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    natu_hoshi_oni

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    natu_hoshi_oni

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    猫しのぶさんと制服

    制服のシャツが消えてしまった。

     確かにハンガーにかけていた筈なのにと首を傾げていると、ずりずりと何かを引きずる音。
     まさかと、急いで部屋の外を覗くと、廊下には私のシャツを着たしのぶが、動きづらそうによたよたずりずり歩いている。

    「しのぶ?」

     呼びかけると、ピンと耳をたてて、振り向こうとして裾がすべり、たたらをふんで転びそうになっている。一瞬、この可愛いしのぶを余すことなく記録にとるべきだと使命感にそそのかされ、机のスマホを取りに行こうとしてしまったが、私の理性は何とかしのぶを助ける方向に傾いてくれた。
     可愛いしのぶが転ぶ前に、小さな体を支えてあげる。

    「どうしたの、しのぶ?」
    「……」

     抱き上げると、たらんと耳と尻尾が垂れ下がって、引きずられたシャツの裾はぐちゃぐちゃになっている。

    「姉さんのシャツ、着てみたかった?」
    「……」

     少し間をおいてからこくんと頷くので、あらあらなんて可愛いの! と、思わず抱擁しようと顔を寄せ、その愛らしい眉間に薄い皺ができている事に気づく。

    「しのぶ……何か姉さんに言いたい事がある?」

     優しく問うと、しのぶの長めの尻尾がゆらゆらと大きく揺れる。
     降ろしてあげると、しのぶはジッと私を見上げてから、よたよたと、シャツを引きずったまま部屋の中に戻り、私の学生鞄を指さす。

    「? 鞄がどうしたの」
    「……」

     うーん? よく分からないけど、中身が気になるのかと開けてあげると、しのぶは私の両腕の中に潜り込む様にして「……!」と、鞄の中に勢いよくズルリと入ってしまう。

    「し、しのぶ?」

     着ていたシャツが飛び出ているけど、しのぶの体は学生鞄に納まってしまうぐらい小さいのかと新鮮に驚いた。
     数秒してから、鞄の中でもぞもぞ動き出したしのぶが、にゅっと顔だけ出してくるので、学生鞄との対比に胸が高鳴って、口元を抑えながらスマホでこの光景をパシャパシャ撮りまくる。

    「……!」

     そうしていると、しのぶが期待をこめた瞳でジッと私を見ている事に気づいて、まさか、と遅れて察してしまう。

    「もしかして、一緒に学校に行きたいの?」
    「……!!」

     こくこく頷くしのぶに、唖然と目を見開いて、数秒後に心臓に小さなハートの矢がピスピス刺さった様な、そんなどうしようもないときめきを覚えてしまう。

    「そ、それで、姉さんのシャツを着ていたのね? 制服を着ていたら、一緒に行けると思ったのね?」
    「……!!」

     こくこくこくこく、夢中で頷くしのぶは、意図が伝わって嬉しそうに耳をぴこぴこ動かしている。


    「ッ……しのぶ、どうしてそんなに可愛いの?」


     なぁに、この可愛すぎる子?

     耐えきれずに鞄に手をつっこみ、しのぶをズボッと引き抜いて包み込む様に抱きしめる。突然の抱擁に驚きながらも、しのぶの小さな手が首にまわって、柔いのに強い力で抱き着かれる。

     優しく、指でくしゃくしゃと撫でてあげれば、ゴロゴロと心地よさそうな音が聞こえてきて、ますますこの子への愛おしさに心臓が痛くなってくる。

     ああ、でも。どうしましょう?

     こんなにも可愛いしのぶに、どうしたら『しのぶは学校に連れて行けないの』なんて、そんな残酷な事を傷つけずに伝えられるのか。

     ゴロゴロと、自分も学校に行けると信じてご機嫌なしのぶの喉音を聞きながら、私はあまりの難題に天を仰いだ。




     翌日、真実を知ったしのぶは全力で拗ねて、家の中を飲まず食わずで二日も隠れて出てきてくれなかった……
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    natu_hoshi_oni

    DONE猫しのぶさんと派手な男とハロウィンの話。本日はハロウィンなり。

     キメツ学園の廊下を、ぱたぱたと白いシーツを被ったナニカが走っている。
     生徒たちよりずっと小さなナニカには、よく見れば穴が開いており、目元から菫色の大きな瞳がくりくりと覗き、頭から黒い耳が音に反応してぴこぴこと揺れ、腰に開いた穴から尻尾がゆらゆらと揺れている。

     首には『とりっく おあ とりぃと』と拙く書かれたプラカードを下げて、どうやら保健室に向かっている様だ。

     バスケットの中いっぱいのお菓子をぎゅっと抱きしめてほわほわ歩いている小さな影に、ずいっと覆い被さる大きな影。

    「お? 胡蝶の猫じゃねぇか」

     そんなシーツお化けに声をかける派手な男。

    「……?」
    「よお」

     まじまじと無遠慮に見下ろし、首にぶら下がるプラカードを見て「ふぅん?」と面白そうに笑う派手な男に、白いシーツは「……ん!」とプラカードを見せつける。

    「あん? 今日の俺様から菓子をふんだくろうとは、なかなかに悪じゃねぇか。胡蝶猫」
    「……?」
    「まあ、お前に言ってもしょうがないか。……しかし、そうだなぁ」

     にやにやと、派手な男はポケットから飴玉を取り出し、おもむろに目の前で 1740

    natu_hoshi_oni

    MAIKINGTwitterで妄想してた初期のしのぶさんのホラーを文章化しようとしたもの。怖い話、ですか?

     なるほど。次の休みに百物語をする予定なので、お話のストックが欲しいと。
     ええ、構いませんよ。私で良ければ力になります。……でも、困りましたね。私は語るのが好きというだけで、そういった話に明るくは無いのですよ。

     いえいえ、語る際の抑揚で怖がらせるのが趣味なだけで……あら、そう言って頂けると語ったかいがありますね。ありがとうございます。

     ふふ、気分も良いので、手ぶらで帰らせるのもなんですし。……そうですね。

     私の、ちょっとした体験談などいかがでしょう?






     case.1 白紙の手紙






     カタンと、軽い音をたててポストの蓋を開ける。

     この日も、私宛の手紙が一通だけ入っていて、溜息を零しながら手を伸ばす。

    『胡蝶しのぶ様』

     封筒には、私の名前だけ記載されている。住所も電話番号もかかれていない胡散臭いソレを、感触と臭い、重さで危険はないと判断して開ける。
     ハラリと、中を取り出せば予想通り、白紙の何も書かれていない紙片に眉をしかめる。

    (何がしたいのかしら……?)

     最初は、これに何か意味があるのではと色々気になって調べてみた 2080

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