Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5
    コンパスの86組(10、55、13、08)が好きな文字書きです。絵はかけません。
    感想、リクエスト(お断りさせていただくものもあります)はこちらへ→https://marshmallow-qa.com/kurokuro_happy5?t=ajqOjp&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 26

    kurokuro_happy5

    ☆quiet follow

    使い魔86と魔女プレの話。マルコスと契約した時の物語。

    羅針盤の魔女ーMake a contract with Marcosーこれは、マルコスと羅針盤の魔女が契約した時の物語。




    つまらない人生だ。僕の口癖はそれだった。
    とある研究所に、僕は軟禁されている。何でかって言われたら、したいことがないから僕を必要としてるここにいるとしか答え方が分からない。
    何をとっても完璧で、僕の存在を知る全ての人々は必ず僕を恨み妬む。そんなつまらない日々を送っていた僕を、唯一対等に見てくれたとある人にお願いされたんだ。
    研究を手伝ってくれないか、君の力が必要なんだ、と。
    それが何だか、意味のあるものに感じたからここに来た。
    でも……どれだけ成果を出しても、賞賛されても、僕の心の穴は広がるばかりだった。
    何も感じない。全てを手にしたって、心は空っぽだ。
    ふと思い至り、興味本位で一度研究所を脱出してみたことがあるんだけど。すぐに見つかって連れ戻された。僕の右手首についたリング……あの人は何も言わなかったけど、多分これは爆弾だ。次此処を抜け出したら、きっとこれが爆発して死ぬ。
    まぁ僕なら簡単に取り外せるけど。それは無意味な事だと思って、やめることにした。
    こうして僕はこの研究所に軟禁状態で、ひたすら研究レポートをまとめたり、次の研究について提案や意見を考えたり。そんなことばかりをしていた。
    正直言って、これもつまらない。でも誰にも必要とされないよりはずっといいなって思った。
    だってここに居れば少なからず人と話せるし、ひとりぼっちではないから。
    ここがなくなったら、僕には何にもないんだ……
    (ん……?魔女の捕獲に成功……?)
    備え付けのポストに入れられた報告書に目を通していると、気になる文字を見つけた。
    ​───────魔女。
    魔法を使える女の人のこと。本とかでは老婆の姿であることが多いけど、写真に写っているのは若めの綺麗な人だった。近くに赤い猫の写真もある。
    ほんとにいるんだ、魔法使いとか。まぁ僕は信じないけど。
    この世の全ての超常現象には科学的根拠が必ずある。だから、僕はこういったものは信じてない。どうせ誰かの見間違いか幻覚か、偶然なんだ。
    (可哀想だな、この人。生きて帰れないだろうな)
    此処がしている研究は決して、表で言えるものでは無い。僕もわかっていて加担しているから、身を守るために口を閉ざさざるを得ない。
    ……人体実験なんて、珍しいことじゃないし。
    (ご愁傷様)
    僕はそう思いながら、パソコンに視線を移した。



