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    kurokuro_happy5

    @kurokuro_happy5

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    コンパスの86組(10、55、13、08)が好きな文字書きです。絵はかけません。
    感想、リクエスト(お断りさせていただくものもあります)はこちらへ→https://marshmallow-qa.com/kurokuro_happy5?t=ajqOjp&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

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    kurokuro_happy5

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    使い魔86ダムと魔女プレの話

    羅針盤の魔女④羅針盤は知っている。彼女らの運命を。それが彼女の望み通りのものかを。
    しかし、まだ知ることは出来ない。全ては羅針盤の思うまま​───────。



    今回は町ではなく、自然豊かな村へ来ている。というのも、旅の道中に村人に出会い、「近隣の森に人喰いの魔物が出たから退治して欲しい」と依頼が来た。魔女は羅針盤を見、次の人助けをこれに決めた。
    村に寄った後、準備をして森の前に立つ。魔女の隣には、アダムではなくサーティーンが人の姿で立っていた。
    (魔女様、何故今回は彼を……?)
    「……必要だから」
    「ま、そのうちわかるって。黙ってついてきな」
    (こればっかりはね〜……)
    (魔女様、オレ達がついてるからな!)
    (僕が全て根絶やしにしてあげよう)
    「ありがとう、皆」
    使い魔達が励ます中、あの何にも動じない魔女が少し怯えたような顔をしているのは気のせいではない。
    アダムは首を傾げながら、共に森の中へ入っていく……



