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    kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5

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    コンパスの86組(10、55、13、08)が好きな文字書きです。絵はかけません。
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    kurokuro_happy5

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    使い魔86ダムと魔女プレの話。

    羅針盤の魔女ーMake a contract with Atariーこれは、羅針盤の魔女とアタリが契約した時の物語。




    世界は、腐ってる。
    そう知ったのはもう随分と幼い頃だ。
    オレはとある集落に捨てられた。母ちゃんは泣きながら何か言ってたけど、正確には何を言っていたかわからない。
    集落は捨てられたオレを迎えてくれることは無かった。誰も助けてくれないし、皆でオレを虐げる。
    でも何もしないで死ぬのは悔しくて、どうにかこうにか生きようと必死に足掻いていた。人の目を盗んで残飯を漁ったり、雨の日に泥水を啜ったり。
    けどもう限界だ。漁ってるのがバレたのか残飯を捨てる場所が変えられて、雨もろくに降らない。
    もう、いっか……
    そう思いながら意識を手放そうとしたオレの所へやってきたのは、
    「……貴方、大丈夫?」
    「……?」
    この世にいる人間とは思えないくらい、綺麗な女の人だった。
    「これ、食べる?」
    「!!」
    女の人は袋から柔らかそうなパンを取り出してオレに差し出してきた。飛びついてあっという間に食べると、女の人は目をぱちくりとさせた。
    「……これ、全部あげるわ」
    そして袋の中のパンを全部くれた。水も。あぁ、生きてる。生き延びれたんだ……食べて飲み終えたオレは、女の人に頭を下げた。
    「ありがとう……えっと」
    「私は羅針盤の魔女。あるものを求めて旅をしているの」
    「羅針盤の、魔女……?名前は?」
    「これが私の名前なの。魔女でも何でも好きに呼べばいいわ。……貴方の名前は?」
    「……アタリ」
    「そう、アタリというのね。よろしく」
    オレ達は木の下で一緒に座った。魔女からは、心地いい香りがした。花みたいな、柔らかくて優しい匂いだ。傍にいると凄く落ち着く。
    魔女って悪いイメージしかないけど……この人からはそんな感じはしなかった。
    「何で、オレにパンと水くれたんだ?」
    「だって、あのままだと死んでいたでしょう?貴方はまだ死ぬべきではないと私が勝手に判断したのよ。……あ、そうだ」
    「?」
    「ついでに体も洗ってあげる」
    魔女が手を翳すと、何処からか出現した水に包まれた。死ぬかと思ったけど息苦しさはなく。一瞬で服も体も綺麗になった。
    「す、すっげー!!どうやったんだ!?」
    「魔法よ」
    「魔法……!?そんなの、存在するのか!?」
    「えぇ。だって私は魔女だもの」
    魔女は淡々と答える。おとぎ話だと思ってた……
    「じゃあ、魔法が存在するなら、魔女はゲームって知ってるか?」
    「ゲーム?あぁ、娯楽のこと?」