    ある日のこと。
    『魔法少女リリカルルカラジオ、始まるよ〜!』
    お昼を食べながら、ラジオから流れる可愛らしい声に耳を傾ける。
    最近の僕のお気に入り。魔法は信じてないけど、この子達が仲睦まじく話しているのは好きだから毎週欠かさず聞いていた。
    魔法……か。
    (そんなものが本当にあったら、僕の人生ももっと……)
    ……考えるだけ無駄か。どうせそんなのは…………
    「ねぇ、貴方」
    「!?」
    扉じゃない方から声がしたからびっくりした。見ると、鉄格子付きの窓の向こうから、女性がこちらを見ていた。
    この人……報告書の写真の……?
    「此処って出口は何処なの?魔法に制限がかかっていて、調べることが出来ないのよ」
    「……」
    嘘でしょ……あの厳重管理された牢獄を抜け出してきたっていうの?この人。
    まさか本当に……
    普通ならすぐ報告しないといけないけど、好奇心が勝ってしまった。
    「君は……本当に魔女なの?」
    「えぇ、そうよ。私は羅針盤の魔女」
    「羅針盤の、魔女……?」
    「羅針盤の導くままに旅をしてるの。この子は私の使い魔のアタリ」
    魔女の方に乗った赤い猫が、「にゃあ」と鳴く。
    「……どうやって抜け出してきたの?魔法なんてあるわけないのに」
    「魔法があるから、抜け出してきたのよ」
    「嘘だ。そんなのできるわけない。その猫だって……」
    「……アタリ、見せてあげて」
    魔女が言うと、赤い猫がぴょんっと降りて見えなくなり……
    「!?」
    信じられないことに、一瞬の後金髪の少年に変わっていた。
    「これでどうだ?信じてもらえるか?」
    「ね、猫が人に……!?どうなってるの……!?」
    「この子は元人間の使い魔なの。普段は魔力の消費を抑えるために、小さな動物の姿に変えてもらっているのよ」
    何度目を擦っても、そこには少年がたっているし、赤い猫はいなくなっている。
    「……いや、ありえない。じゃあ見せてよ。魔法を」
    「構わないわ。どんな魔法がいい?」
    何?この余裕っぷり……頭のおかしい人の類か、それとも。
    「……ドリーム☆マジカルシャインとか」
    「とてもファンシーな名前ね。聴いたことがない呪文だけれど」
    「夢と希望の光が集まって、敵に飛んでいくんだって」
    そう話していると、窓の外から別の声がした。研究員達だ。ついに見つかったんだ。
    まぁ……時間稼ぎはしたから、僕は怒られないだろう。この人には悪いけど。
    ……あれ。
    なんでこんなに、むねがいたむの?
    「ちょうどいいのが来たわね」
    「え?」
    「見せてあげるから、目に焼き付けなさい」
    そう言って魔女は、向かってくる研究員達に掌を向ける。するとその掌に眩い光が集まってきて……
    「ドリーム・マジカルシャイン!」
    光が掌から発射され、研究員達が吹き飛ばされた。遠くの方から呻き声が聞こえる。
    そこで、僕は確信した。
    「それじゃあ、もう行くわ。またね」
    「また後でな!」
    「あ……」
    奇跡も、魔法も、あるんだって。




    「……」
    次の日。あの人のことが頭から離れなくて、今日は何にも身が入らない。
    羅針盤の魔女が逃げたことは研究所内で大騒ぎになっていて、今全員が血眼になって探している。
    僕はもちろん外に出して貰えないから、研究資料をまとめたり、監視カメラで羅針盤の魔女らしき人を探すくらいしか任されなかった。
    ……もう一度、会いたいな。
    「よかった。今日もいた」
