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    natu_hoshi_oni

    @natu_hoshi_oni

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    natu_hoshi_oni

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    猫しのぶさんのsss。

    心臓が止まるかと思った。

     かわいいかわいいしのぶが、今日は妙に隅っこにいるなぁと不思議に思ってはいた。
     ただいまと声をかけても尻尾がぴこんと動くだけで、ジッとしたまま動かない。テレビをつけて隣を開けて待っていてもいっこうに来てくれない。そんなつれないしのぶに痺れを切らし、驚かさない様に優しく声をかけながらひょいっと抱き上げると、ぽたた、と重い液体が零れる音。

    「え」
    「……?」

     きょとん、という顔でこちらを振り向いたしのぶは、流血していた。
     瞼がぱっくりと切れているのか、左眼を閉じて血が溢れている。着ているパーカーの裾が真っ赤で、よく見ればあちこち傷だらけの酷すぎる姿に、ふっと意識が遠のいて―――しかし、長女として耐えねばならないと、何とか現実に踏みとどまった。

    「し、しのぶ?」
    「……」

     しのぶは耳と尻尾をぴこぴこしてから、赤と黒に染まった小さな拳で、瞼をくしくしと―――

    「ダメ!!」
    「……!?」

     びっくぅ!! 驚くしのぶの手を掴んで、そのままダッシュで珠世先生の家にむかう。
     何故か近所に引っ越してきた珠世先生の家に、何故かしのぶが持っていた合鍵をあけて入ると、珠世先生は酷く驚いて、しのぶの姿を見ると更に驚いて「――お湯の準備を!」すぐに動いてくれる。

     そのまま、いやいやするしのぶをおさえこんで何とか手当てをして、瞼の傷は流石に大きすぎて縫うべきだと珠世先生が針と糸を手にした瞬間、びゃあ!! としのぶが反応して凄まじい速度でびゅんびゅんと部屋中に血をまき散らしながら飛び跳ねたかと思えば、本棚の上に丸くなって出てこなくなってしまう。

    「わ、分かりました、しのぶさん。縫うのはやめますから……!」
    「しのぶ、本当に針と糸は使わないから、出てきて! せめて傷口をおさえさせて!」

     もう、口から悲鳴が飛び出しすぎて、喉が痛くなるぐらいの大騒ぎを終えて、ようやく一息つく頃には、しのぶは腕の中ですぴすぴと眠っていた。全身の力がぬけるぐらいの疲労感に襲われ、珠世先生と一緒にぐったりする。

     真白い包帯で左眼をおおった痛々しいしのぶの姿を見て、珠世先生は「鴉でしょう」と、眉間にくっとしわをつけて教えてくれる。

    「……体の擦り傷も、くちばしとかぎづめによるものでしょう」
    「……そんな」

     まさか庭で襲われたのかと青ざめて、優しくしのぶを抱きしめる。しのぶのほっぺはぷにぷにで、その柔らかさに心が少し落ち着いてくる。

    「……とりあえず、今夜は泊まっていって下さい」
    「……はい。お世話になります」

     優しい珠世先生のお言葉に甘えながら、しのぶの頭を撫でる。

    「ああ、それと」
    「え?」

     手をあわせた珠世先生が、にこりと微笑む。


    「害鳥除けの方法を、調べないといけませんね」


     その瞳は、今まで見た事のない強烈な色をしていた。
     私はそれに驚きながらも、すぐに深く同意して「一緒に調べます……!」気づけばお互い、かたい握手をかわしていた。




     後日、ネットで調べた結果。鴉がまず子猫のどこを狙うのかを知って……珠世先生の怒りの理由がよくわかり、私としても鴉は嫌いではないけれど、しのぶに害をなすなら話は別だと、それはもう害鳥対策の本を読み漁った。


     当のしのぶは、特に気にした様子もなく窓ガラスに顔をくっつけて、飛んでいる鴉を見ながら尻尾をふりふりしていた。
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    natu_hoshi_oni

    DONE猫しのぶさんと派手な男とハロウィンの話。本日はハロウィンなり。

     キメツ学園の廊下を、ぱたぱたと白いシーツを被ったナニカが走っている。
     生徒たちよりずっと小さなナニカには、よく見れば穴が開いており、目元から菫色の大きな瞳がくりくりと覗き、頭から黒い耳が音に反応してぴこぴこと揺れ、腰に開いた穴から尻尾がゆらゆらと揺れている。

     首には『とりっく おあ とりぃと』と拙く書かれたプラカードを下げて、どうやら保健室に向かっている様だ。

     バスケットの中いっぱいのお菓子をぎゅっと抱きしめてほわほわ歩いている小さな影に、ずいっと覆い被さる大きな影。

    「お? 胡蝶の猫じゃねぇか」

     そんなシーツお化けに声をかける派手な男。

    「……?」
    「よお」

     まじまじと無遠慮に見下ろし、首にぶら下がるプラカードを見て「ふぅん?」と面白そうに笑う派手な男に、白いシーツは「……ん!」とプラカードを見せつける。

    「あん? 今日の俺様から菓子をふんだくろうとは、なかなかに悪じゃねぇか。胡蝶猫」
    「……?」
    「まあ、お前に言ってもしょうがないか。……しかし、そうだなぁ」

     にやにやと、派手な男はポケットから飴玉を取り出し、おもむろに目の前で 1740

    natu_hoshi_oni

    MAIKINGTwitterで妄想してた初期のしのぶさんのホラーを文章化しようとしたもの。怖い話、ですか?

     なるほど。次の休みに百物語をする予定なので、お話のストックが欲しいと。
     ええ、構いませんよ。私で良ければ力になります。……でも、困りましたね。私は語るのが好きというだけで、そういった話に明るくは無いのですよ。

     いえいえ、語る際の抑揚で怖がらせるのが趣味なだけで……あら、そう言って頂けると語ったかいがありますね。ありがとうございます。

     ふふ、気分も良いので、手ぶらで帰らせるのもなんですし。……そうですね。

     私の、ちょっとした体験談などいかがでしょう?






     case.1 白紙の手紙






     カタンと、軽い音をたててポストの蓋を開ける。

     この日も、私宛の手紙が一通だけ入っていて、溜息を零しながら手を伸ばす。

    『胡蝶しのぶ様』

     封筒には、私の名前だけ記載されている。住所も電話番号もかかれていない胡散臭いソレを、感触と臭い、重さで危険はないと判断して開ける。
     ハラリと、中を取り出せば予想通り、白紙の何も書かれていない紙片に眉をしかめる。

    (何がしたいのかしら……?)

     最初は、これに何か意味があるのではと色々気になって調べてみた 2080

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