    サク、サクと草を踏む音、野生動物の鳴き声、そして虫の気配。
    魔女はやけにサーティーンに身を寄せて歩いている。
    (魔女様は森が苦手なのですか?)
    「……森が苦手というよりは」
    そう言いかけた時、魔女の前にブン!と虫が飛んでくる。それがすぐに動きを止め、ポトッと地面に落ちた。
    魔女はサーティーンに抱き着き、震えている。
    (もしかして、虫が……?)
    「やめて、種族名を聞くのもおぞましいわ」
    (す、すみません)
    「んで、俺様が近づく虫を無害有害関係なく殺しまくってるワケ。魔女様の力を少し借りて死を振りまいてるってこった」
    (なるほど、それでサーティーンさんが傍に)
    「い、行きましょう、立ち止まってるとまた何か来そうだわ……」
    「へいへい」
    (……僕だってそのくらいできるのに、何故頼ってくれないんだい)
    「サーティーンの方が効率がいいもの……」
    (僕なら死体だって残さないよ)
    「貴方にはあまり力の無駄遣いをさせたくないの、わかって」
    零夜は魔女にそう言われ、ムスッとした顔でそっぽを向いた。
    サーティーンの力を使い虫達の命を終わらせつつ、先に進んでいくと。
    「……あれか」
    「思ったより大きいわね」
    狼型の巨大なモンスターが群れを成して歩いている。周りには子供なのか、小さめの狼型モンスターが共に居た。
    鋭い牙の間からヨダレを垂らし、ちょうど飯時なのか獲物を探しているようだ。
    と、
    「ガルルル……」
    においで気づいたのか、血走った目が魔女達を見た。
    「さて、どうする魔女サマ?」
    「……普通の魔物みたいね。なら貴方だけで十分だわ」
    サーティーンが問うと、魔女は両手を伸ばす。サーティーンは屈み、魔女は少し背伸びをした。
    「命令よ、サーティーン​───────あの魔物を、殺して」
    そして口付けると、サーティーンは魔女の頬にキスを返す。
    「アンタが居れば俺は何でも出来るぜ、魔女サマ」
    ニヤリと笑ったサーティーンは鎌を持ち、周りの子供の魔物から薙ぎ払っていく。サーティーンが鎌を振るだけで周りにいた小動物達の命すら葬っていく。
    (血も出ていないのに何故……)
    「彼は死神。鎌を振るだけで命が終わるの」
    (だから虫除けにも最適なんだよ)
    (死神だからって虫除けに使われるのなんかかわいそーだけどな……)
    (疑うだろうが、彼は本物だよ。だが……彼ですら、魔女の命を終わらせることは出来なかった)
    (……だから、死を探しているのですか)
    アダムの問いに、魔女は答えなかった。ただ真っ直ぐと、巨大な魔物と戦うサーティーンを見ていた。
    「何だ、餓鬼殺されてご立腹か?」
    「ガルルルル……!!」
    「生憎だが、うちの魔女サマがアンタの死をご所望なんでな。悪いが死んでもらうぜぃ」
    そしてサーティーンが鎌を振り上げると同時に、彼の懐から何かが落ちた。
    「っと、あぶねぇっ……!!」
    (!! サーティーンさん!!!!)
    それをキャッチしている隙に魔物がサーティーンに襲いかかり、アダムが叫ぶ……が。
    瞬間、パァンッ!!と乾いた銃声が鳴り響いた。伸ばした腕の下から、銃口が覗いている。
    「油断大敵だぜ、大人しく死にな」
    襲いかかられるのをわかって撃てる体勢をとっていたらしい。弾丸に脳天を貫ぬかれた魔物は、ドシンと大きな音を立てて息絶えた。
    「ふー、これで今回の人助けは終わりか?」
    「……いいえ、まだね」
    「あん?」
    (嫌な気配がするぜ……)
    (何?この感じ……)
    (……生命反応を探知。何か来る)
    (魔女様、お気をつけて)
    使い魔達が魔女の周りで警戒の体勢をとり、サーティーンも静かに辺りを見回す。
    曇天の空、冷たい風……嵐の前の静けさ。
    ……本当に、一瞬だった。
    「っ!?」
    気づいた時には魔女の姿が消えており、巨大なカマキリ型のモンスターが魔女を捉えていた。
    (魔女様!!!!)
    (あれは……!?)
    (虫型モンスター……!!魔物はあいつだけじゃなかったんだ!!)
    「おいてめぇ!!魔女サマを放せ!!」
    サーティーンが鎌を構える。魔女は青い顔をして震えており、どうやら自力での脱出は困難らしい。
    (魔女様……そうか、虫が……!)
    (サーティーン!早くあいつを)
    「わかってる!」
    サーティーンが向かおうとした時、バチバチッ!!と電気の弾ける音がした。
    「っ!?」
    (零夜……!?)
    なんと、零夜が人の姿に戻っていた。プラズマを纏い、一歩一歩モンスターへ歩み寄っていく。
    「……触るな…………」
    (れ、零夜さん……?)
    「僕の魔女に触るな、魔物風情がッ………!!!」
    瞬きの後、カマキリ型の魔物は痙攣の後、風船が割れるように膨らみ、弾けた。魔女を受け止めた零夜は、彼女を抱きしめる。
    「僕の羅針盤の魔女……今清めてあげる」
    「っ……大丈夫よ、零夜……少し……触られた、だけ……」
    「震えているじゃないか……これから近くの町に行って、体を清めて、ベッドの上で僕と秘密の儀式を行おう。そうすれば元の君に戻るはずさ」
    「おいコラ!!!!イチャイチャすんなっつってんだろ!!!!!!!」
    サーティーンがずんずんと二人へ歩み寄る。零夜は魔女の頭に頬ずりしながら、
    「何だい、あんな下級の魔物相手に魔女を拐わせたのに」
    「あいつの動きが早かっただろあれは!つーか二人も元の姿でいたら魔女サマの魔力消費半端ねぇだろ猫に戻れよ!」
    「ここからは僕の仕事だ、君が戻るといい」
    「てめぇっ……!!そろそろわからせてやろうか……!?どっちが上かってのをよぉ……!!」
    「二人共いい加減にして」
    (また始まったぜ、サーティーンと零夜の取り合い)
    (いつまで続くかな〜……長くならないといいね)
    (……)
    結局零夜が魔女を運ぶことになり、この依頼は終わった。
    アダムにとっては、謎が増えた出来事だった。
    一瞬見えた、サーティーンが落としたもの……あれは、
    明らかに、心臓の入った瓶だった。
    それに零夜の魔女への執着は一体何故か。
    そして魔女が虫に異常に怯える理由……
    (やはり俺は……彼らのことを、何一つ知らないのだな……)
    そう思いながら、アダムは零夜の近くを歩いた。




