
    「じゃ、俺たちは小人でどうでしょう?」
     アベルがにこやかに言うと隣のカインがじろりと見た。
    「うむ、似合いそうだな。それでは手を貸してやろう」
     カインが口を開く間もなく、モルフェウスが二人に手をかざすと、みるみるうちに二人の身長が縮んだ。驚き嬉しそうなアベルをカインが睨む。たぶんここを出るやカインに殺されるに違いない。その方が幾分ハロウィンにふさわしいかもしれないが。
    「私もやらないといけないのですかね」
     ルシエンが小さく首を傾げながらモルフェウスを見やる。
    「ああ、もちろん」
    「では私はさしずめヴァンパイアといったところでしょうか」
     モルフェウスは満足げにルシエンを見た。
    「とても、よく似合うと思う」
     とても、の部分がいささか強調されていたせいかルシエンがグイっと眉を上げたが、モルフェウスはそのまま後ろの方に目線を移した。
    「もちろんマーヴはそのままで良い。お前に取り仕切ってもらおうと思う」
     マーヴは無言で肩をすくめた。
    「で、我が君は何になるので?」
     コリント人が聞くとモルフェウスは不思議そうに彼を見た。
    「私は参加しない。私はここを統べる義務がある」
    「いやあ、そんなわけにはいきませんよ」
     コリント人は、ずいっとモルフェウスの前に歩み寄った。

    * * *

    「面白いもの見せてくれるってなに?」
     仏頂面で現れたディスペアをディザイアは満面の笑みで迎えた。
    「これ、見てちょうだい? もう最高よ」
     ディザイアは手に持った写真を持ち上げた。ディスペアが覗き込む。
    「……これまさかドリーム?」
    「そう。なんかドリーミングでハロウィンやったらしいわ」
    「で、あのドリームが仮装? これは猫かしらね」
    「そのようね。でも黒猫じゃないあたり、やるじゃない、あの万年黒ずくめが。綺麗な純白なんか着ちゃって」
    「白いマント姿なんて初めて見た。手足は黒いけど」
    「シャム猫といったところかしら。この黒い長手袋いいわね」
    「ガリガリだから中のぴったりした服も似合ってるじゃない」
    「もう、このふわふわで真っ黒な耳と尻尾を撫で撫でしたいわあ」
     ディザイアの白い指が艶かしく写真を撫でる。
    「それにこのヒールの高い黒ブーツ」
     あの悪夢、なかなかいい趣味してるじゃないのとディザイアが呟いた。
    「脚はまさか白タイツ?」ディスペアが聞くとディザイアはまじまじと見つめた。
    「スキニーなパンツみたいね。残念」大袈裟に眉を上げる。
    「次のファミリーディナー、この格好で来てほしい」
    「いいわねえ。どうやったらこの格好で来させられるかしら」
     二人はヒソヒソと囁き合った。
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    Ordet_er_frit_

    DONEフォラクレのクリスマス話。ドイツの小さな街にて。
    なお、アンティ…が成功したIf設定です。
    Stille Nacht ~静かなる聖夜~ 雪混じりの冷たい寒風が、クレーバーを嘲笑うかのように吹き抜ける。
     耳が千切れそうな冷たさに、帽子を忘れたことを激しく後悔する。だがクリスマスイブには店も開いていない。
     クレーバーは鼻をすすった。ふと、人前で鼻をすするのはやめなさいと博士に言われたことを思い出す。
     だが、もうここに博士はいない。
     もう一度、派手に鼻をすすると、冷たい空気が脳天を突いた。馬鹿だった。
     だが冷たい空気と一緒に、甘く香ばしい香りが鼻をくすぐった。クンクンと探る。たぶん、これは広場の方だろう。あてもなくフラフラしていた足は、突如目的をもってサクサクと雪を踏みしめた。
     街の広場には、一応クリスマスツリーが立ち、クリスマスのデコレーションがされている。見回すと匂いの元はすぐ見つかった。広場の片隅の小さな移動屋台。暖かい明かりの元、大きな銅鍋の中で、ローストアーモンドがかき混ぜられている。クレーバーは引き寄せられるようにそちらへ歩いていった。店員が、コーン型にした包み紙に、砂糖をたっぷり絡めたアーモンドを入れて客に渡している。前のカップルが嬉しそうに受け取って離れていくと、店員がクレーバーへ視線を移した。
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