    「ごらく?はよくわかんねーけど……父ちゃんが言ってたんだ。それはすっごく楽しくて、ワクワクして、見たことの無い世界に連れてってくれるすごい魔法なんだって!いつかやってみたいんだ〜。……父ちゃん、何処にいるかわかんねーけど」
    オレが視線を下げると、魔女は静かにこう言った。
    「見つかるといいわね。私もその魔法に興味があるわ」
    「! へへ、そーだな!……でも、オレには何もないから。魔女みたいに外に出ることすら、力のないオレには…………」
    そうだ。オレには力がない。あいつらを見返してやることも、この集落を出ることすら。集落の周りは砂漠で何にもない。何処に行けばいいのかすらわからない。きっと歩いているうちにさ迷ってミイラになって終わる。それが怖くて、オレはここを出られないでいたんだ……
    「……そういえば、魔女はどうやってここに来たんだ?」
    「……歩いてきたわ」
    「歩いて!?」
    「魔法を色々と駆使してどうにかやってきたの。……羅針盤が、ここに私の欲しい物があると言うから」
    魔女は懐から丸い形の道具を出した。これが多分、魔女の言う羅針盤なんだろう。透明のガラスの奥に針がついていて、オレの方をずっと指してる。
    「魔女の欲しいものって……?」
    すると魔女は、また静かな声で、言った。
    「死」
    「……え」
    「死を、探しているの」
    「死を、って……」
    「私は死にたくて、死を求めて旅をしているの。この羅針盤は、私を死の運命に導ける可能性があるものを指している……だから、この羅針盤の指す方へ向かっているの。死ぬ為なら、世界の何処にだって行くわ」
    魔女は淡々と、なんてこともないように言う。死は、怖い。何度も死にそうな経験をしたからわかる。
    それを求めて旅を、って……どんな気持ちなんだろう。
    「でも、死を見つける前にやりたいことがあるのよ」
    「やりたい、こと?」
    「……私と同じ思いを抱えた使い魔を見つけて、契約したいの。それで……一緒に死んで欲しいのよ。なんというか、なんとなくだけれど……独りで死ぬのは、嫌だから」
    魔女は寂しそうに目を伏せた。
    「使い魔?契約?」
    「使い魔っていうのは、魔女と契約した人間または動物のこと。使い魔の潜在能力を魔女に捧げて、命と命を繋げる。使い魔は魔女のために生き、魔女は使い魔のために生き、魔女が死ねば使い魔も死ぬ……使い魔の潜在能力が大きいと魔女が代償を支払わないといけなくなるらしいわ」
    「へー……そんなのがあるんだな」
    「えぇ。今ちょうどいい子を探しているところなの。使い魔を見つけたら……死ぬ前に沢山愛してから、一緒に死にたいと思っていて。契約したら、その子のことを沢山愛してあげたいの」
    愛。その言葉に、オレの胸が高鳴る。
    もし、もしも……
    オレが魔女と、契約したら​───────
    「……ここの集落は治安が悪いのね」
    「え?……!」
    気づけば、集落にいるヤツらがこちらを陰からじっと観察していた。睨みつけるようにじっと。
    「魔女が嫌いなのかしら」
    「いや。あいつらは余所者を嫌うんだ、誰でも構わず」
    ぐっと拳を握る。オレがこの世で一番、憎い奴らだ。
    「……なぁ、魔女」
    「何かしら」
    「すっげー情けない話なんだけどさ……お前が死ぬまでの間、使い魔を見つけるまでの間でいい。一緒にいてもいいか?」
    「え?」
    「頼む」
    緊張しながら訊くと、魔女は……
    「……構わないわ」
    「!」
    そう言ってくれた。
    こうしてオレは、羅針盤の魔女といることになった……