    魔女が風呂に入っている間。アダムは結局猫に戻らなかったサーティーンに問う。
    (サーティーンさん。その……あの瓶は)
    「ん?あぁ、見たのな。俺様の宝物」
    言いながら、サーティーンは懐から瓶を取りだした。
    見間違いじゃなく、それは心臓だった。なおかつ動いている。サーティーンはそれを愛しそうに目を細めて見つめた。
    (それって……)
    「おう、魔女サマの心臓だぜ」
    (!? 何故そんなものを)
    「俺様と契約するにはこのくらいしねぇと無理だったって話だ。そもそも、魔女サマにとってこれは要らないものだから、俺様が持ってたって問題ねぇんだよ」
    この瓶は特殊で心臓が腐ることねぇんだぜ、すごいだろなどと言う彼は少し狂気じみているようにアダムには感じた。
    その近くで、魔女に共に風呂に入ることを断られた零夜がサーティーンを睨んでいる。
    「彼女の全ては僕のものだというのに」
    「いいじゃねぇの、契約通り魔女様の心も体もお前のもんなんだから」
    「僕としては不満だけれどね。君やマルコスは時々魔女と一夜明かしているじゃないか」
    (げ、バレてた?)
    (一緒に寝るってことか?)
    (そうだよ、アタリは気にしなくていいからね〜)
    (? そっか)
    「別にいいじゃねぇか、皆魔女サマが選んだ使い魔だぜ?」
    「契約の代償のはずなのだけれどね」
    「お前は力は強くても所詮人間、代償なんてそのくらいで十分だろ。それに」
    そこで一息置いて。
    「どうせ俺達は、魔女サマが死ねば一緒に死ぬだろ」
    なんてことないように、サーティーンは言い放った。
    アダムはやはりそうか、と言った顔で俯く。
    「どした?知らなかったわけじゃねぇだろ?」
    (……はい、わかっていました。やはり魔女様の契約はその方だったのですね)
    (たまに使い魔を愛した主が、使い魔だけ生きるように契約することもあるけどさ〜。それって残酷だって魔女様は言っててね。僕もその通りだと思ったよ、魔女様がいるから今楽しく生きてるのにさ)
    (……オレも、魔女様も皆もいなくなるなら、生きてたってしょうがないって思う)
    「同感だね。彼女のいない世界に用なんてないから」
    うんうんと頷く三人。だがサーティーンはピンと来ていないようだった。
    「俺様は死ねるのか疑問なんだよな。死神は存在そのものが死の概念みたいなもんだ。そもそも死ぬってどんな感じなのか想像もつかねぇ」
    (それは皆さん同じですよ。死にかけたことはあっても、本当の死なんて生きてるうちは想像もつきません)
    「だよなぁ……ま、俺様もあいつのいない世界を生きるなんざ今更ごめんだからな。そこだけは零夜に同感だ」
    そう話しているうち、魔女がでてきた。零夜がすかさずスタスタと魔女へ歩み寄る。
    「僕の魔女……汚れは落とせたかい?」
    「えぇ。でも待って、今日は皆と話をしながら眠りたいわ」
    「話?」
    魔女は少し俯きがちに話す。
    「……情けない話なのだけれど、昔のことを思い出して……あの時の感情がぶり返してきているみたいなの。だから……今日は、貴方達に傍にいてほしいわ。今夜は満月だし」
    (そっか、今日って満月か!)
    (満月だと何か……?)
    (魔力が増幅して、僕ら全員人の姿に戻れるんだよ)
    「せっかくだし、全員で見に行きましょうか」
    そうして魔女達は窓から抜けて、空飛ぶほうきに乗り屋根の上に向かった。



    満月は静かに優しい光で街を照らしている。
    人の姿に戻った使い魔達と魔女は、満月を見上げていた。
    「久しぶりに皆と満月見たな!」
    「そう簡単に見れないからね〜」
    「やっぱ段々近づいてきてるな」
    「世界の終焉……もうすぐテンペストが起こるのか……?」
    「……綺麗ですね」
    「えぇ、そうね」
    全員で月を見上げる。しかし魔女はやはり昔の記憶が頭を過り、苦しい顔をしていた。
    「魔女様、大丈夫ですか?」
    「っ、えぇ……」
    「魔女様、オレの頭撫でるか?」
    「手握っていいよ、魔女様」
    「ありがとう……情けない主で申し訳ないわ」
    「あんなの経験した後じゃ無理ねぇよ」
    「そうだ。君は悪くない」
    「あんなの……?」
    アダムが首を傾げると、魔女は目を伏せる。
    「……この世で一番酷い処刑方法を知ってる?」
    「火炙りでしょうか……?」
    「残念。もっと酷いものがあるわ。口に出すのも躊躇われるほどの酷いものが。それが……あれと関連していて。トラウマになっているのよ。おかげでその種族全体と、あと……甘いものも苦手だわ」
    「そんなものが……?」
    「聞かない方がいいよ〜、吐き気するから」
    「オレも話聞いただけでトラウマになったぜ……」
    「死んだ方がマシだよなぁそんなの」
    「執行した人間は既に同じ目に遭わせている、安心してくれ」
    「安心、なんですかそれ……?」
    やはり、まだまだ彼女らのことについて知らないことは多そうだ。
    だが……皆と満月を見上げている時が、この旅が始まって一番穏やかな時だとアダムは感じた。
    「……アダム」
    「はい?」
    「今は何も知らなくても、貴方と私は魔女と使い魔の関係……これから知っていけばいいわ」
    「話すかどうかは別だけれどね」
    「こら、零夜」
    「アダム、これからもよろしくな!」
    「よろしくね〜」
    「ま、精々頑張れよ。新人使い魔」
    「……置いていかれないようにね」
    そう言われたアダムは、微笑んで「はい」と返事を返した。
    羅針盤の旅は続く。
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