    「よっ!昨日ぶり!」
    「!?」
    待ち望んだ声がして勢いよく振り向くと、窓の外に羅針盤の魔女がいた。僕は慌てて駆け寄る。
    「ちょっと、何してんの!?こんな所に居たら大変な目に遭うよ!!」
    「心配してくれるのね。貴方もこの研究所の一員なんでしょう?」
    「そうだけどっ、でもっ」
    「優しいのね」
    「は……!?」
    魔女は慈愛の瞳を僕に向けてくる。やめてよ、僕はそんな目を向けられるような立場の人間じゃない。
    人を使った研究に加担している、悪逆非道な人間の仲間なんだから。
    「貴方はどうしてここに居るの?」
    「え……?」
    「あまり、ここに居たそうな顔をしていないから。ここに居たいのなら、私のことをすぐにでも此処に突き出すだろうに」
    「……僕は」
    そこで言葉に詰まる。あれ……何で言えないんだろう。
    此処が僕を必要としてるから。それが全てだ。簡単なことなのに。
    どうして……?
    「……」
    「本当は、ここに居たくないのね」
    「……違うよ」
    「?」
    「ここしか、居場所がないんだよ」
    ポツリと零れた本音に、魔女はまた慈愛と瞳を向けてくる。やめてってば。その目で見られていたら、胸が痛いの……
    「じゃあ、私が居場所になりましょうか」
    「……え……?」
    「私は死を求めて旅をしているの。と言っても、今は準備中なのだけれど。羅針盤が私の旅に必要なものを指し示してくれているから……その羅針盤が今、貴方をさしてるの」
    魔女が見せた羅針盤の針は、確かに僕の方を向いていた。微かに光っている。
    「私の旅にはどうやら、貴方が必要みたい。だから、私と契約してくれないかしら」
    「けい、やく……?」
    「オレみたいになるってこと!」
    「でも僕は」
    そこでまた別の声がした。研究員達だ。
    あぁもう、うるさいな。邪魔しないでよ……
    あれ……
    なんでこんなこと、おもっちゃうんだろ。
    「また明日、答えを聞きに来るわ。また」
    「またな!」
    魔女が去った瞬間、後ろのドアが開く。あの人だった。
    「マルコス。あの女と話していたのか?」
    「……」
    「答えなさい」
    「……」
    どうしよう、体が言うことを聞かない。答えたいのに口が開かない……
    僕はおかしくなっちゃったの……?羅針盤の魔女のせいで……
    それとも……
    ​───────これが、正常なの?
    「マルコス!!」
    「何もっ……!話して、ないっ」
    肩を掴まれた手を振りほどくと、パンッ!と子気味いい音がした。
    叩かれた頬がじわりと熱を持つ。
    「何だその目は!誰が飼ってやってると思ってる!お前は私の言うことを聞いていればいいんだ!!本当のことを言いなさい!!」
    「……」
    ここが、居場所?
    本当にそうなの?
    こんなことされて、こんな扱いをされて、
    これが本当に、
    僕が居なきゃいけない場所なの?
    「……契約を、持ち掛けられました。羅針盤の魔女に」
    「契約……?あいつの狙いはお前か。ちょうどいい。お前、あいつを誘き寄せるための餌になれ。いいな?」
    「……」
    「返事をしろ!」
    「……はい」
    違う。こんなの、違う……!!
    僕が居るべき場所は、するべきことは、こんなことじゃないっ……!!
    一人になった部屋で踞る。頭に浮かぶのは、僕に慈愛の瞳を向けてくれた、
    羅針盤の魔女の顔だった。
    「​────」
    震えた声で、僕はその言葉を呟いた。




