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    natu_hoshi_oni

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    natu_hoshi_oni

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    猫しのぶさんと派手な男とハロウィンの話。

    本日はハロウィンなり。

     キメツ学園の廊下を、ぱたぱたと白いシーツを被ったナニカが走っている。
     生徒たちよりずっと小さなナニカには、よく見れば穴が開いており、目元から菫色の大きな瞳がくりくりと覗き、頭から黒い耳が音に反応してぴこぴこと揺れ、腰に開いた穴から尻尾がゆらゆらと揺れている。

     首には『とりっく おあ とりぃと』と拙く書かれたプラカードを下げて、どうやら保健室に向かっている様だ。

     バスケットの中いっぱいのお菓子をぎゅっと抱きしめてほわほわ歩いている小さな影に、ずいっと覆い被さる大きな影。

    「お? 胡蝶の猫じゃねぇか」

     そんなシーツお化けに声をかける派手な男。

    「……?」
    「よお」

     まじまじと無遠慮に見下ろし、首にぶら下がるプラカードを見て「ふぅん?」と面白そうに笑う派手な男に、白いシーツは「……ん!」とプラカードを見せつける。

    「あん? 今日の俺様から菓子をふんだくろうとは、なかなかに悪じゃねぇか。胡蝶猫」
    「……?」
    「まあ、お前に言ってもしょうがないか。……しかし、そうだなぁ」

     にやにやと、派手な男はポケットから飴玉を取り出し、おもむろに目の前で食べる。ガガン!? とシーツの猫がショックを受ける。

    「さあて、お菓子は無くなったなぁ? どんな派手な悪戯をしてくれるんだぁ? 胡蝶猫」

     面白がって、両手をひらひらさせる男に、シーツを纏った猫はぷるぷると震えて、スッと取り出したるは、可愛らしい猫型の『防犯』ブザー。
     その小さな手が、ブザーのピンに握られ「待て待て待て待て地味に待て」待ったがかかる。

    「よし。派手に話し合おう胡蝶猫」
    「……?」
    「その手を放せ。冷静に再度抜こうとするんじゃねぇ! 分かった。菓子ならある!」
    「……!」

     ぴこんっ、と耳が反応するが、普段の行いが相当なのか、あまり信用していないらしく、手がブザーから離れない。

    「お前なぁ……」

     派手な男は喉奥で唸る。
     仮にアレが鳴り響いた場合、自身にどんな惨劇が起こるのか良く理解しているからこそ一瞬だけ無理矢理奪い取ろうか血迷い……それは更なる悲劇のはじまりだと、その後の保護者たちの反応を考えて即座に却下する。

    「分かった。この予備の飴をやる」
    「……」
    「足りねぇってか……!? チッ。しょうがねぇな、俺の机に、嫁たちが差し入れてくれたハロウィン用の菓子があるから、それも全部やるよ」
    「……」
    「強欲だな手前ぇ!? しゃあねぇな、駅前のケーキも好きなだけ買ってやる!」
    「……!」

     ようやく防犯ブザーをしまったシーツお化けに、派手な男はやれやれと肩をすくめる。
     その目の前で、ごそごそとシーツが揺れて、更に何かをとりだす。

    「あん? それは何―――」
    『駅前のケーキも好きなだけ買ってやる!』
    「ICレコーダーじゃねぇか!?」
    「……!」

     心なしか、シーツを纏った猫がむふーっと満足げに胸を張っている様に見えて、ここまでしてやられると逆に面白れぇと派手な男は笑う。

    「やるじゃねぇか、胡蝶妹」
    「……!」

     しゃがみこむと、ぷにっと、頬に感触。

    「あん?」

     にくきゅうがついた手袋ごしに、頬を押されたらしい。妙な感触だと思っていたら、今度はバスケットの中から小さなカード。


    『おたんじょうび おめでとう』


     そして、駅前で売ってそうな、安い作りの派手目の指輪。


    「……………こりゃ、してやられたわ」


     これは、参った。
     ここまで見事に悪戯を成功されてしまえば、大人しく手を差し出す他ない。

     大きな手に、小さな両手がさしだされ、カードと指輪が渡される。

     そして、ばいばい、と手をふって、走っていく背中を見送った派手な男は、ぽちぽちとスマホに今起こった事を嫁たちへと、派手に自慢するのだった。


     その一時間後、昼休みの職員室で、派手な男は同僚たちに大爆笑される。


     頬についた、赤いにくきゅうの跡に、鏡を見て更にしてやられていたのだと気づき、派手な男がシーツお化けを追いかけまわし、最終的に無理矢理連れ去って、ご機嫌にケーキとジュースをご馳走するのは、更に数時間後の事である。
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    natu_hoshi_oni

    DONE猫しのぶさんと派手な男とハロウィンの話。本日はハロウィンなり。

     キメツ学園の廊下を、ぱたぱたと白いシーツを被ったナニカが走っている。
     生徒たちよりずっと小さなナニカには、よく見れば穴が開いており、目元から菫色の大きな瞳がくりくりと覗き、頭から黒い耳が音に反応してぴこぴこと揺れ、腰に開いた穴から尻尾がゆらゆらと揺れている。

     首には『とりっく おあ とりぃと』と拙く書かれたプラカードを下げて、どうやら保健室に向かっている様だ。

     バスケットの中いっぱいのお菓子をぎゅっと抱きしめてほわほわ歩いている小さな影に、ずいっと覆い被さる大きな影。

    「お? 胡蝶の猫じゃねぇか」

     そんなシーツお化けに声をかける派手な男。

    「……?」
    「よお」

     まじまじと無遠慮に見下ろし、首にぶら下がるプラカードを見て「ふぅん?」と面白そうに笑う派手な男に、白いシーツは「……ん!」とプラカードを見せつける。

    「あん? 今日の俺様から菓子をふんだくろうとは、なかなかに悪じゃねぇか。胡蝶猫」
    「……?」
    「まあ、お前に言ってもしょうがないか。……しかし、そうだなぁ」

     にやにやと、派手な男はポケットから飴玉を取り出し、おもむろに目の前で 1740

    natu_hoshi_oni

    MAIKINGTwitterで妄想してた初期のしのぶさんのホラーを文章化しようとしたもの。怖い話、ですか?

     なるほど。次の休みに百物語をする予定なので、お話のストックが欲しいと。
     ええ、構いませんよ。私で良ければ力になります。……でも、困りましたね。私は語るのが好きというだけで、そういった話に明るくは無いのですよ。

     いえいえ、語る際の抑揚で怖がらせるのが趣味なだけで……あら、そう言って頂けると語ったかいがありますね。ありがとうございます。

     ふふ、気分も良いので、手ぶらで帰らせるのもなんですし。……そうですね。

     私の、ちょっとした体験談などいかがでしょう?






     case.1 白紙の手紙






     カタンと、軽い音をたててポストの蓋を開ける。

     この日も、私宛の手紙が一通だけ入っていて、溜息を零しながら手を伸ばす。

    『胡蝶しのぶ様』

     封筒には、私の名前だけ記載されている。住所も電話番号もかかれていない胡散臭いソレを、感触と臭い、重さで危険はないと判断して開ける。
     ハラリと、中を取り出せば予想通り、白紙の何も書かれていない紙片に眉をしかめる。

    (何がしたいのかしら……?)

     最初は、これに何か意味があるのではと色々気になって調べてみた 2080

    recommended works