    魔女と木の下で何日か過ごして、わかったことがある。
    一つ、この人は凄く優しくていい人だってこと。
    二つ、集落の奴らはやっぱり敵だってこと。
    そして、三つ。
    ……世界はやっぱり、憎悪で充ちていること。
    「……魔女…………?」
    オレが綺麗な水に変えてもらうための泥水を汲んで来た帰り。魔女が、頭から血を流して倒れていた。
    集落の奴らがやったみたいだった。桑や鎌を持って、魔女を取り囲んでいた。
    「いたぞ!悪魔の餓鬼だ!」
    「殺っちまえ!!」
    そしてオレにまで襲いかかる。
    あぁ、あぁ、
    許せない。
    許せない。
    オレだけじゃなくて、その人にまで。
    ふつふつと湧き上がるこれは、初めてのものじゃない。今までだって感じていた。けど、ずっとしまい込んでいたんだ。
    どうしたって勝てなかったから。
    でも抑えられない。もう耐えられない。
    勝てないんじゃない、
    ​───────勝つんだ!!
    「お前らぁああぁああぁああ!!!!!!!!!」
    オレは持っていたバケツを振り回し、鎌を奪うと数人刺し殺した。怖気付いた奴らは皆逃げていった。
    オレは涙を流しながら、鎌を捨てて魔女を抱き抱える。
    「……」
    「……魔女」
    物言わぬ魔女を抱き締めて、オレは……
    「酷い有様ね」
    「!?」
    待ち望んだ声が聴こえてびっくりして顔を上げると、魔女はなんてこともないようにいつもの落ち着いた様子で辺りを見回した。
    「……これ、貴方がやったの?」
    「ま、じょ……大丈夫、なのか……?」
    「えぇ。だって私は、死なないもの」
    「しな、ない……?」
    魔女の頭を見てみると、血はついていたけど怪我はなかった。桑に血がついていたから、あれで殴られたんだと思うけど……それで生きてるなんて……
    「……気持ち悪いでしょう」
    「え……?」
    「今まで何度も、惨い刑を受けてきたわ。魔法も、呪いも、幾度となく痛みを与えられてきた。……けれど、私はそれでも死ななかったの」
    「……」
    「……死にたい。私はただ死にたいの。けれど、この体は私を死なせてくれない。魂を解放してくれない。楽に、なりたい」
    いつも落ち着いて淡々としていた魔女からこぼれる本音。オレはそっと、魔女の頭に手を伸ばした。
    「アタリ……?」
    「気持ち悪くなんか、ない」
    「え……?」
    「魔女は、すっごく綺麗だ。きっとこの世界で一番、お前が綺麗だ」
    「でも……っ」
    抱きしめた勢いで魔女を押し倒してしまう。地面に倒れた魔女も、凄く綺麗だ。散らばった黒髪も、こっちを真っ直ぐ見つめる瞳も。全部。
    「……魔女。オレと契約してくれ」
    「え……?」
    「オレが、お前の使い魔になってやる。だってそうしたら……死ぬまで、一緒にいられるんだろ?」
    「でも……貴方はまだ子供だわ。未来がある。それを私に費やすのは」
    「もうオレにはお前しかいないんだ……!頼む、羅針盤の魔女……オレを使い魔にしてくれ。何でもする。お前にオレの全部、やるから……!」
    懇願するオレに、魔女は優しく手を伸ばして頬に触れた。その微笑みは…………あまりに、美しすぎて。
    「……わかったわ。契約しましょう、アタリ」
    「!」
    その言葉は、オレにとって凄く嬉しすぎて。
    こうしてオレと魔女は……羅針盤に手を重ねて、契約した。
    「……これからよろしく、アタリ」
    「おう。魔女様」
    「……? 様は要らないんじゃないかしら」
    「使い魔だしな!この方がらしいだろ?」
    「……貴方がそう言うなら。好きにすればいいわ」
    魔女がオレの頭を撫でる。あぁ、好きだな……この撫で方。
    「ねぇアタリ。私が悲しい時や苦しい時、こうして頭を撫でてもいいかしら」
    「いいけど、何で?」
    「……貴方の髪、ふわふわで触り心地が良くて。落ち着くの」
    「! いいぜ!オレはお前の使い魔だ、好きにしろよ」
    「……貴方って子供なのに、キザなことを沢山言うわよね。どうして?」
    「え?思ったこと言ってるだけだけどな〜。もしかして嫌だったか!?」
    「嫌とは思わないわ。ただ……言われ慣れてないから、少しだけびっくりするの」
    「そっか〜。嫌じゃねーなら良かった!」
    あぁ、ここから始まるんだ。オレの第2の人生が。
    この、羅針盤の魔女様と共に。
    「……アタリ」
    「?」
    「愛してるわ」
    「……オレも。愛してる、魔女様」
    魔女様と、口と口をくっつける。これの意味もいつか……わかる時が来るのかな。




    その後。とある研究所に幽閉された天才青年と契約するのは、また別の話。
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