    研究所の外に、僕は立っている。
    僕は後ろ手にある装置のボタンを持っていた。
    僕の目の前の範囲に魔女が立ったところでこれを押すと、魔法の力を消すことができる特殊な捕獲装置が作動する。
    そして周りには物騒な武器を携えた研究員達が山ほど、彼女を待ち構えている。
    そして僕には、
    【いいか?もし変なことを考えたら、その時点でリングについた爆弾を作動させる。いいな?】
    そんな脅し文句も、つけられている。
    「……」
    息を殺して、彼女が来るのを待つ。すると、ふっと僕の目の前に彼女が降り立った。魔法できたんだ……
    「答えは、見つかった?」
    「……」
    僕は、ボタンに指を当てた。でも……なかなか押せなかった。
    目の前にいる人に、視線を向ける。
    「僕、は……」
    そこで。
    僕がボタンを押していないのに装置が作動し、彼女が捕獲されてしまった。
    嘘だ、まさか、騙された……!?
    「やったぞ!!手こずらせやがって!!」
    「脚だ!!脚を落とせ!!逃げられないようにしてしまえ!!」
    研究員達が僕を押しのけて集まってくる。このままじゃ彼女が……!!
    「やはりボタンを押さなかったな、使えないヤツめ。これからたっぷり調教してやるから覚悟しておけ!」
    ドンッ、と突き飛ばされ尻もちをつく。やめて、と彼女の方に向かおうとしたのに、人混みに押しのけられて手が届かない。
    嫌だ、やめて、
    ​───────その人に触らないで!!
    「おいやりすぎるなよ、死んじまうからな!」
    「大事な被検体だ、脚以外傷つけるな!」
    ぐちゃ、ぐちゃと音がする。生々しい音が。聴きたくない。耳を塞ぐ。
    あぁ、どうして、
    こうも簡単に……希望はこわされるの?
    研究員達が退いた時にはもう、彼女の脚は跡形もなく。彼女自体も、動かなくなっていた。
    「出血のせいか……止血剤を!」
    「おい、魔女は死なねぇんだろ?早く起きろ!」
    その瞬間。
    研究の一人が、誰かに殴られて倒れた。
    「ぐあっ!?」
    「何だっ!?うわっ!!」
    それは、あの金髪の少年だった。目にも止まらぬ早さで研究員達を薙ぎ倒していく。銃を向けられても弾丸より早く、研究員達を殴って、蹴って、立ち上がれなくしていく。
    人間業じゃ、無い……
    「先に力を解放しておいて正解ね」
    「魔女様っ、大丈夫か!?」
    「えぇ。脚を落とされるくらいなんてことないわ、慣れてるし」
    気づけば、魔女は無傷になっていた。どう、なってるの?わけが、わからない、あたまが、いたい……!!
    「アタリ、後は頼むわ」
    「よっしゃ、任せろ。契約の邪魔はぜってーさせねーよ」
    魔女が座り込んでいる僕の方へ歩み寄ってくる。そしてまだ腫れている僕の頬に触れた。
    「どうしたの、これ……痛いでしょう。治してあげるわ」
    ぽう、と柔らかい光に包まれる。するとみるみる痛みが引いていった。
    あったかい……胸が、暖かい……
    これは、何?
    「さっきは邪魔が入ったから、改めてもう一度聴くわ。……答えは、見つかった?」
    遠くで使い魔の子が研究員達を薙ぎ倒す音が聴こえる……それもどんどん無くなっていって、魔女と二人の世界になったみたいに、彼女の息遣いしか聴こえなくなる。
    「……僕は。何をしても完璧で、誰からも恨まれて、妬まれて、つまらない人生を過ごしてきた」
    「……」
    「誰からも愛されなかった。和が乱れるから、要らないって言われた。でもここだけは必要としてくれた……だからここにいたんだ」
    「……」
    「でも、何をしても、どれだけ褒められても、胸に穴が空いたみたいで……僕の存在理由はなんだろうって…………ずっと、思ってたけど。それでも僕は、あの人に愛されてるから、あの人に必要とされてるからって、ここに居続けた……それも昨日、違うってわかって……もう、何を信じたらいいのか分からないの……僕にはっ、ボクには……なんにも、ないんだよ…………!!」
    言いながら、涙がポロポロと零れる。溢れて止まらない。止めて欲しい。この苦しい感情を、痛みを、誰か…………
    「だから​────ボクをたすけて、羅針盤の魔女様……!!」
    すると、彼女はボクの涙を指で拭った。そして優しく、抱き締めてくれた。
    「……よし、よし」
    頭を、撫でてくれた。
    あぁ、あったかい……この人は冷たい雰囲気をまとっているのに、どうしてこんなにあったかいんだろう……?
    色々と聞きたいことは山ほどある。でも不思議と直感的に、この人はきっと、
    ボクを愛してくれるんじゃないかって……思えた。
    「貴方、名前は?」
    「……マルコス」
    「そう。ねぇ、マルコス」



