羅針盤の魔女小話これは、羅針盤の魔女とその使い魔との会話記録である。
ダム「驚きました、まさか魔女様がワインを嗜まれるなんて」
魔女「そんなに意外?」
ダム「はい。水しか口にしているところを見ないので……」
魔女「こう見えて結構強いのよ。……たまに、1体1で飲みたくなるの」
ダム「……それで今日は結界を張られているのですか?」
魔女「私は契約した使い魔との関係を大事にしたいのだけれど、零夜はどうしても嫉妬してしまうから……」
ダム「なるほど。難しいところですね」
魔女「アダムはどう?お酒」
ダム「私も飲める部類ですよ。魔女様に負けず劣らず」
魔女「じゃあ、飲み比べといきましょう。……乾杯」
ダム「はい」
魔女「……美味しい」
ダム「……かなりの年代物ですね。一体何処で」
魔女「この街はどうやら、魔女に昔助けて貰ったそうで。今日寄ったお店で貰ってください、と」
ダム「まさか……その紙袋の中は」
魔女「全部貰い物よ。……誰彼構わず魔女を信じるのはよくないと思うわ」
ダム「やはり、貴女のような魔女だけではないのですね」
魔女「当然よ。寧ろ私はまだ無名な方。世の中にはいい魔女も悪い魔女も沢山いるわ。……いつか、出会う機会があるかもしれないわね」
ダム「もし危害を加えるようであれば、私が全力で守ります。私は、今は貴女の騎士ですから」
魔女「ありがとう、頼もしいわ」
ダム「……魔女様は」
魔女「?」
ダム「……死ぬのは、怖くないのですか」
魔女「……」
ダム「貴女が死を求める度に、ふと思ってしまうのです。怖くないのか、と」
魔女「……私にとって死は悲願。叶えたくても叶えられない夢だから。怖いなら望まないわ」
ダム「そう、ですか」
魔女「アダムは?怖くないの?」
ダム「私は……死が怖い、というよりは。貴女といられなくなる方が怖いです」
魔女「私と?」
ダム「貴女は、私とソーンを助けてくれた。とても慈悲深く、優しく、強く、美しく……初めて陛下以外に身を捧げたいと思わせてくれた方です。私はもっと、貴女と居たい。貴女のことを、もっと沢山知りたいです」
魔女「…………それはとても嬉しい告白ね。お酒が回ってきたのかしら」
ダム「本気です。俺は、貴女が好きだ。羅針盤の魔女」
魔女「! びっくりしたわ、そっちの貴方は久しぶり」
ダム「……騎士でない俺は嫌いですか」
魔女「そんなわけないじゃない、そっちの貴方も素敵よ」
ダム「……そう、ですか」
魔女「さて、飲み比べは私の勝ちね。そろそろ寝ましょうか」
ダム「……」
魔女「アダム?」
ダム「……魔女様。不躾な願いだと、わかっているのですが」
魔女「どうしたの?」
ダム「これは……酔った俺の戯言だと思ってくれて構いません」
魔女「……?」
ダム「……貴女の髪に、触れたいです」
魔女「……何だ、そんなこと。てっきりもっとすごいお願いをされるのかと思ったわ」
ダム「えっ……かなり勇気を出したつもりなのですが……」
魔女「サーティーンなら抱かせろって言うわよ」
ダム「全く、あの死神は…………」
魔女「どうぞ、好きなだけ触って」
ダム「……」
魔女「どう?」
ダム「綺麗で、触り心地が良いです」
魔女「良かった」
ダム「……(ちゅ」
魔女「? 何かした?」
ダム「いえ。……では、もう眠りましょうか。私は猫の姿に戻ります」
魔女「戻るの?このまま一緒に寝てもいいのに」
ダム「……手を、出しかねないので」
魔女「出しても構わないけれど」
ダム「貴女はフィアンセがいる自覚を持ってください……!」
魔女「どうせ魔女と使い魔は定期的に肌を重ねて魔力の供給をし合わないといけないわ。零夜にももうきちんと話は通しているし」
ダム「……」
魔女「好きにしていいわよ、アダム」
ダム「……」
ドサッ
ダム「……いいんだな、どうなっても」
魔女「構わないわ、貴方なら」
ダム「……愛してる、羅針盤の魔女」
魔女「えぇ、私もよ。アダム」
ワ、ワァ……えっちだ…………………