    私と契約して。



    「……ボクは」
    瞬間。パァンッ!!と銃声が響く。後に、魔女様が倒れた。
    赤い血が、地面に広がっていく……
    「魔女様!!!!」
    「契約などさせるか!!おいマルコス、何をぼーっとしている!!その女を早く捕まえろ!!そいつは化け物だ、いい被検体にぐあっ!!」
    「お前ぜってー許さねー!!ボコボコにしてやる!!!!!」
    魔女様をそっと、抱きかかえる。いやだよ、やっと、いえたのに。
    やっと言えたんだ……わかったんだ……自分のことが……
    「魔女様……いやだよ……死なないで…………」
    ポロポロと涙が零れる。あぁ、本で見たことがある。こんなシーン……こういう、気持ちになるんだ……
    知りたく、なかった……
    「……死なないわ」
    「!!」
    「だって私は魔女。羅針盤の魔女……死を求めて旅をしている、不死身の女だもの」
    「ふじ、み……?」
    「驚いた?それとも、軽蔑する?気持ち悪いでしょう、脚を落とされても、体を撃ち抜かれても、どれだけ血を流しても……死なないのよ」
    魔女様はボクの頬を撫でる。その手を掴んで、頬を擦り寄せた。
    「全然……寧ろ興味深いや…………そういうファンタジー的なの、ボクは嫌いじゃないよ」
    「……そう。よかった」
    ぶわっ!と風が巻き起こる。ボクらの下に光る魔法陣が浮かび上がり、魔女様が手にする羅針盤から眩い光が放たれる。
    「この羅針盤に手を重ねて」
    「……」
    「マルコス。貴方と、正式に契約するわ。私の……使い魔になって」
    魔女様がボクに顔を近づけて、唇に口付ける。体の中に何かが流れ込んできた気がした。
    これが、契約…………これが、使い魔になる感覚…………
    とっても、素敵だ。
    「最初の命令よ。マルコス……」
    ​─────あの研究所を、焼き払って。
    「da,vrăjitoarea mea(うん、僕の魔女)」
    魔女様と手を繋ぎ、ボク達は浮かび上がると。片方は恋人繋ぎし、もう片方は形を合わせてハートを作る。
    ボクと魔女様の思考がリンクしているみたいだ。
    やってみたかったんだ……魔法少女リリカルルカラジオで言ってた、この魔法を。
    作り話だと思っていた、この魔法を。
    「「ドリーム☆マジカルフレイム!!」」
    ハート型の炎が研究所に落ち、轟音を立てて燃やしていく……
    研究員達は逃げ出したが、騒ぎを聞き付けた騎士団達に捕まっていた。
    降り立つと、アタリが駆け寄ってくる。
    「二人共!大丈夫か!?」
    「アタリこそ、平気?」
    「オレは平気!……契約、したんだな」
    「……うん」
    「そうだ。これはもう、要らないわね」
    魔女がボクの手首のリングに触れると、パキンッ!と音がして割れたリングが地面に落ちた。
    リングが外れた瞬間、体が物凄く軽くなった気がした。
    「な?魔女様、すげーだろ!」
    「うん……本当に。凄いや…………」
    「!? マルコスっ、どうしたの!?マルコスっ……!!」
    疲れたのかな……意識が、朦朧として…………
    でも今は……もう、いいや……………




    気がつくと、どこかの宿屋のベッドに寝ていた。
    研究所以外の部屋は初めてだからびっくりしたけど、それ以上に、
    「起きた!!」
    「!?」
    アタリの顔が凄く近くにあったことに驚いた。
    「魔女様!!マルコス起きた!!」
    「こらアタリ、騒がないの」
    「だってすっげー心配だったからさ〜……!!大丈夫か?何処も痛くねーか?」
    「う、うん、大丈夫……」
    「へへ、よかった〜」
    アタリはへにゃ、と笑うとボクの手を握ってくる。
    この子の手も……あったかいな……
    「気分はどう?」
    「……まだ歩くには少しだるいかも」
    「そう。なら、出発はもう少し後にしましょうか」
    「そーだな!」
    「出発、って……?」
    「もちろん、旅のよ。羅針盤の針の向きが変わったから、そっちへ行くの」
    魔女様が出した羅針盤の針は、今はボクじゃない方向を指している。
    そっ、か……もう、ボクのやることは、研究の手伝いじゃないんだ。
    ……この人の、手伝いなんだ。
    「マルコス。これからよろしくね」
    「よろしくな!」
    「……うん。よろしくね、魔女様、アタリ」
    「へへへっ、オレマルコスのことだーいすきだぜ!兄ちゃんみたい!」
    「は、はあ?数日前に会ったばっかりで何言ってんの……」
    「嘘じゃねーし!」
    「ふふ。同じ金髪だし、言われてみれば確かに兄弟みたいね」
    「だろー!?」
    「もう、魔女様まで……やめてよね…………好きとか、言われ慣れてないんだから…………」
    「「……」」
    「あっ」
    「マルコスだーいすきだぜ!!」
    「好きよ、マルコス」
    「わ、わかった!!わかったからやめてってば!!」
    こうして、ボクは羅針盤の魔女様の使い魔になり、
    つまらない人生から脱することが出来たのだった。



    この数ヶ月後。とある黒髪の超能力者に魔女様が殺される事件が起こるけど……
    それはまた、別のお話。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works